表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/497

第140話・みんなともっと楽しみたかったなぁ……

 

 王都魔導士収容所は、都内でもかなり残忍で冷酷な施設だ。

 強大な能力を持つ魔導士たちから、徹底的に抵抗心を奪うために残酷な手法が取られる。


 重罪を犯した魔導士のみが収容されるため、いかに非人道的な扱いをしようと問題視はされていない。


「どうだ? アリサ・イリインスキーの様子は。いい加減くたばってくれると楽なんだけどねぇ」


 収容所に訪れたクラーク捜査官は、ニヤニヤとした顔で部屋を訪れた。

 無機質なレイアウトに、マジックミラーと通信機器が設置されたここは尋問監視所。


 名の通り、進行形で行われる尋問を指示する部屋だ。


「さっきまでは悲鳴と絶叫を繰り返してましたが、今ちょうど気を失ったところです」


 抑揚なく応答する尋問官。


 視線を向けると、ガラス向こうの部屋で魔法陣に囲まれたアリサが倒れていた。

 両手両足には、魔力の流れを阻害する鎖が繋がれている。


 着ている白色の制服は、随所が破れてボロボロだ。

 彼女がもう抵抗できないと踏んだクラークは、さらに頬の角度を吊り上げた。


「ちょうどいい、部屋に入れてくれ。処刑は明日だ––––最後に楽しくお話してみたい」


「了解しました」


 カギを渡されたクラークは、廊下から彼女のいる部屋へ入った。

 尋問官には、席を外すよう命令している。


「無様だな、どうだ? 祖国に売り飛ばされた気分は」


「……」


 16時間にも及ぶ激しい電撃魔法の拷問で、彼女の意識はとっくにない。

 隅にあったバケツを持つと、クラークはアリサへ冷水をかぶせた。


「プハッ! がはっ、げほ!!」


 無理矢理目覚めさせられたアリサは、ようやくクラークの存在に気づいた。

 それでも起き上がることはできない。


「よう、気分はどうだ?」


「……最低以外、ゼェッ……あると思う?」


「そいつぁ結構だ、今日は俺が特別に会いに来てやったんだ––––光栄に思ってくれ。お前のおかげで俺は未来の局長だ」


 クラークの問いを聞くこともなく、アリサは彼の足目掛けて唾を吐いた。


「汚職捜査官なんかと話したくないね、ハァッ……サッサと帰ってくんない?」


「ッ!!!」


 足を振り上げたクラークは、力任せに横たわるアリサの腹を蹴り飛ばした。

 鎖が伸び、吹っ飛んだ彼女はしたたかに壁へ打ちつけられた。


「ゲホッ……!! おえっ」


「昇進の贄だからと少し慈悲を掛けてやれば……、これだからガキは嫌いなんだ。立場がわかってないのかねぇ!?」


 涙目で咳き込む彼女を、連続で蹴り付けた。


「そんなに吐きたきゃ、好きなだけ吐きやがれ! オラっ!! オラァアッ!!」


 今の彼女は魔力と四肢を封じられており、抵抗も防御も一切できない。

 数十回アリサの腹部へつま先をめり込ませたクラークは、苦痛に満ちた表情で唾液を吐く彼女を見て大きく笑う。


「明日お前を処刑すれば……晴れて俺は極悪スパイ検挙の功績を収め、最高の実績を手に入れることができる」


「けほっ、(おご)れる者……久しからず……」


「あぁ?」


「好きなだけ……、幻想の栄誉をさ……抱いてなよ。そうして人を蹴って殺して、本気で手に入ると思ってんならさ」


「俺は上に登れる人間だ! テメェみたくここで無様に退場するモブじゃぁない。この状況––––待っているのは俺の完全勝利だ」


 高らかに宣言したクラークは、勝ち誇ったような顔で見下ろした。


「俺は国家を味方にし、圧倒的な公権力で勝つんだ。どんなに竜王級が強かろうともはや手遅れ、俺の勝ちは揺るがないッ!」


 アリサの意識が、再び遠のいていく。


「処刑場への護送はつつがなく行われる、さらには‘キールの特殊部隊“まで呼んでおいたからなぁ。どんな問題が起きようと対処可能だ!」


 地下室に響く笑い声を上げながら、クラークは部屋を出ていった。

 まどろみに意識を落とす直前、アリサは掠れるように小さく呟いた。


「秋の大魔導フェスティバル……、みんなと楽しみたかったなぁ……」


 それは、処刑日の後に予定されている学園の大イベント。

 叶うはずもないであろう願望を、アリサは大粒の涙をこぼしながら夢見た。


 もうその頃……、自分はこの世にいないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ