第125話・古代帝国の次は……我々ということか
誤字報告、本当にいつも助かっております(汗)。
––––王都 アルト・ストラトス大使館。
絢爛豪華な造りをした建物の奥––––非常に整理整頓された執務室で、王国駐在武官ジーク・ラインメタル大佐は電話を取っていた。
相手は、今しがたファンタジア市内へ入った海兵隊部隊の指揮官。
「ご苦労だったな中佐、繰り返すがもう市内に敵はいないという認識で大丈夫かね?」
《はっ、現在はミリシア陸軍と協力して負傷者の救護活動に専念しております。ですが市内の被害は甚大です》
アルト・ストラトスの海兵隊が現地へ到着した時、事態の決着は既についていた。
王立魔法学園生徒会によって、闇ギルド・ルールブレイカーの計画が文字通り消し飛んでいたのだ。
完全武装のパンター2型戦車大隊は、噂に名高い竜王級、そして大賢者ルナ・フォルティシアから事態の説明を受ける。
市内の戦闘は全て終息した……と。
「映像はこちらでも確認した。すぐに工兵と重機を送る––––瓦礫に埋まった民間人をただちに救出せよ、本国にはこちらからせっつく」
大佐の指示を受けた現場指揮官は、しばし声を濁らせた。
《それが大佐……》
「何かね?」
《重軽傷者はたしかにいるのですが、死亡者ならびに瓦礫に埋まった可能性のある市民が現状ゼロなのです……》
「それは確かか?」
《確かです、ちょうど豊水祭の花火大会でコロシアムに殆どの人が集まっていたからでしょう。それと……》
海兵隊指揮官の、安堵に満ちた声が電話口から響いた。
《戦闘を行った王立魔法学園生徒会たちが……、いずれも”人命“を意識しながら戦ったおかげかと》
全くもって驚きばかりである。
これほどの規模の戦闘でありながら、彼ら彼女らは市民の命を最優先にしていた。
まだ学生に過ぎない、軍人でもない子たちによって数多の命が救われた。
その事実に、海兵隊指揮官は内心で悔しさと嬉しさを混ぜ込んでつぶやく。
《こういう時、我々軍人はどういう顔をすれば良いんでしょうね……? 大佐》
「咬ませ犬にならなかっただけマシというものだよ、今回こそ先を越されたが……火種に満ちたこの大陸なら、きっとまだまだ面白いことが起こる」
《小官は平和主義者なんですがね……》
「軍人は皆そうだよ、では後を頼む」
通話を切り、ラインメタル大佐は私物の魔導タブレットを取り出した。
電源の入った画面には、空いっぱいに広がるファンタジア上空の魔法陣……。
市民のタブレットをハッキングし、内蔵カメラから拝借したのものだ。
「ふぅむ……、結局【天使】は降臨しなかったか。アルスくんたちにはずいぶん手間を取らせてしまったな」
再び受話器を取る。
相手方は、早朝にもかかわらずたったの2コールで出た。
「やぁグランくん、王政府はこの事態にてんてこまいじゃないかい? 心中お察しするよ」
電話の相手––––大英雄グラン・ポーツマスは、溜まっているであろう疲れを一切見せずに声を送ってくる。
《まったくです。しかし––––これで決定打になるでしょう》
「あぁ、ミリシアとアルト・ストラトス……『連合王国同盟』による対闇ギルド殲滅作戦。秋には決行されるだろうね」
《ですが大佐……、1つ懸念事項が》
グランは、心配に満ちた声を電話から発する。
《こちらの––––正確には、アルスくんたち生徒会の動きが殆ど敵へ筒抜けになっています。ファンタジア襲撃は……街じゃなく竜王級魔導士を狙ったものと見ていいでしょう》
「私も同意見だ、ユリアくんの宝具が壊れており、かつ我々軍や冒険者ギルド・ドラゴニアなど、味方が多い王都から離れたこのタイミング……全てが計画されたものだろう」
《えぇ……考えたくないことですが、生徒会内に––––》
「その件は近々会って話そう、この電話も防諜仕様とはいえ信用できん」
《了解です》
再び電話を切った大佐は、背もたれに体重をかけながら天井の絵画を見つめた。
「結局、奥に潜む“神”の正体はわからず終い……か。まぁそう簡単に片付く問題でもないな」
絵画には、人々へ恵みを与える【天使】の姿が描かれていた。
「はっ、古代帝国を滅ぼした次は……我々ということか」




