第12話・寝不足でヤバいけど、ブラックギルド出身者の意地を見せたい
「わたしと勝負しろ!!」
いきなり現れ、いきなりそう叫んだ少女は、ミライに負けず劣らずのルックスだった。
腰まで伸びた銀髪に青色の瞳、白が基調のブレザーにチェックのプリーツスカート。
間違いなくここの生徒だ。
「アリサさん!? なぜこんなところに! 授業中のはずだろう」
「授業はサボっちゃいました! 噂の編入生が気になったからわたし1人でっ!」
「はっはっは! これはこれは面白い子だなぁ」
頭を抱える先生たちを尻目に、マスターは手を叩きながら大きく笑う。
実際、俺にとっても意外だった。
このエリート学園に、こんなイレギュラー上等なヤツがいるなんて思わなかったのだ。
一歩進んだ先生が、困ったように言う。
「アリサさん、君がなにを言ってるか理解に苦しむが、今日はあくまで彼の試験であって公式戦じゃない––––それも生徒である君となんて様式もなにもあったもんじゃ……」
諭そうとする先生方の前まで、俺は歩いて出た。
沈黙が降りる中、最初にこちらから口開く。
「君、名前は?」
「アリサ・イリインスキー、高等部2年。学園ランキングは7位」
「俺はアルス・イージスフォード、よろしく。なんていうか……ずいぶん型破りなヤツなんだな。俺なんかと勝負したいの?」
「もっちろんだよ! あの防壁壊したの君でしょ!? とても凄い……凄すぎるよ! だからわたしの手で、直接試したくなったの!」
なるほど、根っからの戦闘大好きっ子。
友情は拳で語れのタイプだ。
見たところ外国人––––社会主義圏出身の人間だが、思ってたよりずっと好印象である。
偏見ではあるが、もっと冷徹なイメージだった。
「困るよアリサさん! そんなのまかり通るわけないだろう、担任を呼ぶから早く教室へ––––」
言おうとする前に、俺は木製ライフルを排莢しながら遮った。
「いいよ、アリサが望むんなら勝負する。勝算なしで挑んできてるわけじゃなさそうだし」
「いいの!? やった〜! ありがとう!」
「アルスくん!?」
困惑する教師陣へ、大英雄のマスターがなだめるように横目で見た。
「僕はいいと思う、ただ硬い壁を融解させるだけなら試験の意味がない。実戦の動きを見てこそ、真に判断材料となるでしょう」
「た、確かに……。だけどアルスくん、ホントにいいの?」
「構いません、俺もこいつと……戦ってみたいです」
場所を草原フィールドへ移し、俺とアリサは正面から向かい合った。
こんな少女がいきなり挑んでくるとは正直想定外で、実際寝不足はヤバいが致し方あるまい。
「あれ、銃っていうのは使わないの?」
「お前が素手なら、こっちもフェアに素手でやるよ。殺し合いでもないんだし」
「いいねその精神、ますます気に入った! ワクワクするよ、竜王級の魔導士と戦える日がくるなんて……!」
その場で飛び跳ねるアリサ。
「ルールは武器の禁止、魔法と近接戦のみ。勝敗は決した時点で僕が判断する」
審判はマスターが務めてくれた。
この学園でランキング7位か、同世代においても大陸内で実力はきっと折り紙つき。
つまり、ここからが本当の試験なのだ。
風が吹き、足元の草原が揺れた瞬間––––マスターが腹の底から叫ぶ。
「始めッ!!!」
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