第100話・俺は超がつくほどの温泉好きだ
多大な応援のおかげで、本作は遂に100話&10,000万ポイントを達成しました。
本当にありがとうございますッ。
「うっひゃー! 巨大ベッドだ〜!! とうッ!!」
バカ広い部屋に入るなり、ベッドへ大きくダイブするミライ。
絶対やると思っていたので、俺は彼女の襟を空中でガッと掴んだ。
「ちょっ! なっ!? はっ––––離せえぇっ!!」
「そんな汗かいた状態で許されるわけないだろ、風呂入ってからダイブしなさい」
「良いじゃん! むしろご褒美でしょ!? わたしの背中を押したっていいくらいよっ!?」」
「自信過剰乙、お前の汗を浴びたいと思うほど俺はまだ荒み切っていないぞ?」
ミライをそのままお座りさせて、荷物を各自置いていく。
さて……、いよいよだ。
着替えを出す彼女たちへ背を向けつつ、俺は部屋のタオルを掴んだ。
「ここからは……各自風呂を満喫することだけ考えろ、この機会をくれたマスターに感謝してな」
俺はこう見えて、超が付くほどの温泉好きだ。
今日という日をどれほど待ち侘び、楽しみにしていたかなど言うまでもない。
「おぉ……、すっごい気迫ねアルス!」
「ここ最近はあまりに忙しかったからな、生徒会選挙やアルテマ・クエスト。異世界研究部の不祥事で溜まった疲れを癒さんとやってられん」
ミニバッグに着替えを入れたユリアが立ち上がる。
「さすが会長、休息の重要性を理解しているのですね」
「当然だ。よく言うだろ––––休まず働くとか寝ずに仕上げたとか、あんなのは俺に言わせれば未来へ借金してるようなもんだ」
「その場凌ぎにはなっても、いずれツケが返ってくるというわけですか」
「俺がまさしくそうだったからな、人間休息は必要って話だ。じゃなきゃ仕上がるものも仕上がらん」
だからこそ、今日温泉に入ることは最高の意味を持つだろう。
2学期からは“大魔導フェスティバル”に、“大公式戦トーナメント”も控えている。
生徒会の忙しさは極限になることが予想されるし、なんとしてもリフレッシュしたい!
「わたし……、温泉初めてだからちょっと緊張するなぁ……」
「大丈夫よアリサちゃん! マナーはわたしが手取り足取り教えてあげるから、安心して身体を任せて!」
「手取り……足取り?」
「そう! 初めての人はわからないことも多いと思う! だから身体もわたしが全部洗ってあげ––––」
問題しかない言い方のミライを軽く叩いた後、俺は部屋のドアを開けた。
みんなでゾロゾロとエレベーターへ移動し、温泉フロアに向かう。
男湯女湯ノレンの前で、2グループに分かれた。
もちろん、男子は俺1人なのだが。
「では会長、また後ほど」
「リラックスしすぎて溺れないでよ〜」
「が、頑張ってくるよっ!」
ユリア、ミライ、アリサが奥へ消えていく。
俺も入るか……と、ノレンをくぐった瞬間だった。
「っ……」
更衣室はガラガラだ。
人の姿は全くないも、俺の感覚は鋭敏に察知していた。
「……何かいたな、今」
人間かどうかはわからない、綺麗なロッカーに施錠跡がないことから、男湯には俺しか来ていないはずだ。
しかし、誰かいたであろう気配はプンプン漂っていた。
なら俺の取るべき行動は––––たった1つ。
「よっし! 貸切状態のウチに入るぞっ! とことん長風呂して、羽伸ばしまくってやるぜッ」
ガ ン 無 視。
どこの誰かは知らんが、正直こんなのは俺が気にすることでもない。
バンっとロッカーを開け放つ。
「いや〜、楽しみだなぁ♪」
もし邪魔してくるなら、その時は本気で消し飛ばすだけのこと。
ハエであればまだ気にしただろうが、これくらいなら憂慮するファクターたりえない。
俺はルンルン気分で浴場へ入っていった。
ブックマーク、評価ポイント本当にありがとうございます!!