第1話・追放ですかわかりました、良いですけどもう俺に頼らないでくださいね
「お前の能力、もう必要なくなったから」
そう目の前で宣告したのは、俺が3年人生を捧げているギルドパーティーのリーダーだった。
切り揃えた茶髪で、非常に高い顔面偏差値を誇るそいつの名はグリード。
稀代の天才ともてはやされていて、王国ギルド・ランキングの第5位まで登った『神の矛』のリーダー。
そんな彼が、目の前でドッカリとソファーに座る。
「い、いきなりなんでだよ……! 俺はずっと真面目に働いてきたじゃないか!」
「あぁ真面目だったな、お前のエンチャントも最初は重宝したけどさぁ……」
グリードは視線を横に向けた。
見れば、パーティーのタンク––––ウォーリアー職のラントが袋を放ってくる。
彼はとんでもない怪力の持ち主とされ、ゴーレムすら素手で粉砕した過去があった。
袋のなかには、俺の私物が全て詰め込まれている。
「もう俺らもすっかりトップランカーだ、なぁラント?」
「ウム、もはや我がパーティーに無駄飯食いのエンチャンターなど必要ない。俺も小手先のバフなんぞ最初から気に入らなかった」
「っつーことだ、お前を雇うのも今日で最後……サッサと出てってくれ」
「ッ……!! そんなのってないだろ! 俺のエンチャントがなかったら誰がパーティーを支援するんだよ!!」
思わず叫ぶと、いきなり頬を衝撃が襲った。
尻もちをつく。
口元の血を拭いながら見上げると、長身の女性魔導士が見下ろしていた。
「あらごめんなさい、無能が叫んでるのを見てるとつい杖で殴りたくなっちゃって」
「ミリア……っ! お前まで」
彼女はパーティー最強の火力を持つ魔導士。
バフを掛ける俺とは別に、上級魔法でグリードを援護する有名な大賢者の娘だ。
「ハッハッハ! おいおいミリア、たとえゴミでもお前と同じ魔導士だろ?」
「こんな後方でなにもしてないエンチャンターと、私の大魔法を一緒にしないでくださる? リーダー」
「違いねえな、お前の攻撃魔法さえあればこのまま順位はドンドン上がるだろうしよ」
腫れる頬を押さえながら、俺はゆっくり立ち上がった。
「おい! だからいいのかよっ、俺がいなくなったらマジでランキングどころじゃない! ダンジョンの周回すらままならなくなるぞ!」
「なぁアルス……、俺たちはもうレベルもほとんどカンストに近くなった。初期ならともかくトップランカーになった今じゃ、エンチャントとかいう本当に発動してるのかもわからないもんを必要に思えない」
グリードは、俺の私物が詰まった袋を思い切り蹴った。
本などが床へぶちまけられる。
「君みたいなヲタクくんがいると、パーティーのブランドに傷がつくんだわ。このカメラ見える? あんまりウザいと『世界樹ネット』の登録者100万人越えチャンネルで、あること無いこと脚色してこの録画投稿するぜ?」
「そ、そこまでして追い出したいのか!?」
「当たり前だ、お前を解雇して浮いた金でもう有望株を雇ったんだからな。新しい期待のエースだ」
「本当にいいのか? 俺が3年掛けて宿したエンチャントはもう使えなくなるんだぞ?」
「聞いたかみんな! つまり3年も俺たちは無駄金をこいつにあげてたわけだ。ホントにアホらしくなるぜ、リスナーさんもきっと同意見だ」
「ウム、無駄は削減すべきだ。トップランカーならもっと相応しい者を雇えばいい」
「賛成よ、エンチャントの効果なんて正直ほとんど実感してなかったし。どうせ嘘をついて『神の矛』に残りたいだけね」
ラントとミリアが、腹の底から笑い声をあげた。
そうか、なるほど理解したよ。
「あぁわかった! 今日これで俺はパーティーを去るよ! その代わり二度と俺に求人するな、エンチャントもすべて解除する」
「やっと理解できたか、ヲタクのエンチャンターは雑魚らしく不正規ギルドにでも雇ってもらってくれ。俺たちはさらに高みを目指す」
「好きにしろ」
床に散らばった私物を袋へ詰め込むと、俺はまっすぐドアからギルドを出る。
後方では、グリードの判断を讃える声がひっきりなしに響き渡っていた。
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