【漫才】自殺
二人「どうもー(コンビ名)です。よろしくお願いします」
ツッコミ「いやー今世界は平和でありがたいですね」
ボケ「平和じゃないですけどもね、今この瞬間も世界のどこかで誰かが死んでますから」
ツッコミ「そんな真面目に暗い話をしたらお客さんも笑えないでしょうよ。すみません、皆さん。漫才始めにこんな」
ボケ「いーや。こちらとしてはとことん追求したいんですよ。知ってますか?日本は唯一、事故死よりも自殺で死亡する人が多い国なんですよ」
ツッコミ「悲しいですよね」
ボケ「話を変えるんですけど……」
ツッコミ「ちょっと待って。さっきのとことん追求したい、って言うのはどこにいったんですか?」
ボケ「いやなんかお客さんの反応が悪いっていうか…」
ツッコミ「自分からフっておいてお客さんのせいにしないでくださいよ!もし責任を感じて自殺なんかしたらどうするんですか?」
ボケ「その時は全力で止めてください!」
ツッコミ「いや、自分で止めて!全く。その場で土下座しても無駄ですよ。そうやって私に丸投げしないでくださいよ」
ボケ「おっかしいな。大体これで丸くおさまるのにな」
ツッコミ「私には通用しませんよ!それよりもそんなすぐに土下座してあなたにはプライドはないんですか?」
ボケ「そんなもんありませんよ。大体そんなくだらないプライドを守ろうとしてるから世の中息苦しくなるんですよ」
ツッコミ「…今自殺志願者の死亡動機が分かった気がする」
ボケ「だから私クラスになるとミスは大体相手になすりつけるんですよ」
ツッコミ「…今自殺志願者よって復讐されて殺されるあなたの未来が見えた気がする」
ボケ「責任転嫁、冤罪、知らんぷり。全部大人になって学ぶ大事なことです」
ツッコミ「そんなもんばっかり学ばないでください!それと最後の知らんぷりって何ですか?危うくスルーするところでした」
ボケ「『NHKの者ですが』『うち、テレビ持ってないんで』「じゃあ、あのアンテナはなんですか?』『知りません』」
ツッコミ「ちゃんと払いましょう」
ボケ「ねっ?知らんぷりって大事でしょ?」
ツッコミ「良い子の皆さんは絶対に真似しないでくださいね!」
ボケ「話を自殺に戻しますけど」
ツッコミ「せっかく明るい感じで違う話題になったのに」
ボケ「もし自殺の現場を目撃したら止めたいな、とか思うんですけどね。ちょっとやってみていいですか?」
ツッコミ「嫌ですよ」
ボケ「じゃあボランティアで死んでもいいって方、手をあげて…」
ツッコミ「…お客さんを巻き込まないでください。私がやります」
ボケ「じゃあそこで首吊って待っててください」
ツッコミ「いやもう死んでます。その場合すでに手遅れなんでその少し前に居合わせてもらっていいですか?」
ボケ「全く。注文の多いやつだ」
ツッコミ「あなたに合わせてるんですよ。はい、ロープが用意してあって私が椅子の上に立ちました」
ボケ「ちょっと待った!」
ツッコミ「なんですか?」
ボケ「早まらないでください」
ツッコミ「止めないでください。もう生きるのに疲れたんです」
ボケ「そんな!何かやり残したことはないんですか?ロープを蝶々結びにするとか」
ツッコミ「そんなんで引き止められるわけないでしょ!自殺用のロープの結び方なんてどうでもいいんですよ!」
ボケ「でも蝶々結びだと解けちゃって上手く死ねないっていうか」
ツッコミ「止める気あるんですか?止める人がロープの結び方のレクチャーしちゃダメでしょ?」
ボケ「じゃあロープは置いといて。何かやり残したことはないんですか?遺言を書くとか」
ツッコミ「やっぱり止める気ないですよね?!」
ボケ「でもないと殺人事件っぽくなって警察に迷惑が。大体自殺者ってすでに社会に迷惑かけてるんだからそれぐらいの配慮はしてください」
ツッコミ「全国の自殺志願者が死に急ぐようなこと言わないでください!非常識なこと言ってると、恨まれて殺されますよ」
ボケ「大丈夫です。その時はお客さんに恨みをなすりつけるんで」
ツッコミ「あなたが一番迷惑です!そしてさりげなく大人になって学んだ責任転嫁しないでください!もう分かりました。遺書も書いて、他人に迷惑をかけずに死にますよ」
ボケ「ちなみに遺書にはなんて?」
ツッコミ「全財産を愛する妻に……」
ボケ「だめだめ。子供に恨まれますよ。もうなんのための相方ですか?そこは僕に殺されたとでも書いて慰謝料を根こそぎ奪ってやりましょう!」
ツッコミ「あなたに濡れ衣を着せるつもりはありません。無理矢理冤罪にしようとしないでください!」
ボケ「それぐらいツッコめるなら死なずに僕とコンビを組みませんか?」
ツッコミ「それじゃ自殺は止められませんよ。いい加減にしろ」
二人「どうも、ありがとうございました」