三話「チュートリアル 世界について」
前作?のネタバレを含みます。何時完結するかも分からない前作?を待ってもいいいし、こちらも並行して読んでくださっても構いません。ま、その分前作?を初見で読んだ気分にならなかったりしますが自己責任で……。更新速度的には前作?の方が早く完結する、はず。
「図書館、ですか?」
「ないならないで構わないです。この世界の歴史とか神話とかが載っている教養本が数冊でもいいですし」
ここは宗教団体本部なのだ。教典やら歴史書やらは置いてあるのが普通だ。
ツカサはそう思って自分のメイドに尋ねかけたのだが………見るからに不機嫌である。俺何かした?と疑問を抱きながら再び尋ねる。
「えっと、俺何かしました?」
「…………しましたと言えばしました。してませんと言えばしてません」
「???いや、本当に分からないんですけど……」
メイドの言っている意味が分からない。いや、普通に意味は分かるのだ。非難されるような事はしていないが、メイドにはしているとも言えるらしい。つまり、ツカサには非はない。だけど、気になってしまう。
メイドはジト目でツカサを見つめた後、「ホントに分からないんですか?」ともう一度確認を取り、ツカサが頷くとキリッとそた表情で不満をぶちまけた。
「口調です!!仮にも私のご主人様になるのですから丁寧語とか辞めて下さい!!」
あ、そうですか。ツカサはそう思った。
だいだい初対面の人に敬語や丁寧語で話のは普通である。なのに、メイドと言われたので態度を変えるほどツカサは人間慣れしていなかった。
なので、馴れ馴れしくならない程度に。かと言って他人行儀過ぎる程度に。ツカサは口調を砕ける。
「はぁ。分かったよ。これでいいだろう?で、図書館は?」
「はい!!勿論ございますよ!!もしよけれは私が数冊持って来ましょうか?」
「いや、いい。自分で選びたいから、案内だけお願い」
「お任せください!!」
ツカサはソファーから立ち上がると、メイドについて行き図書館へと向かった。
廊下に出ると、誰もいない。他の連中はまだ部屋で説明を受けているのだろうか?
時折すれ違う修道女にお辞儀されながら進む事は数分。図書館に着いた。貸出カウンターはなく、ただ本棚と観覧用の椅子とテーブルが置いてあるだけの質素な空間だった。
これくらいの雰囲気ならツカサのクラスメイトはここを利用しないだろう。面倒な絡まれが回避できるな。
ツカサは早速本棚を物色し始めると、又してもメイドが文句を言う。文句を言うメイド。ホントはこの仕事に向いていないのではないかとツカサは思う。
「お使い様はその様な事までしなくてもよろしいのですよ!私が本を持ってきますから椅子にお座り下さい」
「……だから、自分でタイトルを見て決めたいんだって。じゃあ、歴史書や神話系はどこにあるの?」
「こちらです!!」
ツカサが仕方なくメイドに仕事を尋ねると、彼女は嬉々として答えてくれる。そいえば、と名前を聞いていなかったと思い出す。いつまでもメイドでは呼びにくいし、他のメイドと区別が付きにくい。ツカサはタイトルを見て本を選びながらメイドに聞いた。
「そう言えば名前は?」
「名前ですか?遂に親密度アップですか!!」
「いつまでもメイドだと他と区別付かないだろ?それで?」
「オリーティアです。親しい人はティアと呼びますので是非ともお使い様もそう呼んで………」
「じゃあオリーティア、一人じゃも持てないから一緒に運んで」
親しい間柄でしか呼ばない愛称で呼んでたまるか。呼んだが最後、こういった性格の奴はツカサのお使い様という権力を目当てに言い寄ってくるはずだ。
ツカサは女との近しい関係は二人しか持っていないし、それ以上持つつもりもない。彼女が居るのに別の世界で浮気するほどツカサは飢えていない。
ツカサは一人では持てない量の本を棚から取り出すと、オリーティアに半分持たせた。メイドに全て持たせるほどツカサは主人様には向いていない。本人には自覚がないが、人間ができているといっていい。
「全部持ちます」というオリーティアに半分だけ持たせると、適当な椅子に座った。ここから読書タイムだ。余程の事が起きない限りツカサは読書という情報収集を辞めないだろう。
「うぅ~。命令が無いので帰れません………」
数時間ご主人様の後ろに待機したメイドが居たとか。
ツカサ等が異世界に召喚されてから元の世界基準で一週間が過ぎた。元の世界基準でと言ったのも意味がある。先ずはそれから解説していこう。
「まさか恒星が二つあるとはなぁ。ビビった」
「恒星?ツカサ様のいた世界での太陽神様と日光神様の呼び方ですか?」
ツカサの独り言が聞こえたらしいオリーティアが反応した。
ここで分かるとおり、この異世界には恒星が二つ存在している。ギラギラと空に浮かび人々を見守る太陽神と、キラキラと輝きを放ち人々を温かく照らしている日光神だ。勿論、スキルの『言語理解』が作動してこの世界の言葉を『太陽神』と『日光神』と日本語に置き換えている。日本語の太陽と日光と文字は違う。意味は同じだと思うが。
神が付いているのは元の世界の昔の人と同じ考えだ。古代日本でも太陽を天照大神と崇め奉っているし、エジプトでは太陽ラーが有名な所。それと同じ様な考えなのだろう。ツカサはそう結論を出していた。ほかの可能性も考慮していたが、今は語るべきではない。
オリーティアはツカサの世界の事に興味深々だ。事あるごとにツカサに質問している。これはメイドというよりも弟子である。
ツカサ別に悪い気は起きない為に、普通に質問に答えてやっている。
「自ら光る星の事を指している単語だよ」
「星?夜空に光るお星様と同じなんですか!?」
「あ~どういえば伝わる……」
この世界はツカサが一回目に召喚された異世界に比べて、全く常識が異なる世界だった。たまにこうして常識の差で詰まる事も多々ある。
因みに、この世界の衛星は一つで『月』という名前は同じだった。こちらも神の化身だと思われていたが。
「世界の違いって思ったよりも大変ですね。ほら、あの日にちの呼び方も少し違うみたいですし」
「月火水木金土日な。こっちでは………」
「今日は春が二月の十六日です。春の二つ目の月より一六日目という意味です」
「四季にそれぞれ月を数えて言ってそこから日にちか」
これは余計似ている常識だ。ただ四季の変わり目は毎年変わり、場合によっては三八四七月という事例も存在している。
つまり、一年が三百六十五日ではないのだ。四季が一通り回ると一年が過ぎたという事である。
なので、この星が恒星の周りを一周したら一年という訳でもないらしい。
ツカサの常識からすれば考え方が難しく面倒だとも思う。ツカサは異世界とかを昔から信じていたので自分が知らない常識も、そういうものだと解釈する事が出来る。簡単に言えば、1+1=2なのは小学生でもわかる常識だ。しかし別の世界では1+7=5だという。これは1の次が2、3、4、5と言う固定観念があるから1+1=2と言えるのだ。要するにそういうものだと新しいことだと認識すれば良いのだ。
ツカサは異世界を信じていた為、その辺が簡単に覚えやすかった。これがDQNとかの全く理解力の無い人種なら覚えるのに、慣れるのに時間が必要だろう。最も、今は現実に起こっている出来事だし、必要性に縛られると人間は適応していく生物なのでいつかは覚えるだろうが。早いから遅いかの違いだ。
(要するに、めんどくさい世界設定って訳か。これ、扱いきれんの?)
そして歴史。この世界の成り立ち。
「それで、何か見つかったりした?」
「いいえ。やっぱり王都の研究所でないとそこまで詳しい情報はないみたいです。最も、見つかっているすら不明ですが」
「やっぱりないか」
「はい。大戦時代よりも古くて正確な情報は「戦神であるアレスティーネ様が活躍して人族に希望を持たせた」とあるまでです。実在はされていたと文献にはありますが、詳しくは残っていません」
ツカサが知りたがっていたのは大戦と呼ばれる時代のことだった。
その前にまず、ツカサが知り合えたこの世界の成り立ちについて述べておこう。
神が産まれた時、世界は既に出来上がっていた。神は世界を発展させる為に生物を作った。それが我々人族だ。
神は一人では無かった。複数柱もの神が存在し、中には人族の神と同じ事を考えた神もいたのだ。それが、人族以外の知性を持つ種族だ。創設時代と記されている。
まだ遥か昔、神は地上に姿を見せなくなってからはや数千年が経った頃、神が人族の子供として生まれ変わった。それが偽神。偽神は数々の奇跡を起こして文明を発展させる。が、偽神とて永遠では無かった。そこまでを偽神時代と記されている。
偽神がお亡くなりになられてから文明は急速に退化していまう。それでも人族は懸命に生き残って文明を再構築する。神滅時代と言われている。
そして、ツカサ等が召喚された根源である。星を巻き込む大戦争勃発。今でこそ複数ある国は、一時期一国まで破滅し、人族は滅亡へのカウントダウンを迫らせていた。戦神アレスティーネは大戦勃発から僅か十年のころに現れた人族の希望。正確な情報は残っていないが、一人で軍隊を相手にし、他種族の神の域まで届かせたと言われている。彼女が居たからこそ、人族は希望を持って大戦を生き抜いたと言っても過言ではないらしい。今世間で通説となっているのは、戦神アレスティーネ様は人族の神が遣わした子だった。というものだった。
後は、教皇がツカサたちの前で話してた情報と殆ど同じ物だ。
これは日本史をざっくりと、卑弥呼が邪馬台国を治めていて、大和朝廷が日本を統一して天皇が即位し、武士が現れて戦乱の時代になって徳川が再び統一して、外国と関わりをもつようになり、戦争が始まって……。とこんな感じに纏めたものなので、詳しい内容はもう少し分かっている。
その、詳しい内容がツカサにとって少し気になるものだった。
「大戦時代よりも昔の情報は難しいか」
「はい、まだ見つかっていない遺跡などを調べて見れば見つかるかもしれませんが………」
「やっぱりそうなるか。大変だな」
ツカサ一人で計画を練っていた。
小説のテンプレ通りなら、召喚された高崎優斗を筆頭とする者たちが人族の脅威を振り払おうと元の世界に戻れる保証はない。何故なら、召喚の儀とやらが今回行われたのが初めてであり、元の世界に戻す儀式があるわけではないからだ。
教皇や召喚者の頭がお花畑連中は勝手に神が戻してくれると思っているが。ツカサは冷静だった。
ならどうやって元の世界に戻るのか?ツカサはその計画を練っていた。
初めにこの世界の歴史を図書室で調べてたのは、何かしらの情報がないかと思ったからだ。そして、案の定あった。
歴史書ではなく古い資料で。誰も気に留めないであろう部分にツカサは食いついた。それは、
「『アルケーミ』………」
ツカサが昔異世界に召喚され時に、拠点にしていたことのある街の名前だった。
偶然かもしれない。同じ名前などいくらでもあるだろう。日本で同じ地区の名前でも全国に複数箇所あるのと同じだ。
それでも、見つけ出した情報。元の世界に帰れる一本となるかも知れない情報だ。
掴まずにはいられなかった。
更に………
「もう一度確認するぞ。人族を生み出した神は『ビエントルナー』で間違いないな」
「神様ですよ!?人界で最も信仰者数が高い『ルナー教』の最高神にて人界神ですよ!!忘れる訳ないじゃないですか!」
人界神ビエントルナー。ツカサが二度目に召喚された世界での神だと言われている存在だが、ツカサには聞き覚えどころか相互認識すらあった存在だ。
元の世界で死に掛けた自分を召喚し、一度目の異世界召喚を実現させた存在。旅の終盤では仲間として旅をしたりもしたその存在。
ツカサが実際にあったビエントルナーは「人間界を司る神です」と自己紹介までしてくれた。この世界の人界神と言われていのも、大まかな意味は履き違えていない。
偶然にして出来過ぎている。
ツカサはそう思った。大体、同じ町の名前が歴史書に記録されているばかりでなく、進行している神の名すら完全一致。
一度目に召喚された世界と、時代は違えど同じ世界だと結論を出さぜる得ない。
だったら、やる事は一つだ。
この世界が何故一度目と違うのか?俺にしか映っていなかったはずのゲームみたいな視点が、どうして世界共通で反映されたのか?そもそもなぜ、文明が壊れる程の戦争が起こったのか?
思うことは色々と出てくる。
だけど、
「とにかくルナーに合ってみないとな」
「ん?ツカサ様、何かおっしゃいましたか?」
「いいや?何も言ってないけど?」
ボソッと呟いたツカサの声が聞こえていたらしい。オリーティアが地獄耳で反応する。
ツカサは面倒だったので誤魔化そうとするが………
「そうですか?私の聞き間違いかな?ツカサ様今、おしゃったような気が………てあぁ!!!」
「今度は何だよ。今から巷で噂の新作を読むつもりなんだけど…」
「新作!!今度私にも貸してくださいね!!ってそれどころじゃないですよ!!訓練の時間が来ちゃってます!!」
ツカサが読み始めようとした、お使い様特権で手に入れた新刊をオリーティアが取り上げる。読みたかった新刊が目の前にあるから、ではなく。
ある時間が迫っていたからだ。
「あ~そうだな。面倒だからパスで」
「訓練を疎かにしていたら、魔王討伐なんて出来ませんよ!!後、私の評価にもかかわるんで、急いでくださいね!!」
ツカサはオリーティアに急かされて魔王討伐の訓練へと向かう。
どうしても、魔王討伐の訓練はやる気に慣れない。なぜなら、一回魔王討伐ところか魔神討伐すら経験があるから。
ツカサはオリーティアに急かされてながら、面倒な訓練へと向かう。
今日もツカサは面倒ごとに悩まされならがも生きる。
全ては生きて元の世界に戻るため。
一日はまだ、始まったばかりだ。
設定等は思いつきではないです。が、所々曖昧な部分が。まだ練り切っていない証拠です。矛盾点が有ったら報告もしくは最新話の方に合わせて考えてください。