表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溢れ出す随液  作者: 耕助
第1巻
7/103

完璧な音楽

六畳一間のアパートで、一人、男がウイスキーを置いてアコースティックギターを弾いている。

そこに『ドンドンドン!』とけたたましく、ドアを叩く音が入ってきた。


良輔(りょうすけ)か?入っていいぞ」


『ガチャリ』


「おーお前のギター聴くのも久しぶりだな。」


嬉しそうにもう一人男が入ってくる。


「仕事うまくいってるか?」


ギターを置いて問いかける。


「ああ?まだまだだよ(笑)雇われはツラいぜ。」


「そうか・・・まだ音楽やってんのか?」


「最近はもっぱら聴くほうだな。努力嫌いの俺じゃ無理だよ。」


「良輔のセンスは悪くないと思うんだがなぁ。」


浩嗣(ひろつぐ)、お前みたいにギター弾けりゃまだ続けてたかもな。」


言われて笑いながらウイスキーを側にあったグラスに注ぐ。


「おいおいストレートかよ。俺そんな強くないぞ。」


「しがないギター弾きのたまの楽しみぐらい付き合ってくれよ。」


ギターの側にあったグラスに、自分の分を注ぐ。


「そういや前から聞きたかったんだけど、浩嗣はなんでギター始めたんだ?」


「ああ・・・ありがちな話だよ。小さい頃、親父が見てたジミヘンのビデオ、横で見ててカッコいいなって思ってたからな。」


「それにしちゃ全然スタイル違うな。」


「アーティストは真似してちゃダメだろ。」


「まあな。」


「そういう良輔は何で音楽始めたんだ?」


「・・・うーん。俺のは浩嗣とは違うんだよ。」


一口ちびりと、ウイスキーを飲む。


「幼稚園の頃、夢を見たんだ。」


「ほう?」


浩嗣は一気に一杯飲み干す。新しく注ぎなおす。


「その時、この世のものとは思えない音楽を聴いたんだ。あれは凄かったんだろうな・・・朝になったら忘れちゃったけど、印象だけがものすごく残ってる。海底から太陽を天に仰ぐイメージで・・・クラシックのようで、ロックのような・・・それでいてとてつもなく綺麗なメロディだったような・・・。」


「なんか某メタルバンドみたいだな。」


「もっと神聖で救われる感じがしたよ。夢の中で号泣した覚えがある。」


「幼稚園で号泣ってスゲーな。」


「ああ。・・・今でも未練たらしく音楽聴いてるのは、無意識のうちにその完璧な音楽を求めてるのかもしれないな。」


遠い眼で、良輔はグイっと飲み干した。・・・弱いのに(笑)


「俺もいつかそんな音楽が作れるようになれたらなぁ・・・。」


2人は何とはなしにうつむき加減になり、夜は更けていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ