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心の器
例えば、目を瞑って、自分の心の中を覗いてみる。
大体の人間が、その自分の内面にそれぞれ
様々な器を見ることが出来るはずだ。
皿状の人もいれば、壷状の人もいるかもしれない。
色や大きさもそれぞれ違うだろう。しかし
何かしらの器は覗き見ることが出来るはずだ。
そして、器の内部には液体がたまっていたり、
大地と大空が広がっているものもいるかもしれない。
大海原が広がっていたりもするかもしれない。
そこに自分の「本質」を見出すことが出来るはずだ。
ちなみに、俺の器は黒い。漆黒だ。
その中にさらに黒い液体が、ついこの間まで
なみなみと溜まっていた。
ところが、最近この黒い器はからっぽに近い。
色々な人々との出会いが、漆黒に創り上げられた
器の中の暗黒の液体を、蒸発させてくれたのだ。
生まれ出でて育てられた器は漆黒でも、
溜まっていた暗黒の液体は乾ききっている。
これは凄く幸せなことなんだろうと思う。
蒸発させてくれた人々に、心から感謝したい。
もう、この黒い器が満杯になることはないだろう。




