ギロチン
とにもかくにも俺は自分が殺されるに値するような罪を犯した。
今となっては犠牲となった者に反省の弁を述べるつもりも無い。
もちろん残された遺族にだって顔を合わせたいとも思わない。
ただ、罪を償う為の刑罰を受ける事が、きっと犠牲者への、
そして残された遺族への弔いになると思ったからだ。
いや、今更何を並べ立てても詭弁にしかならないだろう。
ある種の冗談とすら思えるような、いつ執行されるかもわからない
人生の終わりを、ただ淡々と待ち続ける毎日も今日で終わりだ。
呼び出され、手首を拘束されたままで廊下を歩いていく。
この先には最後の晩餐が用意されていて、ご大層にも
こんな大罪人にキリスト教徒でもないのに神父様の
お祈りを用意してくれるそうだ。ありがたいことだ。
最後の晩餐は、実を言うと昨日が本格的な晩餐だったのだが・・・。
食事と言う意味ではこれが最後になる。喉を通らない何てことも無く、
自分の望んだご馳走は味わうと言う気にもならず、ぺろりと平らげた。
いつも通りの日常の先にある、他人に
用意された他人よりも早い人生の終わりに。
予定通りに全てを終えて、頭に袋を被せられた。
どうせ後で取るなり取れるなりするのになあ。
もっと自分は恐怖に震えて、泣き叫ぶほどに臆病な人間だと思っていた。
しかしながら現実を受け入れているのか、諦めているのか、それとも
脳が人生を終わりを無意識に拒否しているのか、淡々と説明されていた
流れの中に身を任せ、・・・どうやら俺は首を切られて終わるようだった。
-なんだ。首を落とされても意識はあるんだな。
視界に首のない血みどろの自分の身体を見つけ、
薄れゆく意識の中でそう思った。