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溢れ出す随液  作者: 耕助
第1巻
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雨音

何があったのかしらないが、私の親友はもう7年間もひきこもっている。

家の中では普通に生活するし、窓を開けて外を見たり、

洗濯物を干したり、外を見たときに近所の人がいれば挨拶や

世間話を家の中からする。しかし、玄関からは一歩も外に出ない。


ご両親は心配しているが、近所の評判は悪くないし、

家のことをしっかりとやってくれるので、咎めたりはしないらしい。

買い物以外は全て家事炊事掃除と毎日こなしている。


私以外にも友達はいて、遊びには来ている。

ただ、家に出ないということだけが彼女の普通とは違うところだ。

私は私なりに彼女が心配で、余計なお世話かもしれないが、

週に三日は顔を出すようにしている。


そして今日も、彼女の家にやってきた。


「おっす。」


「あ、また来てくれたんだ。いつもごめんね。」


彼女は女の私から見てもものすごく美人だ。

外に出たら、おじさんは心配で仕方ないだろうな(笑)

性格もいいから、こちらとしても逢いに来たくなってしまう。


「私が来たくて来てるんだから、謝らなくていいの。」


「ありがとう。お茶入れるね。」


このお茶がまたうまいんだよなー。って、自分が癒されてどうするの私。


「お待たせ。」


そうこうしてるうちに、お茶を彼女が持ってきてくれた。

いつもはどこか聞きづらい雰囲気を持っているのでなかなか聞けないのだが、

今日は何故か彼女にどうしても聞きたくなり、失礼とはわかっているけど

聞くことにした。


「ねえ、何で外に出ないの?」


「えっ?」


「私には羨ましいぐらい、いろんなことが出来るし、美人だし、性格いいしさ。外に出たらすんごいモテるよきっと。」


「・・・・。ほめすぎだよ。」


彼女ははにかんでいたが、少し目が悲しそうだった。


「私ね、雨が好きなの。」


悲しげな顔を振り切るように、彼女は続けた。今日は外は雨。結構な土砂降りだ。


「家で聞く雨の音は、それだけで何もかも忘れさせてくれるから・・・私は好きだな。」


それ以上聞いてはいけないような気がしたので、話を変えた。


「雨か・・・。ま、確かに聞いてると落ち着く気はするかな。」


『家で聞いている』という前提で、私は言った。


「うん。」


外の雨を見つめながら、2人の無言の時は、静かに流れていくのだった。

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