違法建築
まるで子供が無造作に重ねた積み木のように広がるガラクタの塊が、私の世界。
追い出されるように、押し出されるように、互いを尊重することも無く、ただ自分のことだけを考えて、人々は自分の住処を作り上げた。
廃材を拾い集め、壁を、天井を伸ばしていく。
一人が作り一人が真似をする。そしてまた一人が真似をする。そうしてこの廃材の塊は出来上がってきた。
剥き出しのパイプの上に鼠が走る。
床には汚れた水が流れ、下へと落ちていく。
こんな世界で私は生きている。死ぬために生き延びている。
まるでこの建物に蔓延る寄生虫のように。
建物は楽だろう。
私みたいに食べ物に在りつけなくとも、泥水を啜らなくとも勝手に育っていくのだから。
人間という名の寄生虫を体内に住まわせて、自分を大きくさせる。勝手に膨れていくのだ。さぞかし楽だろう。
膨れ続ける塊は四角いあの空さえも遮っていく。
この場所が無くなれば、もう空を見上げることは出来ない。
遥か遠くに見える空を、もっと近くで感じたかった。
薄れゆく意識の中、最初で最後と願う。
その願いすら、叶わないことを知りながら――。