愛 後編
「起きましたか?…ってあぁ。」
昨晩彼を拉致してから
目隠しをして、ベッドに手足を縛り付けて拘束した。まぁ、手足と言っても太ももまでしかないのだけれど。
そろそろ目を覚ましたかと思って彼のところまで行ってみると、頭を振って、手足をバタつかせていた。
「ご機嫌いかがです?」
「あっ!!お前は・・!!!なんなんだよお前!今度はなんだ!もういい加減にしてくれよ!」
「…今の自分の立場、分かっているんですか?動けないですよねぇ?つまり逃げられないですよねぇ?動けない、逃げられないと言うことは、もし私を怒らせるようなことがあれば……すーーーーーぐに!!!殺されちゃうんですよぉ?」
「…っ。」
恐怖に凝り固まったような表情っ。これはこれでいい。目は見えないけどね。私がこんなに狂ってしまったのはあなたのせいなのだから。分からせてあげなきゃ。分かったらきっと私のことを愛してくれるよね?愛してくれないかなぁ?まぁどっちにしろ結末は同じなんだけど。
「そもそもぉ、いい加減にしてほしいのはこっちなんですよねぇ~?優しさだけを振り撒いて愛だけはくれないなんて。一体何がしたいんです?キープですか?私は?」
「キープ?そ、そこまでの位じゃない…よ。だって顔可愛くないし。持ってあげても最低、肉体関係だけだよ。」
悲しい。彼の本音が私の想像していた最悪の想像だったなんて。なんとか楽観的に考えなきゃ。
せっかく、犯罪を犯してまで彼を手に入れたのだからまた心を折られてしまっては意味がないじゃない。
「そうですか。本音が聞けて…嬉しいですっ。
そして一つ、教えてあげます。
あなたの愛していた・・さんは、消えましたっ!…ってか私が、この手で消去しました。」
「なっ…?!!」
「あいつの話はここまで。これ以上は何も教えてあげないっ!
あーーーーーーーーーーー、あと!気になってますよネ?足の違和感。確かめさせてあげる。目隠し取りますね。」
「はっ…?あ、あぁぁぁっ!!!???」
「脚っ、取っちゃいましたっ!だから逃げられないですよね!…でも~、私ぃ~心配性だからぁ、匍匐前進で逃げちゃうと思って一応拘束してるんですよぉ!」
「・・・。」
「えへへ~っ。観念しましたか~?」
「…しなきゃ殺すんだろ?」
「ん~?まぁそうですねっ!あははっ!」
「あ~、そうだ!最近性処理しましたか~?」
「…してない。」
「はい?」
「してない…です。」
「そぉーーーーですか!じゃあやってあげますねぇ。」
「・・・。」
初めて感じた大好きな彼のモノ。犯罪を犯しながら行為を楽しんだわけだから背徳感が凄まじかった…。性処理って名目で私がセックスしたいだけなんだけど。良いよね。好きなんだもの、ヤりたいのは当然じゃない。
何も抵抗しないしまだ何日か楽しむのもありだけどいつ警察が来るかも分からないから早めに終わらせた方が良いよね…?
「ねぇ?」
「何?」
「愛してるよ・・。だーい好きっ。」
チュッ
「・・はどう?私のこと、まだセフレとしか思っていないの?」
首に手をかけながら質問する。彼の額には汗が滲んでいる。きっと答えなければいけないことを分かっているんだろう。さぁどう答えるかしら。思い通りの答えなのだろうけど、それで助かると思ったら間違いなのだから…。
「俺も…あ、愛…して……い…る…よ………。」
「そっかぁ!嬉しい!やーーっと両想いになれた!」
そう言って彼の首から手を放すと、彼は少し落ち着いたように小さなため息をついていた。油断は禁物なんですよ?ベッドの下に何があるか彼は知らないだろうけれど、下にはカッター、包丁、カミソリ、チェーンソー、電動ノコギリ、糸ノコギリ、自作のギロチン、短刀、拳銃、針、ハサミ、自作の棘付きのローラー、親指締め機、頭蓋骨粉砕機、苦悩の梨…なんていう物達が置いてあるんだよねぇ。
オーソドックスに包丁でいきますけど
「ね!!!!!!!!!!!!」
グサッ!!
「あ…な、んで……?」
「愛し合っているうちに終わらせようと思ってっ。」
「あ、ああぁぁぁ…」
「私も…。」
ズブッ…
「えへへっ、こ、これで…ずっと一緒ですからね…?永遠に愛してます。」
「・・・。」
あぁ、最期を彼と一緒に迎えられるだなんて、私は幸せだよ…。
遠くから聞こえるパトカーのサイレンの音が耳に届くが私はそれを無視して彼と眠りについた。
苦悩の梨とはヨーロッパの拷問器具です。気になる方は是非調べて見てくださいね。