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愛 前編
愛している人がいる。
目の前に。
ベッドの上に縛り付けられていて、目も見えずに動けずに。
私には好きな人がいる。
何年も思い続けてきた。
でも、彼は振り向いてくれなかった。
私の愛は重くない。
そもそも先に優しさを振りまいたのは彼なんだし。
…どんな言い訳をしても、愛が重いことは自覚していたし、
自分が彼に釣り合うほどの顔ではないことも知っている。
ちょっとでも釣り合おうと努力したけれど報われなかった。
何をどうしても微塵も変わることがなかった。
だから、彼に気に入られなくたっていいから
彼を手に入れることにした。
背後から忍び寄り、後頭部を鈍器で思い切り殴った。
昏睡させることも考えたけれど、睡眠薬なんて持っていないし。
気絶している彼を私の家まで車で運んだ。
逃げられてもこまるし、肉片なら私が食べればいい。
チェーンソーは音を上げ紅い涙を流した。傷口は一応止血してあるし死ぬことはないだろう。
「これで逃げられないよね。」
私は大 大 だーーーーーーーい好きな彼を手に入れた。