れいの秘密-望月 said-
橘くんを送り届けたあと、俺は急いで博士のところに向かう。助手席に寝ているように見えるれいだが、なかなか状況はまずいようだ。橘くんはれいの秘密をきっと知らない。とりあえず急ごう。
博士の研究所についた俺はれいを急いで運ぶ。こうなったのは初めてじゃないから慣れている。でも今回の症状は重い気がする。
れいの体調不良は病院なんかじゃ治らない。なぜなら、ロボットだからだ。何かが原因でヒートしてしまったのが今回の発作に繋がっている。ロボットと言っても、人間と見た目の違いはわからないくらい高性能。防水も完璧だし、ご飯も食べられて、排泄もできる。感情だって持てる…けど、あまりに大きな感情を覚えたりすると今回みたいな発作が起こることがある。れいはもともとはソングロボットとして作られた。だからReiとしての仕事が彼女の本来の仕事。そしてこのことは社長や博士、そして俺だけで守ってきた秘密である。学校に通わせるのは最初は反対だった。でもこれはRei自身が提案したことだった。
「博士!れいを見てくれ!」
俺の焦った大声を聞いた博士は驚いて駆け寄ってきた。
「またヒートしたのか!はやくベッドへ!」
「わかった!」
博士はバタバタと走り、必要な道具やら何やらを用意している。ベッドにれいを寝かせた俺は、ひたすられいの容態が良くなるのを願うことしかできない。しばらくバタバタしてたのがおちつくと、博士はれいの様子を見る。そしてこう言った。
「高校に慣れてない疲れと、仕事の疲れ。それから…」
「それから?」
「何か新しい感情が芽生えたようだ。それが何かまではわからんが、人間としてはとても大きな感情だ。これだけヒートするんだかられいはまた1つ人間に近づいたようだ。これからアップデートして容量を大きくする。たぶん、それだけで大丈夫だ。」
「そうか…一体どんな感情なんだろう…」
「なんだろうな…とりあえず明日は休んだほうがいいかもしれない」
「そうだな、社長にもスケジュールに関わるところにも連絡しておくよ」
「…んん」
「「…!」」
「れい!大丈夫か?俺だ、望月だ」
「…あ、望月さん。またヒートしちゃった…ごめんね。それから博士も」
「俺はいいんだ。それと橘くんはちゃんと送ったし、彼はたぶんれいが寝てると思ってたみたい。れいがロボットだということはもちろんバレてないよ」
「…よかった、ありがとう」
「今日と明日のスケジュールはキャンセルするから、明後日からまた頼むよ」
「…うん、わかった」
しばらく休むと、れいは家に帰ると言い出したから俺は家まで送り、そして俺もまた家路に着き、眠った。