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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
捕らわれた四霊のメイレ
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港町の夜の調査

 雫は街の裏路地で手招きをする。

 手の平ほどの小さな人の姿に羽が生えた精霊がそれに気づく。

(あれ?もしかしてあたしに手招きしてるの?)

 人が精霊を向いている何て思わなくて、気になった。

『ねぇ、あなたもしかして私が見えるの?』

 ふよふよとゆっくり近づく。

「ああ見えてる」

『ほんと!ほんと?』

 こくんと頷く。

 ぱちん。

 精霊が小さな手を叩いて笑顔になる。

『きゃあ~嬉しい。もうずっと精霊と話せる、かたなんていませんでしたから』

「う~ん、お話は今度ね。今は聞きたい事があるの」

『メイレの事だ』

 雫の後ろから冷たい声。

 小さな精霊がビクつく。

 後ろを振り向くと四霊騎士のフリーデがいた。

『っひ……』

 四霊騎士のフリーデと言えば氷のような騎士として有名だ。冷たくて近づきづらい氷のような女の精霊。

『あ、ごめんなさい、すみません』

 逃げようとした小さな精霊をフリーデが捕まえる。

 カタカタと精霊は震え青い顔でフリーデを見上げる。

「離してやれ、フリーデ」

『はい』

 フリーデが手を開くと、握られていた精霊が少し下に落ちてからふよふよと浮き上がる。

 不思議そうな顔で、精霊がフリーデを見上げる。

『えっと、貴女はフリーデ様が怖くないの?』

「全っ然」

『ええ、この方は私なんかよりも遥かに美しく、怖いですから』

『え?』

 小さな精霊が目を見開く。

「そうそう、フリーデでも止められない事、ないしな」

『え?いくらなんでも四霊騎士に人が勝てるわけないよ』

『この方は精霊王です』

『え?え――』

「こういう反応ばっかだなー」

『珍しいですからね』

 言ってフリーデが右を向くと、溜息をついて雫も右を向いた。


「とりあえず、メイレが、どこにいるか知っていたら教えて」

『ごめんなさい、わからないわ』

「そっか、じゃあ、この街に今、精霊が少ない理由はわかるか?」

『それなら、何となくわかります』

「教えて、そっちもどうにかしてみせるから」

『ええと、最近、突然精霊の気配が消える事があるんです。私は、偶然傍にいたんだけど、灰色のスーツにマントの男性が球を取り出すと、球に映った精霊が中に吸い込まれるように消えたんです』

「『それだ』」

 フリーデと雫は顔を見合わせて叫ぶ。

「その男の特徴でも何でもいい、できるだけ詳しく教えて」

『はい、わかりました』

 雫の瞳が深く深く沈む。

(あ、これが、精霊王の顔なんだ。)

 ちらっと見え上げて、それがわかる。

『えっと 青い髪を後ろで結んで一括りにして、白衣を着た長身の男です。コートを羽織っていて、中に灰色のスーツを着ていました。あと杖を持っていたので、魔法使いだと思います。』

「そりゃあ、そうだろ?」

『え、そうなのですか?』

「ん~勘だけど、たぶんな~」

『何故、そう思うのか詳しく、お聞かせ願いますか?』

「ああ、霊封の宝玉を偶然持ち出した奴が、数日で、その魔法道具マジックアイテムの使い方を知るとは思えない。調べるにしたって、古文書何かをあたらないとわからないから、個人が、突然そんな事をしていれば目立つ。その上、持ち出す時に精霊に関わる物も他にもありそうなのに、それだけ持ち出している。――で、結論、そいつは事前に霊封の宝玉を知っていて狙っていた。そんな事を調べられるなら、恐らく魔導師だろうって事」

『少なくとも相手に魔法に精通した使い手がいるのですね』

「そう言う事、それより、居場所はわかる?」

『ごめんなさい。わからないの』

「わかった、話を聞かせてくれてありがとう。行っていいよ」

 小さな精霊はお辞儀をしてからぱたぱたと去っていった。

『彼女本当に居場所知らないんですか?』

「知らないと思うよ。霊封の宝玉の事、話している間、ずっと震えてたし、怖くて近づけなかったんじゃないかな」

『よくそんな風に思えますね』

「それがわからなきゃ、幻影使いなんてやってないよ」

『そうですか』

 返事を聞いて顔を見合わせてから、雫も裏路地を出ていった。


 ット。

 小さな音を立てて蒲鉾型の屋根の上に、空から降ってきて止まる。少し休憩しようと端に腰を降ろして足をぶらぶらと振る。

 メイレを早く見つけたい思いに、始めて見る青い海に感動も少し。

「う~ん、いないなぁ」

 海の方を雫が見渡しながら1人言のように言うと、雫の横に青い水の気配。

『そうですね。というより、不自然なほど、精霊の数が少ないです』

「えっ?こんなもんじゃないのか?だって水の都よりも多いだろ?」

『海に面しているので、海に関連した精霊が多い。精霊王がいるから水の都は場所柄にしては精霊が多いのが特別なんです』

「……それでも、不自然に少ないんだな」

『はい』

「恐らく霊封の宝玉の力だろうな……。なら今日は街を全体的に見て精霊の少ない場所を探そう」

『わかりました』

「それじゃあ、行くか」

『ええ』

 雫が、くるりと一回転して屋根から飛んだ。

 虱潰しに人間の雫が探そうとすれば手間も、時間もかかる。それをすると覚悟を決めているのがわかる。

 この人は決めた事は、意地でもやる。そして必ずやり遂げる。

 暗闇の中を飛んでいく雫を見送る、見送るフリーデの口に笑みが浮かんでいた。


 ストッ。

 小さな音を立てて高い建物の上に雫は降りる。

「本当に少ないな」

 街を一回りして屋根の上に屈みながら見渡しながら言う。

『ええ、そうですね』

「それじゃあ、少ない所をあたるか」

『あの、精霊を捕える相手を探すなら、精霊の多い所を探した方がいいのではないですか?』

「いや、少ない所を探す」

 フリーデンスは、?マークを頭の上に浮かべる。

「精霊の多い所は相手が、まだ手をつけていない場所だろ。精霊達が反撃する事を考えれば拠点があった方がいい。犯人捕まえて、残った施設使われて同じような事件が起きるのは、ご免だ」

『確かにそうですね』

 答えたフリーデは尋ねる。

『では、感情的には何故ですか?』

「……」

 雫は、ふぃっと目を話して前を向く。

「精霊を囮にするみたいで、嫌だ」

 照れくさくて、ごまかす。

(そんな、あなただから良いのです)

 フリーデは、雫の姿を後ろで見て微笑む。

「行くぞ」

 雫は建物から飛び降りた。


「ん~、特におかしな所はないな」

 もう何箇所か調べて回った。けれど、特に怪しい所はない。

 見て回った感じだけど、隠れ家みたいな場所はない。

「次は、あの灯台に行くか」

 雫は街の中から灯台を見上げる。

『海に一番近いのに精霊が少ない。あそこが一番怪しいです』

「そうか、じゃあ、行こう」

『良く言いますね。逃がさないために、確実に事を終わらせるために街の入口付近から調べていったでしょう』

 その通りだと肯定するようにふふっと笑う。

(ん?)

 ふと雫は空を見上げる。五感を強化する魔法を使っているから気がついた。

『どうしました?』

「雨の匂いだ」

 フルーデも空を見上げる。

『振り出す前に終わらせましょう』

「そうだな、急ごう」

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