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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
捕らわれた四霊のメイレ
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ハフェンスダートへ

 翌日、フランツ達は今までより早い時間に朝食を取るとすぐに宿を出た。ゆっくりしていると、焔に捕まるかもしれないからだ。

 フランツ達は事前に待たせていた、王家の専用黒塗りに金の装飾がされた馬車で街を出ようとすると門の前で馬車が止まった。

「どうした?」

 扉を開けてライアットが外に出ると馬車の前に雫がいた。こっちを見ると近づいてくる。

「おはよ」

「……ああ、おはよ」

「あたしもハフェンスダートに行きたいんだけど、連れてってくれない?」

 ライアットは疑わしげに見る。

 雫は精霊王だ。しかも昨日は敵として戦った。だから警戒しながら慎重に尋ねる。

「何しに行くんだ?」

「買いついで

 信用できるわけない。

「安心しろ。そっちの邪魔はしない」

「……聞いてくる、少し待てってくれ」

 雫がこくりと頷いたのを見てから、ライアットは中に入る。


「泉が一緒に連れてって欲しいそうだ。どうする?」

 赤い皮張りの馬車の中に入って、ライアットは尋ねる。

「泉?誰だ、それ?」

「焔の級友クラスメートだ」

「そうか。けど、危ないかもしれないんだろう、ダメに決まっている」

 てんは少し考える。

 昨日、四霊の名を出したのはハフェンスダートに連れて行ってもらうためだと思う。もし今回も敵になるのなら、王子はハフェンスダートにいない方がいいはず。それを連れて行くつもりなのだから、今回は敵じゃない。だったら精霊王の協力はあった方がいい。

「……別にハフェンスダートで一緒に行動するわけじゃないでしょ?なら連れてってもいいんじゃない?」

「そうだな。中に入れてくれ」

「それもそうだな。わかった」

 フランツの決定を聞いて、ライアットは外に出る。

「乗れ」

 ライアットが中に入ると、雫が続いて入り、座ると馬車が走り出した。


「ライアット、ちょっと剣、見せて」

 馬車の中で正面のライアットに尋ねる。

「ん、何で」

 何度か戦った時、魔力真眼イクシリアン・アイズで見て、違和感があったからとはいえない。その時は精霊王として戦っているから、その事を知らない人が傍にいる今、言う事はできない。

「気になった事があるから」

「わかった、ほら」

 雫は言葉を濁す。

(別に剣を変な事をされるわけではないだろうし、まぁいいか)

 差し出された剣を手に受け取ると、椅子をトットッと指で叩き、気づかれないように魔力真眼イクシリアン・アイズ(火)と瞳に浮かび上がる、火の紋章を幻影の魔法で隠す。

 その状態で鞘をずらして少し刀身まで見る。

(やっぱりだ)

 雫の目には、赤い流れが見える。前に闘った時、その流れを魔力が満たしていなかった。つまりは、使いこなしていないのだ。

(勿体ないな)

 剣を鞘に収めて返しながらそう思った。


『雫様、追ってきている者がいます』

「何処か不審な点でも?」

『商人や旅人とその護衛にしては人数が少し多いです』

「そうか」

 馬車の中に座る雫の瞳が、深く沈む。

「どうしたの?」

 横に座るてんが、横を見て雫の様子に気づく。

「敵襲、追手」

 雫が目だけ、てんに向けて小さく呟く。

「王子、馬車を止めて。敵襲があるそうです」

 雫以外の全員がてんを見る。

「ここで待って叩いておかない?相手も待ち構えてるとは思わないだろうし」

 雫が小さな声でそう提案する。

「わかったそうしよう」

 街の傍だと何かあった時、衛兵が来てしまう。人の常識外の力を使ってしまった場合、見られているかもしれないし、王子達を説得したりと面倒だ。

 にやっと雫は下を向いて誰にも見えないように笑みを作った。

 ちょうど水の都とハフェンスダートの中間あたりで馬車を止めると戦闘できる3人、フランツ、ライアット、パーシルが降りた。


 暫く待っていると燻んだ灰緑のローブの馬に乗った集団が追ってきた。

「本当に来た」

 追手は馬を3人の前で留めると降りる。

「王子、悪いが命を貰うぞ」

 話しかけてきた追手がスラっと剣を抜く。続いて後ろにいる追手も剣を抜いた。

 相手は剣を抜いたのが6人に杖を持っている魔導士らしいのが2人、合計8人。

 3人が武器を構える。

「誰の命令だ?」

 何故狙われたのかは聞かない。フランツが王子というだけで狙われるには充分だ。

「教えらんねぇよ。こっちもプロだ、守秘義務がある」

「そうか」

「いくぞ!」

 目で合図をすると6人が一斉に動く。

 ガキィン。

 ダダダっと走ってきた相手にライアットとフランツに2人ずつ付き、甲高い音を立て、剣を交わす。それだけで相手の力量を、強いと把握する。

 その隙にフランツとライアットの横を2人が抜ける。

 3人に2人ずつ、つく。

(やばい!)

 振り向いて助けに行こうとしたが、目の前の男に邪魔をされる。

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