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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
恩恵を水霊の手に 石像破壊事件
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事件調査 図書館

 雫に見られているとも知らない3人は、図書館に向かった。

 焔達は図書館の中に入る。

 キラキラ。

 てんが大量の本に目を輝かせた。本の虫である博の助教授も本の虫だった。

「てんさん、石像の事を調べるんですよね?」

「もちろんよ」

 そう言ってはいるが、もの凄く読みたそうにチラチラと本を見ている。

「焔さんは雫様の狙う残りの石像は、わからないのですか?」

 てんは、雫の沈んでいく不思議な温度の青い瞳を――雫に精霊王の片鱗を見てしまっている。だから雫がいない所では様をつけるようになってしまっていた。

「はい、私が見た時に赤丸がついていた所はもう全部、壊されました」

「わかりました、では焔さん、話を聞くと雫様がここで調べ物をしていたんですよね」

「そうよ」

「じゃあ、雫様が読んでいた本を持ってきてくれない?できるだけ多く」

「そっか、泉さんから追いかけるのですね」

「そうです。そこから追いかけた方が早い」

「わかりました」

 フランツ、パーシルこの2人とライアット、てん、焔に別れたのは雫=精霊王と知っているから、雫の行動から、次に壊される石像を探すためだ。精霊王に他の者に話してはならないと約束をしている。

 もし精霊王が人間の少女だと知れば、王子は会おとするだろう。それは調査の障害にしかならないし、精霊王を安く見てしまうかもしれない。そうなったら、犯人がわかっても捕まえられっこない。それでは困るのだ。


「どうぞ」

 ドサドサッ。

 焔は雫が読んでいた本を持ってきた。

 てんの前に積み上げられる大量の本。彫刻・建築等の芸術関係の本、水の都の歴史の本、神話や伝承を記した本をまた持ってきては置く。

 まだ、前に持ってきた本の山も調べ終わってない。

「……これ、全部調べた、の?」

「いえ、そういえば、パラパラと捲って、必要な所だけを読んでいたような……?」

「なかなか時間がかかりそうですね」

(仕方がないですね)

 持っていた大きな肩かけ鞄から蝋燭の3つ立つ黒に近い深い緑の燭台を2つ取り出して、机に置く。その間に緑の下地に白で2重の円とその中に六芒星の描かれた布を置く。

「金を対価に」

 てんが、ピンと金貨を1枚指ではじくと六芒星の上で消えた。

「探し求めし、知を我に示せ、文献検索ビワード・サーチ

 左右の本の山から本が浮いて、ページが捲られて行く。てんの目には必要な情報だけ、本と同じ文字が宙に浮かんで見える。1冊目が終わると2冊目へ、それを続けて行く。

「早い、こんな魔法があったのですね」

「うん、博教授に教わったの。でも、魔導士の魔法じゃないから使い手が少ないからその内消えてなくなる魔法だと思うよ」

「あの、魔導士と魔法使いの魔法はどう違うものなのですか?」

「うん違う。今はあまり区別されてないけど、魔法使いっていう括りの中に魔導士があるの。回復、補助、攻撃、そういった戦闘で扱う技能を持つ魔法使いの事を魔導士というの」

「そうなですか」

「でも、戦闘で扱う魔法が主流だから、それ以外の魔法はその内になくなるだろうって博教授が」

「それは、少し寂しいですね」

 焔の問いにてんは適当に相槌を打つ。魔法に集中していて、まともに焔の相手ができていない。

「ん~、やけに情報が少ない、探す内容を変えてもう1度」

(たぶん、精霊側の情報も必要なんだ。これは、時間がかかりそうだ)


 てんは何度か魔法を繰り返した。

「どうですか?」

「ん~なんとか、雫様が壊そうとしている石像はわかったよ」

「ほんとか!?」

 ライアットが近寄って来た。

 てんは、こっくりと頷く。

 てんは雫に話を聞いておいて良かったと思った。調べて出てきたベーゼルダインの石像は2つではなく、かなりの数があった。そこから8体壊すと言っていた雫の言葉から、8体の特別な石像を探した。

 精霊側の情報を得られない分を本の虫としての情報量の多さと分析力の高さで何とかカバーして、雫の壊そうとしている石像を見つける事ができた。それでも、見つけるまでに調べる範囲を雫以上に広げてどうにか見つけた。

「けど、2か所あるから、どっちかわからない」

「焔はどっちだと思う?」

「周辺の地図と石像の数を教えて?」

「これ」

 2つの地図を広げると石像の数に特徴まで教える。

「こっちね」

「理由は?」

「まぁ、女の感みたいなものです」

「それだけじゃ、理由としては弱い」

「泉さんは楽をしようとします。今回の場合は泉さんを妨害する戦力、衛兵何かの数が減る事です。彼女は王子の滞在期間を知らないから、滞在期間を過ぎて王都に帰る可能性を考えます。その後で、ゆっくり何度の高い場所を攻略する方が楽だと思うはず」

「確かにそうだな、絶対の根拠ではないが、そっちの可能性の方が確かに高そうだ。俺は焔にのる」

「私もそれでいいと思う」

「じゃあ、後はフランツ達も何か掴んでくるかもしれないし、皆で集まって考えよう」

「わかりました」


 焔達はフランツのいる宿に戻って来た。

「ライアット、そっちはどうだった」

「大収穫だ。そっちは?」

「こっちはさっぱりだ。とにかく話を聞かせてくれ」

「ああ。けど、とりあえず部屋へ行く」

 フランツが周りをチラッと見る。ここでは人目が多い。

「わかった」

 5人はライアットの部屋に入ると、席に着く。4人席でフランツの隣がパーシル向いにてんと焔で、1人ライアットだけが立っている。

 ライアットが今まで調べた事を説明した。

「こっちはまったく見当がつかなかったのに、よくそこまで調べられたな」

「実は地下水路で王子と別れた後に、俺と焔は精霊王に会ってるんだ。その時の様子や人柄を元に調べたんだ」

「そうか、もう時間もないし、とにかくその石像の場所へ向かおう」

「ああ」

 5人は宿を出て行った。


 石像のある溜め池へと暗い夜道を5人が進む。街灯に照らされている石畳の上を進む。

 焔は勝つき満々で歩いている。

「なぁてん、雫を止められると思うか?」

「無理ね、十中八九必ず負ける」

(やっぱりそう思うか)

「でも、次はそう簡単にはやらせない」

「?」

「今回は精霊をじっくり観察させてもらうわ。次は準備して待ち構えられるのだから」

(精霊王である雫様、少なくとも先代精霊王認められる程の人に挑戦する)

 てんは眼鏡を指で押し上げた。

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