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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
恩恵を水霊の手に 石像破壊事件
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事件調査 破壊された石造の広場

「とりあえず、聞き込みよね」

「ああ、はいはい」

 焔は壊された石像のある広場に向かって歩き、雫はその後ろ動く可能性のある石像には近づかないように気をつけながらついて行く。

「あの、壊された石像動いたっていう話も聞きました。石像が動くならそれ、ガーゴイルとか機械人形ゴーレムですよね。でも、迷宮内ならともかくここは街ですから純粋な魔物であるガーゴイルは考え難い。なので動く石像は機械人形ゴーレムだと思います」

「この街ができた当時からある年代物だったらしいからな。その時代の魔工技術なら、相当なものだろ」

「そうなのですか……ところで、良くそんな事を知っていますね?調べてなければわからない気がするのですが?」

 目線を落して納得した後、目線を上げて、雫を見る。

「そういえば、お前、星詠みの学者だったっけ」

「ええ、ですから知らない事は知りたくなるんです」

「ふぅん」

 雫は目線を反らして空を見上げ、てんは含みのある笑みを浮かべた。


 広場の壊された石像付近には黄色いテープが巻かれていて、赤い服に銀色の鎧と帽子のような兜をつけ槍を持った衛兵が見張っている。

 焔が広場の人に何か見なかったか話を聞いていて、衛兵の前でてんが話をしている。

「あの、石像を調べさせて下さいませんか?」

「ダメだ!」

「王子に言われて石像破壊事件を調べているのですが」

 衛兵は疑いの眼差しでてんを見る。

(ん~、駄目そうだな)

 本当は石像を調べて、壊された石像の共通点を探して次に狙われる石像を割り出したかったけど、これではできそうにない。


 やる気なさそうに雫は、広場のテーブルで頬杖をつきながら、2人の様子を見ていた。てんは雫のいるテーブルの前に立つ。

「雫さん、さっきから近寄らないようにしている石像がありますよね?」

「……まぁな、わかったお前には話しておく。けど、そっちにも何かあるんだろ?」

「はい、お話します。占星術で星を読んだんですが、あなたについて良く分からない事がわかりました。それは、あなたが精霊のための王だからではないかと。仮説ですが」

「うん、そうありたいと思ってる」

 雫は僅かに目を伏せる。

 叡智を秘めた海の底のように沈んでいく瞳をてんは始めて見た。見て、これが精霊王だとわかってしまった。

「そうですか、それでは今回の事は?」

「ああ、石像を壊してるのは、あたしだ。あの石像は精霊から力を取っていて、それを恩恵としてこの街から国中に流しているんだ。あたしは今まで、そのシステムで行われていた恩恵を純粋に精霊自身の意思に委ねたいと思ってる。だから、精霊の力を取る石像は壊す」

「……」

 てんは黙って話を聞く。

「長い時間が立ったんだ。その間に人は変わり、精霊も変わった。あたしという今までにない精霊王が現れたんだ、人と精霊の関係を変えるにはちょうどいい」

「そうかもしれません」

「この方法で、精霊の恩恵が回れば精霊王の力も普通の精霊の恩恵に混じるから、精霊王が支えていた封印も他の水霊の力で再度封印できる」

「事情はわかりました。では現状はどうなってるんですか?雫さんが石像を避けているのはどうしてですか?」

「ん、あの石像は1度でもどこかの同じ製造者の石像を壊すと、その人物を判別して標的にするみたいなんだ。あたしはもう3個壊したから標的。で、あたしがいたら石像が襲ってくるだろ。その時に傍にいたら焔も襲われるだろ」

「そうですか」

「あたしが壊しているのを知られたくないのもそうだけど、焔に壊させたくもないんだ」

「ん?焔さんでも石像は壊せるんですか。でも壊せるのならどうにかなるのではないですか?」

「最初の1体だけはな。この時だけは焔を標的にしてないから、壊せるかもしれない。標的になったら壊せないと思う」

「そうですか。ところで壊す石像は何個ですか?3、4日と言っていたから街中全てを壊すわけではないのでしょう」

「壊す必要があるのは全部で8体。内、壊したのが3つ、元から壊れているのが2つ、残りは3つだ」

「わかりました」

「王子に言うか?」

 海の底のような深い瞳がこっちを向く。ただ優しいだけの瞳じゃない。

「……止めておきます」

「そうか、良かった」


 焔が話を聞き終えて2人の方に戻ってくる。

「もう、2人とも手伝ってよ」

「すいません、つい雫さんと話し込んでしまいました。それで、どうでした?」

「ダメね。新しい事は特に出てこなかったわ」

「あの、人目を避けようとしているのなら、活動が夜間から朝までなのではないでしょうか?」

「確かにそうね」

「だから、その時間に街に出る人でなきゃ、見てないんじゃないかな?」

「……は!」

 焔はその事に今頃気がついた。

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