動きだす機械人形
翌日、まだ日が登らない暗い時間。
ボロボロのローブの着る前を縛るとフードを被る。
「よし」
姿見鏡を見ると、窓を開けて2階の部屋から飛び出していった。
部屋には窓の前の机の上に出した本のページがパラパラと風で捲れた。
屋根から屋根へ飛び移るボロボロのフード付きのローブを被った人影がある。
トン。
屋根を大きく蹴って石像の前に降りる。ゆっくりと体を起こし2m程の天使の像を見上げる。
人が少ないこの時間とはいえ、怪しすぎるその姿は目立つ。
ット。
小さな音を立てて、跳ぶと天使像の台座に乗る。
片手を天使像にそっと当てて押した。天使像は台座から落ちて砕けた。
「何をしているお前ー!!」
叫び声を聞くと、人が集まってくる前にその人物は霞んで消えた。
また屋根から屋根へと跳び移り、違う広場まで悪魔の石像の上に屋根から降り立ち殴りかかった。
(これで3つ目、楽勝)
石像はギギギと顔を上げてローブの人物を見た。それからすぐに翼を広げて跳んで避けた。
(え、避けた?)
ドォン!
地面に大きな穴を開けて降りた。
『どうなっている?』
「たぶん、1度石像を壊したからだ。それが発動条件になってたみたいだ」
ローブの人物は石像に向き合う。いや石像だった物だ。
今は関節なんかの僅かな隙間に機械の部品が覗いている。機械人形だ。
「ベーゼルダインの作品だな」
『ベーゼルダイン?』
「ほら地下水路で魔法を封じる部屋があったろ?その部屋の主だ。木製のボードに機械人形の図面が貼ってあった」
『そうですか?』
「まぁ、どっちにしろ壊すだけだ」
ローブの人物が、悪魔の像の機械人形と対峙する。
「……!!」
ローブの人物が咄嗟に前方に跳び、転がった。その場所に光の線が走った。
「あっぶな」
手で地面を弾いて立ち上がった。
『貴女が不意打ちを受けるなんて、珍しいですね』
「油断してた……1体だと思ってし、眼で属性が見れるけど、この街の中の物は見慣れてて、多少おかしくても今まで気にしなかったからな」
ギギギ……。
「もう、問題ないみたいだぞ。動くのは全部動きだしたみたいだ」
殴って石像を砕こうとしたか、砕けない。
(見た目よりも硬い。じゃあ、もう少し効果の大きい強化をさせてもらおうか)
今度は余裕で蹴り砕く。次の機械人形を殴ろうとして避けられた。それから何度かやったが、やっぱり避けられる。
「っち、早い」
(……こいつらどうやって、こっちを知覚してるんだ?)
それがわかれば幻影系等の魔法も使える。
けど、そんなゆっくり考えている暇はない。今、太陽が昇り始めたからだ、人が集まってくる。
「仕方がない」
使わせてもらう。
「……我が前に立ちはだかる者よ、大地に眠れ(アース・グレイブ)」
地面を殴打する振動で付近の機械人形を倒すと、その場を去った。
(ん~、3個か、もうちょっと壊したかったけどな~)
屋根の上を飛びながら、そんな事を考えていた。
ッド。
後ろから何かにぶつかられてバランスを崩して落ちる。
「えっ?」
ローブの人物は落ちながら振り向いて 烏のような機械人形を見た。
また、油断していたんだ。襲ってくるのは標的の機械人形近辺だけだと思っていた。1度でも機械人形を壊すと、街中の全ての機械人形の的になる。
そのまま水路に落ちた。
「何、あれ?」
葵は水日課で路を小舟で進んでいたら、空を飛ぶ、人影を見た。
(あれ、何)
気のせいだと思って目をごしごしと擦った。気になったがすぐに消えて見失ってしまった。
また、進んでいるとその人影を見た。
(え?うそ何で)
葵は水路を進んでいた、けど最初に空飛ぶ人影の方が前に現れた。
間には水路だってあるはずだ、この水の都では小舟よりも早く進めるもの何ていない筈だ。そう思った時、かなりの高さまで飛び上がった。
(ああ、あれだけ高く飛べるなら、水路を飛び越えれるわね)
そこまで考えて、人があんな高さまで、跳べるのがおかしいと気がついた。
葵はその人影は水路に落ちっていったのを見た。




