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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
水霊王の世代交代
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清晶洞窟のメルーティカ

 洞窟の狭い通路に入り、そこを抜ける。

 青く輝く空間に1歩入ると空気が変わる。

(精霊王の間の雰囲気に似てる)

 広い空間は仄明るく輝く水晶が、あちこちにあり、大きな輝く泉がある。比喩等ではなく本当に輝いている。

(うわぁ、何これ)

 何で輝くか知りたくて近づいて覗いてみた。

 移るのは自分の顔と水の中。その中に水晶があって輝いている。

(うわぁ、凄い)

 不思議な空間につい見惚れてしまう。

『雫様、眼をお開き下さい』

「あ、うん。そうだね」

 精霊の声は聞こえているから、精霊がいるのは、わかっている。

 雫は扇子を振って、魔力真眼イクシリアン・アイズ(水)を使う。

「おお~」

 人魚の姿者や人の姿の者、獣の姿の者等様々な姿の精霊が見えるようになる。初めてこんな数の精霊を一緒に見たし、いろんな種類の精霊にさらに感動する。

 精霊達もこっちを興味ありげに見ていた。


『お久しぶりです』

『お久あ~』

 正面の精霊にメロウとフリーデが挨拶をする。

『はい、お久しぶりです』

 巫女服に似た服を着た精霊が挨拶を返す。

 2柱が挨拶をしたから、その精霊をついまじまじと見てしまった。

 その精霊が一番濃く見えるし、綺麗で目を奪われた。青く長い髪で美しい鳥の描かれた扇子を持っていて、物腰が柔らかくて、優しそうだ。

『あら?』

 座ったままのその精霊を、こっちがまじまじと見ていたら、目が合った。

『あの、もしかして見えていますか?』

 巫女服のような服を着た精霊が問いかけてきた。

 精霊達は、その言葉にきょとんした。

『あははは……』

『まさか、そんなはずないよぉ』

 否定したり、笑い飛ばす声。

「ああ」

 雫は頷くと、精霊達が雫に一層注目する。

『うそだあ』

『でも、まさか……』

 精霊達の声が、否定から信じられないに変わる。

『ではやはりその瞳の紋様は、水の魔力真眼イクシリアン・アイズのものなのですね。間違ってなくてよかった』

 魔力真眼イクシリアン・アイズは、ずっと昔の魔法で忘れられた魔法だ。今は使い手がいない。そう思っていたから誰も知らないと思っていた。

「わかるのか。凄いな」

 答えが返ってきて驚いた。

『あら?もしかして、聞こえてもいますか?』

「うん」

 会話が通じるのは嬉しい事だ。

 何日か前にみさきという水の精霊の血を僅かに引いていて、精霊を見る事ができる人にあった。こんな短期間で精霊を見える人に2人も会えるなんて思っていなかった。

 ずっと昔のあの懐かしい時代みたいだ。ふふっと笑みが漏れる。

『この方は先代精霊王バルガディア様に選ばれた現精霊王ですから』

『え?ですが、その方は人ですよね?』

 精霊王の世代交代。バルガディアが世代交代したことさえ、信じられないのに人が精霊王になったと聞いて驚かずにはいられない。

 あの偉大な存在である水竜を知っているからこそ余計に。

『貴女はバルガディ様の判断を疑うのですか?』

『いえ、そんな事は』

『なら、いい。彼女はまだ、王になったばかりで精霊について知らないので教えてあげて下さい』

『わかりました』


『私達の御無礼をお許し下さい。精霊王様』

「そんな無礼な事してないと思うけど?」

『そうですか?お優しいのですね』

 ふふふっと微笑む。

『まずは自己紹介をさせて頂きます。私はこの清晶洞窟の精霊の長をしております、メルーティカという者です』

 立ち上がってぺこりと綺麗な姿勢でお辞儀をする。

「あたしは泉雫」

『貴女は巫女ではないですよね。では、お話の前にその泉の上で、私達を知覚する魔法を使っていただけますか?』

「えーと複数でもいいのか?」

『はい、構いません』

「わかった」

 雫は2つの扇子両方を持つと急に瞳の青が深くなる。雰囲気が変わって、幼い見た目から幼いという印象が消える。

 そっと1歩前に出すと、周りから音が消える。精霊達は声を出す事も忘れて雫に見惚れてしまう。

 扇子を揺らしながら、1歩2歩進み、雫は泉の水の上を進む。足が泉を進む度に波紋が浮かぶ。

 ゆるゆると緩急のついた動きで、跳躍を織り交ぜ、くるくると踊り出す。

 微かな声で、魔法の呪文を歌えば、精霊達は頬に手を当て聞き惚れた。

 雫が低い姿勢でスゥ~っとゆっくり扇子を横に動かすと、踊り終えて、動きを止める。

 それは、魔法詠唱の完成を意味する。

 ゆっくりと体を起こすと魔法が発動し、空間内の水晶が反応して輝く。泉の中に巨大な魔法陣が浮かぶ。


「なぁ、これ何?」

『は、へ?』

 近くに雫がいて、見惚れていた精霊は急に問われて、間抜けな声が出す。

『あ、えっと……ここでは使った強化系の魔法が数日間維持されるんです』

「ここの水晶、ティアーズに似てる気がするけど、もしかして封印魔石?」

『はい、そうです。ティアーズと違って、職人に加工されていないので効果が永続的に維持されるわけではありません。そのティアーズもここの水晶が使われているんですよ』

「そうなんだ……封印魔石って貴重なんだよな。ここの水晶って簡単に取りにこれそうな気がするけど?」

 ここに来るまでに出た魔物は、ウルフ黒狼ブラック・ウルフと大蝙蝠のオニコリクテリスで、そこまで強いのはいなかった。

『確かにそうです。ですが、そういった方には上級精霊で対応しますので、簡単に持って行かせません。ずっと昔は、交易をしていたんですけどね』

「へぇ」

『所でメイレは元気にしていますか?』

「メイレ?」

『メルーティカ様の妹で、私と同じ四霊騎士です。メルーティカ様がここの長になる事が決まり、四霊騎士を引退した時に妹のメイレが代わりに四霊騎士になったのです』

 雫の斜め後ろに控えたフリーデが補足する。

「ごめん、あたし会った事がない」

『元気にしていますよ。本当は本人を連れて来させたかったのでしょうが、まだ時期ではないと、バルガディア様が判断されたのでしょう』

「そうですか……」

 それから暫く精霊の事や自分達の事を雫に話して聞かせた。雫は驚いたり、納得したりしながら話を聞いていた。

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