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雫輪舞(しずくロンド) 水の都の精霊王  作者: 優緋
水霊王の世代交代
22/62

清晶洞窟

「お、あった」

 木々の中、開けた場所に盛り上がった所に穴が開いている。付近の地面に草がまばらに生え、土が見えず石がある。

 暗い木陰の中から見た。

「綺麗」

 雫は微笑んだ。石の上に腰を降ろす。

『雫様?』

「ちょうどいいからここでお昼にしようと思って」

『そうですか』

 ウエストバッグから干し肉を1つ取りだして食べる。中には倒した狼の牙と爪が何個か入っていた。

 鞄には狼の尻尾と毛皮少し入っている。

 食べ終えると洞窟の中へ入って行った。


 雫は洞窟の中に入る。光が差し込まない中は暗い。

(何も見えない。……仕方がない)

 扇子を振る。使うのは魔力真眼イクシリアン・アイズ(土)だ。

 視界に茶色に大地が半透明に見えるようになる。

 その状態で見渡すと、結構奥が深い。これじゃあ、どっちに行けばいいかわからない。

(これじゃあ、精霊を探せな――あ、水の精霊を見つければいいのか)

 水の精霊がいるのは水の気配の強い所だ。

 だったら、と――雫は扇子を振る。使うのは集音アラボラだ。

 魔法が発動すると、すっと目を閉じて聞こえる音に耳を傾ける。

 ピチャン――。

 ピチャン――。

 水滴の落ちる音。今は波紋が広がる音まで聞こえる。

(……うん、聞こえる)

 暗い洞窟の中視線を廻らして音のした方を探す。

(え~と、こっちか)

 聞こえた方に進む。洞窟内は凸凹していて進み難い。慎重に進まないと簡単に足を取られる。それと少し斜めに下っている気がする。

 バサッバサ。

 何かの羽音が近づいてきて、咄嗟にしゃがむ。

(見えない)

 それに数が多い。天上付近でキィキィと声が埋め尽くしている感じだ。まともに相手をしてもきりがない。

 頭を両手で押さえて逃げた。

 天井に張り付いている大蝙蝠だが、襲ってくるのは仲間同士の衝突を避けるため3~4匹だけだが、雫にそんな考えに頭は回っていない。

 魔物の知識が乏しいが襲ってきていたのは大蝙蝠系のオニコリクテリスだ。


 進んで天井の低い通路に入った。大蝙蝠も天井にいない。

好機チャンス

 扇子を振って魔力真眼イクシリアン・アイズ(風)を使う。

 ザザザーと滑り、方向を急転回させて、おってきた大蝙蝠を叩き落とす。

 奥に進むと別れ道があるけど、集音アラボラで水の音を聞こえているので、迷うことなく正面の道を進む。


(だいぶ降りてきたなぁ)

 横には水が流れる川がある。その川を横に見ながら歩く。

 それに水の都に似た清浄な雰囲気がある。

(近づいてきたな)

 集音の中に水の精霊の声が混じり始めている。

『雫ちゃ~ん』

「ふわわわわ~」

 耳元で声がしてギュっと後ろから抱き締めた。

 精霊に触れられても感覚はないが、耳元の声に真っ赤になって手を上下にパタパタと振る。

(可愛い~)

「なぁ、今までどこに?」

『あ~それは~精霊には宿る物があって、その近辺にしかいけないの~。私は海から王都に繋がる川に宿ってて~、その川近辺が領域テリトリーなのよ~。その領域テリトリー内なら自由に現れる事ができるんだけど~、あの街道は領域テリトリー外なのよ~』

「あれ?フリーデは何に宿ってるんだ?ずっと一緒にいたけど?」

『フリーデちゃんは大気の水分に宿る精霊なのよ~』

「へぇ」

 初めて聞く話だ。

『あら、この暗闇の中見えてるの』

「あ~、一応は。でも、もうそろそろ魔力真眼イクシリアン・アイズが切れる」

『その魔力真眼イクシリアン・アイズって精霊を見えるようにする魔法じゃないの?ねぇ本当は、どういう魔法なの?』

魔力真眼イクシリアン・アイズ属性エレメントを見えるようにする魔法だ。精霊は属性に近いから見えるようになるんだ」

『ふ~ん、でも魔力そんなに無いわよね、私が代わりに見えるようにしてあげるわ~』

 両手を斜め上に広げると腰ほどの高さに、小さな水の球が浮かび上がる。

水光アクア・ライト

 言葉とともに淡く輝いた。

 属性を操る精霊の力は、魔法と違い詠唱を必要としないのが特徴だ。

 水光アクア・ライトは水属性でありながら光を放つという珍しいものだ。

「すご」

『うふふ。でしょ。ここからは私が案内するわ』

 2人は歩き出す。


 開けた場所に吊り橋がある。つり橋の下を覗き込むと水があって、ヘンな魚影が3つ。

 嫌な予感がする。

(……てい)

 試しに近くにある小石を拾って投げる。

 ポチャン、と石が落ちる音はしなかった。代わりに、チャポン、チャポン、チャポンと音がして魚が飛び出した。その魚が小石を牙で噛み砕いた。

(牙があるし)

 牙ある魚・カルプと呼ばれる魔物だ。

 橋は古くて渡れるかどうか怪しい。正確には1人は渡れるのだが、その判断が雫にはできない。

(仕方がない)

 雫は、距離を取って回転しながら、踏み切って飛んだ。

 トっ。

 小さな音を立てて反対岸に降り立つと、奥へ進んでいった。

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