007
ひと月が経過した。
今日は7月9日である。
俺は順調に依頼を達成していき、ランクが1つ上がった。
ついにFランクになれたのだ。
Fランクの依頼でお金も稼いでいたが、今月の家賃の銀貨10枚まで貯まらず借金ということで、銀貨5枚だけ支払うことで取り敢えず許してくれた。借りている先月の家賃もまだジャンさんに返せてない……。
あと、このシェアハウスに新しい住居者が今月から来ていた。兄妹で冒険者をやっていて、兄がロダ、妹がコルという。
2人も先月の上旬にFランクに上がったと言っていた。
そして、俺たちはこれから北の森のダンジョンに行くことになっているのだった。
「いってきます」
ノナンさんは相変わらずまだ寝ていた。
どうしてダンジョンに行くことになったのかというと、Fランクに上がってから、たまに2人と一緒に討伐依頼などを受けていたのだが、そのときに誘われたのだ。
ギルドで待ち合わせしている、あと1人を入れて4人で行くこととなった。
その1人のことは誰だかわからない。名前はフェルドというらしい。
ギルドに着く。
中に入るとロダが、あの人がフェルドだよ。と言ってくる。その人は、自分の身長くらいの棒らしきものを布で包み背負っていた。
あの人、前にカレンとぶつかった人だよな?
おじさんと話していたフェルドが俺たちに気づいたらしく、手招きをしてきた。
「フェルド、お待たせ」
「大丈夫。待ってないぞ」
俺は取り敢えず挨拶だけはしておいた。
「仮パーティの申請をお願い」
フェルドはおじさんにそう言うと、おじさんは紙を持ってきた。
「おうよ、これに書いてくれ」
パーティには固定パーティと、1人の人たち同士で組む仮パーティがある。
4人とも用紙に記入をしてカードを見せる。それで完了だ。
ダンジョンでもパーティを組んでおいた方がアイテムの分配方法などでもめることが少ない。記入事項にそういう欄があり、破ったら得たアイテムを没収されるというシステムがあるみたいなのだ。
このパーティのリーダーはロダだ。
「パーティも組んだし、簡単に自己紹介してから行こうか」
ロダは言うと4人掛けのテーブルに向かう。俺たちもその後に続いた。
「まず、僕からするよ。ロダといいます。今回は僕の呼びかけに集まってくれてありがとう。武器は片手剣と盾で前衛をやります」
「私はコル。魔法使い。回復魔法もできるけど攻撃魔法の方が得意だから、あまり怪我しないでね」
「俺はフェルドだ。呼びにくかったらフェルでいい。槍使いだ。よろしく」
最後に俺が自己紹介をして出発した。
街道は割と安全なので隊形も組まずに4人歩く。
「フェル、先月君が女の子とぶつかった時、俺と会っているんだけど覚えてる?」
「お! 覚えてるぞ。やっぱりあの時の人だったのか。服装が変わっていたから違う人かもと思ってたぞ」
そう言いフェルは笑う。
あの時は私服だったからな。今はちゃんとした防具をつけている。私服みたいで、軽く動きやすい防具だが、私服よりはダメージを軽減できる。
フェルと親睦を深めていると森に着いた。
「ここからは気をつけて行きましょう」
ロダの一言で3人は気を引き締めた。
森を歩いて行く。
「確かまっすぐ行けば着くって言っていましたよね」
「そうよ」
兄の質問に不愛想に答える妹。
俺はコルとはあまり喋ったことないんだよな……。
コルは無口な方で、ロダが結構お喋りだ。ロダとはよく話す。と言うか一方的に話をしてくる。この前行った依頼が大変だったなど、聞いてもいないに話してきて、たまにめんどくさかったりする。
「赤い紐が木についてるから、それをたどっていけば着くぞ」
フェルが付け足す。
そうして歩くこと20分。ダンジョンの入口に到着した。
嬉しいことに道中は魔物とは遭遇しなかった。
「ここまで何事もなく来れたな」
「だね。体力温存出来てよかった」
「そうですね。では、ダンジョンについて説明します」
ロダは地図を取り出した。
何回もクリアされているダンジョンは、マッピングをされていたりする。当然このダンジョンはマッピングをされていた。
「まず、このダンジョンは3層までで、出てくる魔物は、コボルト、ゴブリン、リザードマンです。この森にもリザードマンはいるみたいなんですが、出会わず来れてよかったですよ」
この森にいるのか! 薬草採取のとき出会わなくて良かった。
「ボスはオークです。見た目はゴブリンがでかくなった感じだそうです」
僕も見たことありませんがとロダは続ける。
魔物は、俺のいた世界の想像と同じ姿をしているのか、それとも違うのか……。
これから会うのだしその時わかるか。
「一直線で、ボスのいるところに向かいます」
「オッケー」
「了解」
「…………」
コルは無言で頷く。
「では、コウとフェルドは前でコルは後ろ、僕は真ん中で地図を見ながら先導します」
言われた通りの隊形を組み、俺たちはダンジョンの洞窟に入って行く。
ダンジョン内は薄暗いが見えない程ではない。
「光もないのにどうして真っ暗じゃないんだ?」
疑問を口に出してみる。
「ダンジョン内には魔力が通ってるらしいぞ。真っ暗なダンジョンもあるらしいが、どうしてかはわからないそうだ」
フェルが答えてくれた。
そういえば、ダンジョンは謎が多いって言っていたな。
「次の分かれ道を右です」
ロダはそう言い、フェルが右の道を覗く。
「しっ! コボルトだ。2体いる」
ダンジョンで初めての魔物と出会ってしまったようだ。
「まだ気づかれてないみたいだ。どうするリーダー?」
俺も覗いてみる。
グレーの体をした1メートルくらいの高さの魔物だ。武器は棍棒みたいのを持っていた。
「そうですね……。僕とコウがコボルトに近づいて気を引きますので、コルとフェルドは後ろから攻撃してください」
「わかった」
「おう」
「うん」
それぞれ返事をする。
「では、3数えたら僕たちが行きます。2秒後に来てください。……3、2、1」
ザッという足音をだし、俺とロダは走り出した。
コボルトたちも気づいたようだ。
走りながら俺は剣を抜き左下に刃を向け構える。コボルトも戦闘態勢に入り、こちらに走り出した。
リーチの差で俺の方が有利!
俺の攻撃範囲に入ったコボルトに、左下から斜めに切り上げて両断する。
「!?」
コボルトは素早く左によけ、俺の攻撃をかわした。
まずい、懐に入られる。
「うぉら!」
俺の後ろから槍がコボルトを貫いた。
「グアァ」
一撃でやられたコボルトは粒子となり、消えていった。
心臓がバクバクしている。一撃では死なないと思うが、危うく攻撃を受けるとこだった。
「助かった。ありがとう」
「いいってことよ。元からこういう作戦だろ」
かっこいいこと言ってきやがる、惚れちまうぞ。
吊り橋効果が発動したようだ。
「――――アイスアロー!!」
コルが唱えた魔法でもう1体も消滅していた。
「よし! コルは魔力温存のために最小限の魔法でいいよ。危ないと思ったときだけ強い魔法を使ってほしい」
「わかったわ」
「2人とも大丈夫でした?」
「おう!」
「なんとかね」
「コボルトは大丈夫ですね。あいつは素早いから注意が必要なんですよ」
……その情報は戦う前に欲しかった。
その後、ゴブリン1体と出会い前衛3人でリンチをした。
初心者ダンジョンだからか魔物が少ないのか?
2回の戦闘で下に行く階段を見つけることができた。
「リザードマンと会いませんでしたね」
「この前1人で来たときは1回遭遇したんだけどな。今回魔物が少ないぞ?」
フェルさん1人で来てたんですか……。さすがっス!
「……1人でリザードマン倒せました?」
「ん? もちろんだ」
「Fランクでも強い方の魔物を1人で……僕の目には間違いはなかった。クフフ」
ロダは何か企んでいるのか? 気味悪い笑い方だぞ。
「でも、ここから先は流石に行ったことないからな。気をつけていくぞー」
「おーう」
俺は調子のいい返事を返す。
「行きましょう」
ロダの号令で先に進む。
「コボルト1にゴブリン2だ」
2層に来て、すぐ遭遇してしまった。
「最初と同じフォーメーションで行きましょう。ゴブリンに2体は僕が引き受けますので、コウとフェルドはコボルトを倒して加勢お願いします」
「コボルトは俺1人で行くからフェルはロダの方に行ってくれ」
「コウ、大丈夫なのか?」
さっきのを見て心配してくれているみたいだ。
「ああ、もう大丈夫だ」
「わかった。いいよなリーダー?」
「僕は助かりますから嬉しいですが、大丈夫ですか?」
ロダは俺に話しかける。
戦闘経験が少ないという話をしたことがあるからの心配か。
良い奴らだな。泣けてくるぞ。
「もちろん!」
「じゃあ、その作戦で。 3、2、1――」
ゴー、と心で言いながら俺はコボルトに突っ込んだ。
さっきのは大振りだったから避けられて、懐に入られそうになったからな。小さい動きで仕留める。
走ったまま、今度は剣を左に構え右へと斬る。
コボルトはそれをバックステップでかわした。
俺の攻撃はまだ続く。
避けられるのは想定内、そこから突きを繰り出す。
……かすったが倒せなかった。どういう反射神経をしているんだよ。
俺の攻撃が止むと、コボルトが棍棒をジャンプしながら振りかざしてきた。
攻撃が見え見えだったので楽にかわす。
そして、着地したコボルトを斬り倒した。
「…………」
援護に向かわなくては!
思考を切り替えゴブリンに目を向ける。
1体はすでにいなかった。2体目と戦っている。
ロダはゴブリンの攻撃をすべて盾で防ぎ、隙を見て攻撃を入れている。
うまいな。
そう思いながらゴブリンに駆ける。
嬉しいことにゴブリンは後ろを向いており、俺のことに気づいてない。
「うりゃ!」
後ろから思いっきり斬り込むとゴブリンは消えていった。
「ふぅ、ありがと」
ロダからのお礼の言葉を貰う。
「いえいえ」
「アイテム落としたぞ」
フェルが言う。
そこには棍棒が落ちていた。
「……いらない」
コルがそう言う。俺もそう思う。
「帰ってから換金して分けましょう」
「そうだな」
ロダは、地図を見て道を教える。
「こっちですね」
俺たちは歩き出す。
歩いて行くと、また分かれ道があった。
「ここは左です」
「左に敵なーし」
「行きましょう」
角を曲がった。
「後ろに敵!!」
コルが叫ぶ。
「なに!?」
フェルが言うと同時に、ロダが地図を捨てコルの前に出た。
ゴブリンが1体こっちに向かってきていた。
ゴブリンは足が速くはないので戦闘になる前に隊列を立て直せた。
ゴブリンの攻撃をロダが受け止め俺とフェルで攻撃する。
「――――ブリザード」
ゴブリンの足が凍る。
「あっ!? 上!!」
後ろでまた声が上がった。
上からコボルトが降りてきた。ゴブリンの後ろにいたのだろう。ゴブリンより小さいため姿が見えていなかった。
俺たちの後ろに着地したコボルトは、コルに向かって走っていく。
「――」
コルは下がりながら詠唱しているが、コボルトとの距離が1メートルを切っている。間に合いそうもない。
俺とロダも走るが間に合わない。
「うぉりゃー!」
俺の後ろでフェルの声がしたと思ったら横を槍が通り過ぎる。
フェルが槍を投げたのだろう。飛んできた槍はコボルトの足に命中し、コボルトは倒れる。
「――アイスアロー!」
詠唱が終わりコボルトを倒した。
フェルは違う槍をボックスから出しており、ゴブリンを倒していた。
「悪いな、反対側を確認しないで」
フェルは一番に謝ってきた。できる男だ。
「いえ、僕も確認していなかったですし……。妹を助けてもらいましたから」
「ありがとう……」
「仲間だし当たり前だろ」
フェルさん、かっこいいっス。
フェルは槍を投げるとき後ろからゴブリンに攻撃されたらしく、コルの治療魔法を受けている。
「ありがと、もう大丈夫だ」
「うん」
腕を回し、大丈夫アピールをしている。
「3層までもう少しです。頑張りましょう」
ロダは地図を拾いながら言う。
みんな返事をしてさらに進む。
3層入り口前にリザードマンがいた。
俺たちと見合っている。
「3層に行くための門番なのか?」
リザードマンは動く気配がない。
「そんなのいるとは聞いていませんね」
「俺もないぞ」
「最近このダンジョン攻略者がいなかったらしいから、アイテム蓄えてるんじゃないか?」
「それを守るための門番を置いたのですか?」
「あれ? 魔物って知性ないんじゃないの?」
「少しはあるんですよ。そうじゃないと攻撃よけたりできないじゃないですか」
「そうそう。コウは何も知らんな」
フェルが笑う。前に敵がいるのに緊張感がないな。
「ダンジョン初めてなんだからしょうがないじゃん!」
「まぁ、そんなことよりあいつをどうするかだな」
流された……。フェルさん、言っといてそれはないですよ。
「俺が倒したのは斧じゃなかったからな……」
「じゃあ、あのリザードマンはどうして斧を持っているんだ?」
「え?」
「ん? 変なこと言った?」
「言ったぞコウ。魔物は武器を拾ったり自分で作ったりするんだよ」
そうなのか……。
そうか! 地球で言う動物と同じみたいな感じか。本能でわかっているということだな。
「悪い、理解した」
「勘違いしてたんですか」
ロダが笑うとつられてコルとフェルも笑う。
「勘違いは誰にでもあるだろ」
本当は勘違いじゃないんですがね。
「そうですね。すいません」
「いいよーいいよー」
ふてくされてみる。
みんな強張っていたのがなくなったみたいだ。
「ここまで来れたんです。行きますか!」
「いつでもいいぜ」
「作戦はいつも通り。コルが後衛、僕たちが前衛です。相手の攻撃はなるべく僕が受けます」
「了解」
「では、もうばれていることですし、行きましょう」
「おっしゃー」
3人で突撃した。
一番前をロダが走る。
リザードマンはその場から動かない。
フェルが攻撃範囲に入り、ロダの後ろから槍を突くが簡単にかわされる。
リザードマンが避けた方向に俺は走っており、小振りで斬りかかる。
ガチン!
斧で防がれた。
そこに、ロダとフェルが攻撃を加える。
「――――ブリザード!」
コルがリザードマンの動きを封じる。
「グルル」
リザードマンは唸りをあげる。
「今だ!」
さらに攻撃を加えると、リザードマンは消えていった。
「あっけないな」
「4人だからですよ」
「1人のときはもっと時間かかったぞ」
「休憩欲しい。魔力回復したい」
と、コルが言うので休憩することにした。
リザードマンが最初にいたあたりに腰を下ろす。
「人数いると楽だなー」
「そうですよ。フェルドこれからも一緒に依頼をやりませんか?」
「んー。考えておく」
「そうですか……」
ロダは即決してくれなくて少し悲しそうだった。
コルはさっきから小さい青く丸いものを食べていた。気になったので聞いてみる。
「コルは何食べてるの?」
「これは魔法の実。魔力を少し回復できるの」
「へぇー」
そんなものまであったのか。
「その実は結構値が張るんですよ。ダンジョンで取り戻せると思ったので、今回は買ってきたんです」
魔法使いも魔力管理が大変だな。魔力が切れたらパーティにも迷惑がかかるし、いろいろ考えなくてはいけなそうだ。
10分ほど休憩して進むことにした。
「3層目はボスが出る部屋とそこまで行く細い通路だけですが、気をつけていきましょう。ボス部屋前でもう一度作戦会議です」
ロダの説明を聞き、3層に降りて行く。
通路は狭かった。人が2人並んでぎりぎり通れるくらいだ。
隊列を変え、一列で前からロダ、フェル、コル、俺の順になった。
「前方にコボルト1体! フェルド頼んだ」
「まかせろ!」
会話は聞こえるがコボルトは俺からは見えない。
コルも詠唱していざとなったら助られる準備をしている。
……俺はやることがないので後方の安全確認。
「倒したぞ!」
「進みましょう」
2人で倒せたようだった。前が進むので俺もついて行く。
「ここがボス部屋か……」
ロダが立ち止りつぶやく。
入口は扉はなく、細い通路を抜けると直でボスがいる部屋となっていた。
「作戦会議を始めます」
その場で話し合いをする。
「まず、コルが魔法で攻撃して気を引きます。僕がコルの前を守りますので2人は左右に別れて攻撃をするというのはどうでしょう?」
「初めての相手だしな、なにが起こるかわからないから臨機応変に動くしかないぞ」
「フェルドの言う通りです。最初の攻撃が終わった後は各自で判断してください」
「わかった」
俺は体が震えていた。
これが武者震いなのか? ゲームなどでは散々やっていたダンジョン攻略。それも今はボス戦前だ。緊張と楽しみが入り混じっている。
「ボス戦です。気を引き締めて行きましょう」
ロダの言葉を最後にボス部屋に入っていった。
入ると広々とした部屋の真ん中ぐらいに魔物がいた。あいつがオークなのだろう。
ゴブリンの3、4倍はあるのではないか? 緑色の体に、その図体に合っているでかい木の棍棒を持っていた。
「作戦開始!!」
俺は左、フェルは右に別れて走り出す。
「――――アイスランス!!」
アイスアローより大きく長い氷ができ、オークに向かって飛んでいく。
だが、オークはアイスランスを左手で受け止めた。
「!?」
左手を貫通してはいるが、致命傷にはなっていない。
すごい力だな。
オークはロダとコルの方へ歩き出した。
コルは魔法を詠唱しては放っている。
俺は左からオークの後ろに回り、斬りかかる。
ダメージはあるみたいだが歩きを止めない。
フェルもオークの左足を攻撃している。
いくらか攻撃しているとオークがいきなり立ち止った。
「2人とも離れて!」
ロダが叫ぶ。
「ぐおぁ!?」
オークは棍棒を下方に構え、その場で1回転した。
思いっきり吹き飛ばされる。
剣で防ごうとしたがパワーが違いすぎた。
フェルも同様に飛ばされていた。
壁まで飛ばされなかったのは助かったな。壁に激突していたら追加ダメージだ。
体勢を立て直していると、ロダが前に出て攻撃を始めていた。
「――――アイスランス!!」
オークのど真ん中に命中した。
今だ!
オークがひるんでいる隙に攻撃を入れる。
「うぉ!」
オークがまた1回転をするのをジャンプで避ける……はずだった。
ジャンプした瞬間、棍棒の向きが変わり俺に向かってくる。
こいつちゃんと見て回っていたのか!
棍棒を剣で受ける。真正面で受けるのではなく斜めにして流すように。
……なんとか剣で軌道を変えることに成功した。
「くそっ」
しかし、俺の力不足だ。棍棒を弾くと同時に剣を弾き飛ばされた。
オークが左手をグーにして振り下ろしてくる。
「コウ!」
フェルはオークから少し離れていた。
「――槍術、雷光槍!!」
フェルの槍が光を帯び、一瞬にしてオークに一撃を与えた。
ドスンという音が鳴り響く。
オークはよろめき膝を着いた。
俺はその隙にオークの懐に入る。右手を腰に回し、オークの顔面を殴るように右手を放つ。
オークの顔に横一線の切り傷をつけた。
「避けて!!」
後ろからコルのアイスランスが飛んできた。
「うぉっ!」
伏せてなんとかかわす。
アイスランスはオークに突き刺さり、オークは消滅した。
「……やったー!!」
ロダが一番に喜んだ。
コルはその場にへたり込んでいた。俺とフェルは横になっている。
俺は体を起こし周りを見る。
アイテムが9個落ちていた。その中の1つ。俺の剣を拾いに行く。
剣を拾い刃を見るが、ひびは入っていないみたいだ。
そして、フェルのところに向かう。
「また助けられた。ありがとう」
「いいってことよ」
フェルは体勢を直し、座る。
「あの技凄いな」
「だろ! 自分で編み出したんだぜ。魔力と体力を使うから連発は無理だけどな」
魔力を使うのですと! 俺じゃあ真似できないということか。
「俺も自分の決め技欲しいな」
ジャンさんから教わった技もいくつかあるが、俺にも使えた。あれは魔力を使っていないのかな?
「コウならできるさ。それより、最後にオークを攻撃したのは何だ?」
「ああ、これだよ」
腰に装備していた短剣を見せる。
「隠し装備か。やるな」
「2人ともー、アイテム集めてきましたよ」
8個のアイテムを持ってロダとコルが来た。
「欲しいアイテムあります?」
そう言い見せてくるが、俺には何が何なのかわからない。
「特にないかな」
取り敢えず答える。
「俺もだ」
「そうですよね。生産アイテムしかないですもんね。生産者のコネがあれば、欲しいという人もいると思うんですけどね」
話し合いの結果、アイテムは換金してみんなで分け合うこととなった。
1人で8個持つのはボックスを圧迫するかもしれないから、1人2個のアイテムを持つことに。
「ご飯食べて帰りましょうか」
「ご飯?」
「そうです。疲れてお腹も空きましたので。帰りは集中力が低下するらしいですよ」
ゲームみたいに、ボス部屋の先に入口に戻る仕掛けはないみたいだ。
「帰りがあったかー。もう、くたくただー」
「だからこそ、お弁当を食べて気力回復ですよ」
「腹が減っては戦はできぬってやつだね」
ボスを倒したら、1日そのダンジョンから魔物は湧かなくなる。その時がお宝さがしチャンスだそうだ。今回はダンジョン攻略がメインだからやらないがな。
ボスを倒すと消滅するダンジョンもあるらしいぞ。
「では、十分な休息もとりましたし、帰りましょうか」
俺たちはボス部屋を後にした。
「ダンジョンの雰囲気が少し明るくなっている気が……」
「これは、今ボスは倒されてますってわかるようになっているみたいだぞ」
「ボスが復活したら、来たときみたいな感じに戻ると思いますよ」
みんな変な感じはしないみたいだ。そのうち慣れるか。
帰りは4回の戦闘をしたが、どれも余裕だった。
「出れたー」
「まだ暗くはありませんね」
「朝早くに出たからな」
「町に帰るまで気を抜かずに行きましょう」
「おう」
俺たちは帰るため、森へと入っていった。
バトルシーンは結構楽しく書けました。が、やっぱり文章書くのは難しいです。