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006

 

 俺は今、ご飯も食べ終わり、皿洗いをノナンさんとしている。

 双子はお風呂だ。


「2人とも可愛いねえ」


「そうですね」


 食事を終えたころには疲れがちょっとなくなっている気がした。癒されたのかな。


「それにしても、コウ君は彼女たちの扱いが上手だね」


「まあ、1年間一緒に暮らしていましたからね。それに、俺には妹が1人いるんですよ」


 もう会えないが。


「だからですよ」


「そうだったのか。コウ君の意外な情報だね」


「おかげで、あの2人とは仲良くできているわけなんですけどね」


 妹がいなかったら接し方がまずわからなかっただろう。俺が高校、妹が中学に入ってから口もきいていなかったが、妹の小学校時代は仲良かったんだよ。


「そういえば、今日の混雑は大変だったでしょ」


 ノナンさんは、妹について聞いてこなかった。興味がなかったのか、ジャンさんあたりに遠くから来ていてると聞いて、思い出させないように気を使ってくれたのだろうか。

 ノナンさんのことだから後者な気がする。別に気にしていないのだが、聞かれてないので、そのことは何も言わない。いきなり話し出したら、変人のかまってちゃんになってしまう可能性もあるからな。


「そうなんですよ! なんなんですかあれは!!」


「あれはもうこの町の名物にもなりつつあるからねぇ」


 この町をあまり知らないランクの低い冒険者は銀貨1枚に心を奪われ、俺みたいな状況になるらしい。


「ベギーさんが店にいるときはあんな感じじゃないんですか?」


「あいつのときはコウ君の初日のよりもう少し少ないくらいかな。それでも大変そうだよ」


「あれは大変ですよ……」


「お風呂あがったよー」


「兄さんお先です」


「あとは私がやっておくよ」


「ありがとうございます。風呂行ってきまーす」


 風呂に向かった。


「……わたし手伝います」


「わたしもー」


 と後ろの方から声がする。



「ふぅー」


 今日もいい湯だな。

 明日はお金が入るしどうするかな。

 ……あれ? あの子たち、今日泊まるのか?

 今更だが気づいた。

 そういえば、朝またねとか言ってたよな。このことだったのか。

 帰った直後にカレンの攻撃を食らったせいで、なんでいるかという疑問すら忘れ去っていたぞ。


「上がったら聞いてみるか……」



「さっぱりしましたー」


 リビングに行くと3人が話していた。


「何してるんです?」


「コウ君の変人ぶりを聞いていたんだ」


「俺、変人ですか!?」


 まじか! この世界の常識はまだ知らないことがあると思うが、変人までいってしまうほどのことをやらかしていたか!?


「……うそよ。ぷふっ、あーっはっはっはっ」


 コウ君の反応面白いと笑われる。

 冗談だったのか。

 大笑いしているノナンさんを無視して2人に聞く。


「さっき思ったんだけど、2人とも今日泊まるんだね?」


「!! 聞かないから、知ってるのかと思ってたよ。忘れてたのか。あっはっはっは」


 ……笑い上戸なんだなきっと。


「そうだよ。明日も泊まるよ」


「明後日帰るの」


「そうなのか」


「うん! 明日は沢山遊んでもらうからね」


「わかったよ」


「ふぅ、今日はもう寝ようか」


 笑い終わったノナンさんは、目尻に涙を浮かべながらそう言った。


「おやすみー」


 各自寝るために自室に行く。

 部屋に入りベッドに横になる。


「でだ、なんでついてきてるんだ?」


「どこで寝ればいいかわからなくって。へへっ」


「……カレンについてきたの」


 俺の部屋まで2人はついてきていたのだった。

 どうしたものか。ノナンさんに相談だ。


 トントン


「どうしたの?」


「この2人どこで寝ればいいですか?」


「一緒に上がっていったから、てっきり3人で寝るのかと思ったよ」


「ベッドに3人は危ないですよ。落ちちゃいます」


「そうだねぇ……。よし、1人私と寝て、1人はコウ君とでいいかな?」


「はーい」


「わかりました」


「じゃあ、ハンナちゃん一緒に寝ようか。2人ともおやすみー」


 いきなり引っ張られ驚いた様子のハンナは、ノナンさんに連れ去られ部屋に入っていった。


「……寝ようか」


「うん!」


 カレンと一緒に寝ました。

 もちろん何もないですよ。しいて言うなら2人だと暑くなって寝苦しいくらいです。



 ----



 朝、俺が起きるとカレンはもういなかった。


「相変わらず起きるの早いな」


 下に降りていく。


「あ、コウ兄ちゃんおはよう」


「おはよう。2人は?」


「まだ寝てるんじゃないかな」


 カレンはキッチンでガサガサやっていた。


「何やってるの?」


「ご飯作ってるんだよ。どう?」


 火を使っていない分昨日よりはまともな料理だ。

 パンに野菜が挟まっているだけだが。


「みんなの分も作ったんだよ」


 ちょっと不恰好だが、丁寧に作られている感じがした。


「じゃあ食べよっか」


「お姉ちゃんとハンナを待たないの?」


「ノナンさんいつも朝起きてこないからな……。ハンナも夜ノナンさんとお話してて、夜更かししちゃったかもしれないだろ。起こすのも悪いしな」


「そっか」


「……おはよう、ございます」


 カレンが納得したら、いつも以上に眠そうなハンナが、目を擦りながら起きてきた。


「おはよう。寝るの遅かっただろ? まだ寝ててもいいんだよ?」


「大丈夫です。お姉ちゃんはまだ寝てますが」


 お姉ちゃんですと! 私ですら兄さんなのに。一体昨日何をしたんだ? 俺もお兄ちゃんと呼んでも良いのですよ!


「そうか、ならご飯食べようか」


 考えを表に出さずにそう言った。


 いただきますとご飯を食べはしめる。

 サンドイッチは味が薄かった。タレ的なものを何も入れていないのだろう。野菜本来の味を生かしたお料理だ。

 ハンナはモソモソとそれを食べていたし、俺もそれに続いた。


「さて、どこか行きたいところはあるのかな?」


 食べ終わったので聞いてみる。


「……町を見て回りたい」


「カレンもそれでいい?」


「うん」


「おっけー。ちょっと寄りたいところあるからそこに行ってから町探検をしよう」


 3人で家を出た。ノナンさんはまだ就寝中のようだった。



 お店、ベギに向かう。


「こんにちはー」


「おお! 兄ちゃん。凄い売れ行きだったじゃないか。結構余ると思っていたんだがな」


「……ありがとうございます」


 売れ残ると思っていたのかよ。

 日本は接客サービスが良い国らしいからな。それを見て育ってきたんだ、アルバイトはしたことないが、見様見真似でもできる。

 ……それが売り上げに繋がっているかはわからんが。


「これがプラス報酬の1割分だ。色をつけさせてもらったぜ。予想以上の儲かりだったからな」


「ありがとうございます!!」


 じゃらっと音がする袋を受け取る。


「報酬はギルドで受け取ってくれ。あと、これ受付に渡しといてくれないか?」


「わかりました」


 お礼を言いベギを後にした。


「お兄ちゃん何貰ったの?」


「昨日の報酬だよ。探検はギルド寄ってからでもいい?」


「うん!」


 報酬を確認して、俺たちはギルドに向かう。

 報酬は銀貨1枚と銅貨50枚もありましたよ。

 たまにつまずいていたりして、危なっかしいハンナの手をカレンが握り、誘導してあげている。まだ眠いのか。


「おう、にいちゃん。お疲れだったな」


 ギルドに入るといきなり話しかけられた。

 おじさん声でかいんだよな。カレンたちがびっくりしている。


「ほんとですよ!」


「ははは」


 楽しみやがったな、このやろう。


「ところで後ろの2人はどうしたんだ?」


「妹たちですよ。今日は報酬貰って遊び行くんです」


 俺はベギーさんから預かったものを渡した。


「そうか。これが報酬だ。疲れを飛ばして来いよー」


 銀貨1枚を受け取る。


「あっ! ちょっと待ち」


「なんですか?」


「最近、この辺りで特異種がよく現れているらしいから気をつけろよ」


「特異種?」


「ああ。特別変異を起こした魔物たちのことさ。特異個体の総称を特異種と言うんだが、どっちでも意味は伝わるから好きに言うといい。でだ、こいつらはどうやって生まれるかわからないが普通の魔物よりでかくなっていて、知性も持っていたりするんだ。もちろん魔物ランクも上がる。昨日西のダンジョンに向かっていたやつらが帰ってきてな、森にゴブリンの特異個体がいたから倒そうとして、ゴブリンの群れに悪戦苦闘し、疲れたから一旦帰ってきたそうだ。もちろん特異種は倒してきてるぞ」


 特異種単体だったら余裕だが、知性があるからか、仲間を統率したりして厄介なんだそうだ。


「……わかった、気をつける」


「まぁ、特異種は稀にレアアイテムを落とすからそれ目当ての人もいるんだがな」


 おじさんはそう言うとまた笑う。


「きゃっ!」


「あっごめん。大丈夫?」


 その時、小さな悲鳴と謝る声。

 カレンに誰かがぶつかったみたいだ。


「あいつも期待のルーキーなんだぜ」


 カレンにぶつかった男を指さし、おじさんはそう言った。

 その男は、自分の身長くらいの棒らしきものを布で包み背負っていた。

 青っぽい髪色で俺と同じくらいの背の高さだ。

 彼はカレンに謝ると、おじさんの方にやってきた。もちろん俺もいる。

 俺にお辞儀をしてきた。俺もお辞儀を返す。

 彼はそのままおじさんと話し始めた。


 俺はカレンたちのところに行きギルドを出る。


「大丈夫だったか?」


「大丈夫。あのお兄さん優しかったよ」


「ならよかった」


 お金も入ったし、少しなら何かを買ってあげられるな。


「どこ行くか?」


 アミューズメントパークなんてないだろうしな。遊ぶ場所なんてあるのだろうか。


「本屋に行きたい」


 ハンナが提案した。

 目がしっかり開いているな。眠気は覚めたのだろう。

 カレンも異論はないようなので本屋に向かうことになりました。


「では、レッツゴー」


「ごー」


「……ごー」


 ハンナまでのってくれるとは。



 ――本屋に着きました。

 こじんまりとした感じだが、本は沢山ある。

 ハンナは目を輝かせて店に入っていった。

 俺たちも続く。

 おばあちゃんがこの店をやっているみたいだ。


「何かいい本あったか?」


「まだわかんない。兄さんあれ取って」


 俺が手を上げないと届かない。ハンナの背じゃ無理だな。

 おばあさんでも届かない気がするんだが……他にも従業員がいるのだろうか。

 魔法とは? という題名の本をハンナに渡す。

 ハンナはパラパラとページをめくるが、面白くなかったのか、戻してください。とおっしゃっている。

 カレンは狭い店をふらふらと周り、童話や面白話が書いてある本を手に取ったりしていた。


「久しぶりに俺も何か読もうかな」


 町に来てからは何も読んでないしな。

 読んだら技を覚えられる本とかないのかな? 


「おっ?」


 ドラゴンの生態という本があった。

 やっぱりドラゴンとかいるんだな。龍人族がドラゴンかと思っていたが違うらしい。

 本がボロボロだったが読めないほどではないので買うことにした。


「コウ兄さん……これ欲しい」


 ハンナは遠慮がちに本を持ってきた。


「おう」


 小難しそうな本を持ってきたな。


「カレンは何かあるか?」


「わたしはいらないよ。だから、他の所で買って!」


「わかったよ」


 おばあさんに本を持っていく。


「お願いします」


「あい、2冊で銀貨1枚だよ」


 お金を渡す。


「まいどあり~」


「兄さんありがとう」


「気にするな」


 文字教えてもらったしな。

 さて、次はどこ行くか。


「あっ!」


 カレンが走って行ってしまった。


「走るなー。迷子になるぞ」


 カレンは雑貨屋に入っていった。


「お兄ちゃんこれ欲しい」


 見せてきたのは、毛を刈り取るとき使う道具だった。


「私が使っているの調子悪いんだよね」


 昔からずっと同じのを使っていたため、年2回しか使わないのだが、一度も新しいのに変えたことがなくぼろぼろだそうだ。


「高くないよな……」


「たぶん大丈夫?」


 店の人に持っていく。


「これいくらですか?」


「えー、銀貨1枚になりますね」


 ……少し高いが、まぁいいだろう。


「下さい」


「ありがとうございます」


 毛刈り機を買い、店を出る。


「お兄ちゃんありがとう!」


 嬉しそうに言ってくれるな。俺も買って良かったと思えてくる。


「さてさて、次はどこ行く?」


 雑貨屋を後にしてから適当にぶらつくこととなった。

 ちょっとしたお菓子を買ったり、裏道を散策したりなどだ。

 この町は治安が良く、裏道にガラの悪そうな人たちが溜まっていたりはしなかった。



 夕方になり家に帰る。


「「「ただいまー」」」


「おかえりー」


 ノナンさんはごはんの準備中だった。


「私も手伝う!」


 カレンはそう言うが、ノナンさんに断られている。

 代わりに、お風呂を頼まれてハンナと一緒に行ってしまった。

 俺はというと、テーブルを拭いたり、皿を並べたりしていた。


 2人がお風呂を焚き終わる頃ご飯もちょうどできた。


「ご飯食べてから入ろうか」


 ノナンさんはそう言う。

 反対は誰もいなかったのでそうなりました。


「2人は明日帰っちゃうから、腕によりをかけたよ」


「わーい」


「ありがとです……」


「では、食べましょう。 いただきます」


「「「いただきます!」」」


 料理はいつもより美味しく、2人とも無口になりぱくぱくと食べていた。


 食べ終わって、カレンとハンナはお風呂に向かった。

 俺とノナンさんはお片付け。


「今日のご飯、いつもより美味しかったですよ」


「良い食材使ったからね」


 食材の味を生かしていて、しかし、それだけではないような美味しさを感じた。


「毎日でも食べれますよ」


「お金かかるから毎日は無理よ。作れたとしても月1回かな」


 などとお話をしながら片付けを終えて、椅子でのんびりすることに。


 2人がお風呂から出てきたら、ノナンさん、俺という順に入り寝ることに。

 今日はハンナと一緒に寝ることに。

 ベッドに入り、お話している最中にハンナは寝てしまった。

 遊びまわって疲れていたのかな。

 俺もハンナが寝てすぐ眠りについた。



 ----



 起きると目の前にかわいい寝顔が……。

 ぎゅっと抱きしめたくなる衝動を抑え、髪をなでる。

 堪能した後、ベッドから出ようとする。


「ん……」


「あら」


 ハンナに服を握られていたらしく、起こしてしまった。


「ごめん、まだ寝ててもいいよ?」


「……んーん。起きる」


 一緒にリビングへ。


「おはよう」


「おはよー」


「あれ、ノナンさん早いですね。珍しい」


「カレンちゃんに起こされてね……ねむい……」


 そう言ってはいるが、今日で帰ってしまうから見送りをしようと起きてきたのだろうと俺は思った。

 朝ご飯を食べ、家でお話をしているといつの間にかにお昼近くなっていた。


「そろそろ時間だよ」


 ノナンさんが告げると、寂しそうにしながら帰り支度を始めた。


 2人はノナンさんにお別れを言い、家を出る。

 ノナンさんも寂しそうだった。

 俺はジャンさんのところまで見送るつもりだ。


 たわいもないことを話しながら、馬車小屋まで行く。


「コウ、久しぶりだな」


「久しぶりです」


「期待のルーキーなんて呼ばれているそうじゃないか」


 笑いながらジャンさんは言う。


「ジャンさんに剣術を教えてもらったおかげですよ」


 俺も笑う。


 しばらく4人で話していたが、お昼の鐘が鳴るとジャンさんはミリアが寂しがるから帰らないと、言い馬車を動かし始めた。


「おにーちゃーん、ばいばーい」


「兄さん、またね」


「2人とも楽しかったよ。ありがとねー」


 手を振りながらお別れを言う。

 俺は、馬車が遠くに行くまで見続けていた。


「……今日から静かになるな」


 食材を買い、家に帰ることにした。




今更かもですが、読みにくかったり、わかりにくかったりしたところがあれば気軽に教えてください。直したいと思います。


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