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037

「コウさんが動かなくなる夢を見て……それで、そうなる前に言えなかったことを後悔したんです」


 俺に抱きついて来てからシュリカが言った言葉が頭の中を巡っていた。

 ……俺の事がす、好き……? そんなバカな。生まれてこの方モテた事がないんだぞ。きっと勘違いだな。……いや、まだ俺は夢の中にいるんだな、うん。何か頭がくらくらしてるし、体が熱いし。そうだよ! 抱きついているシュリカからふんわりといい香りがしてくるし、こんな夢みたいな事――


「もう大事な人を亡くしたくないんですっ。だから言っちゃいました……迷惑ですよね……」


 俺の後ろに回されているシュリカの手に力が入ったのを感じだ。気づかれないように俺はそっと自分の太ももをつねってみる。

 ……痛いな。

 ということはだ、これは夢じゃないのか。痛みを感じる前に大抵は夢から覚めるもんな。


「えっ、と……その……な。考えてもいいかな? い、今はまだ頭がしっかりと働いてないし……」


「……うん。私が伝えたかっただけだから……」


「……ありがとう」


 俺はシュリカの背中に手を回し、優しくシュリカの頭もなでた。

 ………………なっ、は、恥ずかしいぞ!?

 ここでリーゼと目線が合ったのだ。

 やばい、今までの見られていたのか!? そりゃそうだよな、俺が起きた時リーゼが一番に挨拶をしてきてくれたのだから。

 リーゼは驚きと悲しみのような混ざったような表情をしている。


「あっ」


 話しかけようとしたが何を喋っていいかわからずにいると、リーゼが足早に部屋から出て行ってしまった。

 …………。

 俺はシュリカが落ち着くまで、彼女の事を抱きしめ返すのだった。



「あ……あの、突然ごめんなさい」


 もじもじとしながらシュリカは言う。


「いや、いいよ。怖い夢を見ると現実でもそうなっているかもって思う時あるもんね」


「でもっ、こ、コウさんの事が好きなのは本当ですから! お返事いつでもいいから待っていてもいい……?」


 ……シュリカさんその聞き方は反則やしませんか。


「……うん。俺が完全復活したときに答えるよ」


「は、はいっ。待ってます!」


 顔を赤くしたまま嬉しそうな表情で返事をしたシュリカは、「ご、ご飯の準備手伝ってきますね」と言って部屋から出て行った。


「ごはん!?」


 シュリカが放った言葉で1人を目覚めさせて。


「お、おはようコウちゃん……何でそんな顔赤いの?」


「ふぇ!? あ、赤いかな?」


「うん」


「……そうか、ま、また熱が上がったのかな? あははは」


 そう言って俺は布団に横になった。


「早く治ってよね、まったく~」 


 ルナは俺に自分が使っていた掛け布団を乗せてくる。その気づかいは嬉しいけど、重くなるのでご勘弁を……。

 俺の気持ちなど露知らず。ルナは俺に布団を掛け終えると、「ご飯ー」と言いながら部屋から出て行くのだった。



「…………1人だと寂しいな……」


 ルナがいなくなって数分後、そんな事を思っていると開けっ放しのドアの向こうからひょこっと顔を出してくる小さな女の子がいた。


「えーっと、……お、は、よ、う?」


「ん? おはよう」


 確か……。


「ソイリちゃんだっけ?」


「! うんっ」


 名前を憶えていたからか、ソイリちゃんは笑顔で近づいてきた。


「病気だいじょーぶ? あっ、えーっと……人族語でなんて言うんだろう……?」


 人族語? ん? どういう意味だ?


「えーっと、なんの事?」


「……あれ! お兄ちゃん言葉わかるの!?」


「え? えー……うん。わかるよ」


 こ、これはバカにされているのか!? いや、でもこんな小さい子がするはずないよな……何かあるんだ。理由を見つけなくては。


「お兄ちゃんすごーい。パパとお姉ちゃんと同じで2つの言葉が話せるんだね!」


 そう言いながら、俺の隣に座った。

 ……パパとお姉ちゃん同じ? 2つの言葉? なんだ? 何なんだ? 断片的なキーワードだけじゃわからん! もっと情報をっ。


「そ、そうなのかな?」


「そうだよっ、人族の言葉と獣人の言葉がわかるんだもん」


「人族と獣人の言葉……?」


「うん? どうしたのお兄ちゃん」


 ……ソイリちゃんが話しているのは獣人の言葉というわけか? それを理解して会話できていることに驚いていたのかっ!


「いや、何でもないよ」


 そうかそうか、なるほどな。これも翻訳効果なのか。ありがとう……神様!


「そういえば、そろそろご飯の時間じゃないの?」


 シュリカも手伝いに行くって言ってたし、ルナも、「ご飯ー」とか言いながら部屋を出て行ってたのでそう思ったのだ。いや、ルナの場合はシュリカの……。

 そう考えて顔が火照る。


「うんっ。そうだよ!」


 元気に返された。

 俺は一旦頭の中を空にしてから話し出す。


「もう食べてきたの?」


「ううん」


 首を振るソイリちゃん。


「……誰かが呼びに来るんじゃないか?」


「みんな降りてきたから、お兄ちゃんが1人になっちゃうと思って来たの……だめだった?」


「そそ、そんなことないよっ。嬉しいに決まってるじゃん」


 そんな、あからさまにしょんぼりした顔で言わないで。嬉しいに決まっている。それに、俺がそんな顔に勝てるわけがないんだから。


「ありがとね」


 俺は手を伸ばし、彼女の頭をポンポンとなでた。


「えへへぇ」


 垂れて犬耳に触れたが、ルナの耳とは違った感触だ。触り心地が良いのは変わりないけどね。


「あっ、いたソイリちゃん」


「お姉ちゃん!」


「おールナ、おかえり」


 ん? お姉ちゃん? ルナの事なのか! そういえばルナはリーゼとも話せているし人族の言葉と獣人の言葉両方喋れたのか!? 流石だ……どんな旅をしていたか余計に気になって来るぞ。まぁ聞いても答えてくれそうにないから聞かないけどな。


「いきなりいなくなったらご飯が始まらないんだからね。ねぇコウちゃん」


「お、おう」


「ごめんなさぃ」


「ソイリちゃんは俺が寂しいと思って来てくれたんだ。あんま怒んないでやってくれ」


「怒ってはないよ。お腹が空いてるだけだよっ」


「……そうですか」


「じゃあ行こう」


 ルナが差し出した手にソイリちゃんは掴まるり立ち上がった。


「うんっ。またねお兄ちゃん」


「うん、またね」


 言葉使いは同じだが、立ち振る舞いがいつもと何か感じが違うルナを見て、お姉ちゃんをやっているんだなぁとしみじみ思う。

 ……それにしてもお兄ちゃんかぁ。そう呼ばれたのはいつ以来だろう。にいちゃん、とかはよく言われるが、小さい子から言われるとカレンとハンナを思い出すなぁ。2人とも元気にしてるのかな?

 違う大陸にもういるし、数年は会えないだろうな。と考えながら俺は目をつぶった。



 ----



 10日後の12月28日 朝


「もう大丈夫じゃろ」


「本当ですか!」


 体のチェックをされた俺は、お医者さんからの言葉を聞き嬉しくなった。


「フォフォフォ、退屈だったじゃろ。もう大丈夫じゃ」


「ありがとうございます!」


 ほんとここ2日間くらいは暇で暇でしょうがなかった。

 自分ではもう熱っぽさはないのがわかっていたが、10日間は動くな、悪化するかもしれないと脅されていたから何もできなかったのだ。

 これで次の町に行けるというわけか……あっ!


「ち、治療費はいくらでしょうか……?」


 考えていなかったがお金の問題があったのだ。医者という仕事だ。取るものを取らないと自分がやっていけなくなるもんな。


「フォフォフォ、お金はすでに貰っておるから大丈夫じゃ。どうしてもと言うならガヴリに払うんじゃのぉ」


 フォフォフォ、と医者のおじいさんは部屋から出て行ってしまった。

 今この場にガヴリさんはいないし、後でいくら払えばいいか聞いておこう。


「コウ様、良かったですね!」


「うん……良かったっ」


「あ、ありがとな2人とも、面倒見てもらっちゃって」


「ううん。大丈夫。気にしないで」


「そうですよ。気にしないでください。そろそろ朝ご飯なので下に行きましょう」


「そうだな」


 ひと伸びしてから、俺は布団から出た。

 取り敢えずその場に布団を畳んで、リーゼとシュリカと部屋から出る。

 部屋から出たのはトイレに行くとき以外は初めてだった。なのでリビングに入ったことがない。トイレは一階の階段近くにあったからな。


「お、おはようございます」


 リビングに入ると、まだ数回しか見たことがない女性の姿があった。

 ガヴリさんの奥さんだよな……そういえば名前聞いてないや。

 見てわかる通り奥さんは妊婦さんで、ガヴリさんが階段の上り降りをあまりしない方が良いと言っているらしいので、俺との接触が全然なかったのだ。


「おはよう。もう大丈夫なのね、よかったわ」


「は、はい。ご迷惑おかけしました」


「いいのよ。なんか家族が増えた感じで楽しかったから」


「あっ、私手伝います!」


「わ、私も」


 リーゼとシュリカが奥さんの方に向かっていく。


「あらあら、ありがとね」


 ……娘が2人出来たという感じだろうか? ルナもいるから3人か……ってあれ? ルナはどこだ? 今日は姿を見てないな、ソイリちゃんもいないし。ガヴリさんは大人だし事情があるのだろうけど……。


「コウさん、悪いんだけど外にいるソイリたちを呼んで来てもらえないかしら」


 そんな事を考えていると奥さんから2人の居場所を特定する言葉をかけられた。


「了解です!」


 そうか、外にいたのか。

 突っ立っていた俺は踵を返し玄関へと向かった。


「ううぅ、寒い。今日は一段と寒いんじゃないか? それとも俺がずっと布団で寝ていたからそう感じるのか?」


 独り言を言いながら俺は玄関のドアを開けた。


「…………なっ!?」


 外は白かった。


「わーわー」


「きゃっきゃっ」


 ルナとソイリちゃんの声が――。


「わっはっはっは」


「――大の大人が1人混じってる!?」


「ああ、コウさん。おはよう」


 お医者さんから聞いていたのか、何事もなかったようにガヴリさんは話しかけてくれた。


「お、おはようございます」


「昨日から雪が降っててね。もう積もるとは思わなかったよ」


「あー、コウちゃんもう大丈夫なのー?」


「おう、心配かけたな」


「お兄ちゃーんっ」


 ソイリちゃんは手をブンブンと振ってくれたので、俺も振り返した。


「いやー、若いのには勝てないね。手袋していても手が冷たくなるよ」


 ガヴリさんは俺の傍まで来て、玄関の段差に腰を下ろす。


「ははは、びっくりしましたよ」


「ん? 何がだい?」


 ……あの2人と同じテンションで遊んでいたことに、何て言えないな……。


「あっいえ、なんでも。それよりわざわざ助けていただいてありがとうございました。俺が倒れたばっかりに……」


「それは前にも言ったじゃないか、困った時はお互いさまだって」


「でも、改めて言おうと思いまして」


「ははっ、まぁ良い心がけだね。僕にはいらないけどね」


 笑いながらガヴリさんは続ける。


「これからどうするんだい。僕が助言するなら冬を終えるまでうちにいた方が良いと思うんだけどね」


 寒くなるとは聞いていたけど、雪までは考えていなかった。これだと次の町に行くのも大変そうだし……。


「でもご迷惑では……」


「そんなことはない」


 即答だった。


「僕もエディタもソイリも、コウさんたちの事を迷惑だなんて思っていないよ」


「そう……ですか。お言葉に甘えてしまいますよ?」


「もちろん、気にする事はない。息子と娘が増えた気がして僕も嬉しいからね」


 じゃあ僕はそろそろ戻ろうかな。と言ってガヴリさんは家の中に入っていった。

 それにしても雪が見れるなんてなぁ。あっち(日本)では俺が住んでいる所は滅多に降らなかったし、降ったとしても積もるなんて珍しかったから新鮮だ。


「……うわっぷ!」


 つめたっ!?


「あはははー、コウちゃん当たったぁ!」


「ははははっ」


 どうやらルナが俺に雪玉を投げてきたらしい。それが顔面に直撃したのだった。


「よ、よくもやったなー、仕返しじゃい!」


 雪をすくって両手で握り、丸くしてからルナの方に投げた。


「わーっ」


 ルナに軽々とかわされてしまったが気にせずにしゃがみ、雪をすくって今度は軽めにソイリちゃんの方へと投げる。


「甘いよお兄ちゃん! えいっ」


「うおっ」


 ボスっと体にソイリちゃんが投げた雪玉があたる。もちろん俺が投げたのはよけられましたよ……。


「……うぉーっ!」


 俺は雪玉を作るのをやめて、直接ルナとソイリちゃんに襲いかかろうとした。


「コウ様……何をやっているんですか?」


「へっ? うぁっ!?」


 が、後ろから名前を呼ばれたので、振り向こうとしたら足を滑らせ、ドスンと雪の上に尻餅をついてしまった。


「いてて……」


「コウ様、エディタ様に呼んで来てくださいと言われていたのに、どうして一緒になって遊んでるんですか!」


 リーゼはここ最近、俺が目を覚ましてから、なぜか当たりが強い気がするのだが……なぜだ? 俺が何かやったか? ……やっぱり病気をしたのが原因なのかもしれないな。俺が病気を起こしたのは自分のせいとか思って俺の行動を見て制限していたり……。

 ってそんなわけないよな。気にし過ぎかな。


「ご、ごめんな、雪見たらテンション上がっちゃって」


「雪が珍しいのはわかりますが時間はまだあるのですから、朝ご飯を食べてから遊びましょうよ」


「はい、ごもっともです……」


 正論をは吐れたら何も言えないですよ。それに俺もガヴリさんの事を言えないな……でも、俺はまだ大の大人という歳までいってないしセーフか?


「それで、わ、私もよろしければぃっ…………」


 リーゼの声がだんだん小さくなっていき、最終的には聞き取れなかった。


「うん? ごめん、もう1回言ってほしい」


「あ……な、何でもないですっ、早く行きましょう。ルナ様、ソイリ様ご飯ですよ!」


「「はーいっ」」


 俺がリーゼと話していたからか、雪玉を大きくしていた2人は小走りで俺たちの方に来た。


「お先にー」


「おさきに~」


 ソイリちゃんはルナの真似をしながら、2人一緒に未だ尻餅をついている俺と隣に立っているリーゼの横を抜けて家に入っていく。


「コウ様も」


「ありがとう」


 リーゼに差し出された手を掴み、俺たちも家の中に入った。



「すみません、呼んで来いと言われていたのに」


「いえいえ、コウさんも雪は珍しい?」


 エディタさんにそう聞かれ俺は素直に、はい。と答えた。


「ふふ、良かったら食べ終わってからソイリと遊んでやってはくれないかしら? ガヴリも用事があるし、わたしも激しい運動は控えてるから」


 そう言いながらエディタさんは自分のお腹を擦っている。


「はい、もちろんです」


「あたしも遊ぶよっ」


「あそぶ~」


 ソイリちゃんも便乗して声を上げていた。


「ふふ、ありがとねコウさん、ルナちゃんも。2人も雪は初めてと言っていたわよね、一緒に遊んであげてくれないかしら」


 リーゼとシュリカを見ながらエディタさんは言う。


「でも、家の手伝いを……」


「気にしないでいいわよ、運動はしないけど少しは動かないとね」


 シュリカの申し出を、ウィンクをしながらエディタさんは断っていた。



 朝ご飯を食べ終わった後、俺とルナとリーゼとシュリカとソイリちゃんは再び外の白くなった世界に戻っていた。ガヴリさんは外には一緒に出たが、出掛けると言ってどこかに歩いて行った。

 俺たち5人で時間も忘れて雪合戦や、雪ダルマを作って遊んでいた。この世界にも雪だるまと言う言葉があり、人は同じ遊びを思いつくものなんだなぁと思ったりもしていた。

 ひとしきり遊んだ俺は少し休憩と、朝ガヴリさんが座っていた玄関の段差部分に腰を下ろす。

 ……もう少し雪が積もっていれば、かまくらも作れたのになぁ。かまくらを作ったことがないので一度は作ってみたいのだが残念。


「コウ様」


 今は雲が少ない空を仰ぎ見ながら考えていたら、声をかけられたので前を見る。リーゼが俺の所に向かって来ていた。


「どうした?」


 他の3人はさっき作った雪だるまの近くに小さい雪だるまを作ったりしているのが見える。


「私も少し休憩しようかと思いまして」


「そうか。手袋を借りているとはいえずっと雪に触っていると冷たいもんな」


「そうですよね」


 リーゼは手袋を取り、はぁー。と白くなった息をかけ自分の手を温めている。

 手袋などの防寒具は外に行く前エディタさんが貸してくれたのだ。この村では、物資が流通している町まで行くのも雪が積もるため厳しい事があるので、防寒具は何があってもいいように予備も複数準備しているらしい。それを貸してくれたのだ。


「……コウ様、聞きたい事があるのですがよろしいですか」


「うん? ……なに?」


 俺の顔をチラチラと見ながらリーゼは遠慮がちに口を開いた。


「あ、あのですね。コウ様は、獣人語もわかってらっしゃるのですか……?」


「……なんだそんなことか」


 リーゼが言いにくそうに言うものだから重大なことを聞かれるかと思って身構えてしまったぞ、シュリカの告白の事とか……。


「そんなこと……なんですか? 私、聞いて違っていたらコウ様の機嫌を損ねてしまうと思いなかなか聞けなかったんですよ! でも本当の事も気になりますし……コウ様がもしおわかりになるのなら簡単な言葉を教えていただきたいと思って!」


「ははは、そんなことだよ。違っていたってそんなことで機嫌を悪くしたりはしないよ。前から言ってるでしょ、俺は知らないことが多いから教えてほしいって。なのにリーゼが知りたい事を聞いて、わからなくて機嫌を悪くするなんて最悪な奴じゃないか」


「でも、私奴隷ですし……」


「前にも言ったかもしれないが、俺になんて遠慮する事ないんだぞ?」


「は、はい。……ありがとうございます」


「で、さっきの答えだが、言葉話わかるが教えることは出来ない。だな」


「え?」


 聞き返されるのも無理はない。言葉は理解はできるが、それが獣人語と言うのが俺にはわからないのだもの。みんな同じ言語、日本語にしか聞こえないのだから。

 ……どう説明すればいいんだろう。


「えーっとだな。…………俺はちょっと特殊な体質なんだ」


「特殊……ですか」


「そう。あまり公言しないでほしいのだけど、俺は昔から言葉が全部同じに聞こえるんだよ」


 はっ! 見える! 見えるぞ!! リーゼの頭の上にクエッションマークが出ているのがっ!


「そうだな……動物の言葉はわからないが、人の言葉ならどんな言語を喋られても俺には理解出来る。そして、俺が喋る言葉もなぜか相手が理解出来るって感じかな」


「す、凄いです! でもそれって……」


 リーゼは口ごもり、硬い表情で考え込むような動作をしている。


「な、なに? 何を言おうとしたの!? 気になるじゃん」


「あ、あのコウ様。それって呪いの一種かもしれませんよ」


 呪い? 今リーゼはそう言った?


「そ、そんなんもあるのか――」


 ――この世界には。

 心の中で言葉をつけたした。


「はい。呪いには先天的なものと後天的なものがあります。後天的なものはほとんど天災の影響なんです。稀に莫大な魔力を持った魔物が呪いを覚える事もありますが。先天的なものは遺伝のせいと言われています。本人は呪いの影響を受けていなくてもご先祖様が呪いを受けたことがあるのならその家系は呪いを持った子を産む可能性があるみたいなのです」


 これは神様から貰った能力(チカラ)だし、呪いではないと思うのだが……。


「でも、これがもし呪いだとしても良い能力じゃないか!」


「?…………あっ! 呪いは特殊な能力を持っている人の事を指すんですよ。その能力が良くても悪くて――きゃ!?」


「うぶっ!?」


「あははは、あたりー。いつまで休んでるの! 遊ぼうよ!!」


 リーゼが話している途中に、ルナが投げてきたらしい雪玉は俺の顔面とリーゼの体に直撃したのだ。


「またかっ、てかなぜ俺だけ顔面なんだ!?」


 シュリカとソイリちゃんは笑っているし。

 ……呪いでも良い力もあるみたいだし神様から貰ったんだから大丈夫だろうな。


「うっしゃぁ」


 俺は気にするのをやめて立ち上がり、滑らないように走り出す。

 ――さぁ雪合戦の始まりだ!


閲覧ありがとうございます!

なんと、私が暇な時間を使ってゲームをやっていたせいでストックが消え去りピンチです!

次の更新は遅くなるかも知れんません。すみませんm(__)m

見捨てないでくれると嬉しいです……。

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