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033

 9月4日

 あれから何事もなく、特に依頼をこなすこともなく、武器を引き取りに行ったりと、まったりしていた俺は、今、またもや宿の手伝いをしていた。

 外は夕日が射す時間帯。晩ご飯を食べようとやって来るお客に食事を運んでいる。今回は、前に手伝ったときよりは楽だった。なんせ俺の他に2人も手伝ってくれる人がいるのだから。


「おねーちゃーん、水くれー」


「はーい」


「こっちに、ご飯3人前ー」


「わ、わかりました」


 という声が聞こえてくる。

 ……というか、俺が行くと客の顔が少し悪くなるんだよな……。

 今や、リーゼとシュリカは看板娘的な位置になってしまっている。俺はもっぱらキッチンの手伝いだ。そしてルナはというと、あいつは逃げやがったんですよ。まぁ強制的にやらすのも嫌だし、別にいいんだけどね。

 ミレーナさんは宿の受付をやっているので、キッチンは俺とマクシさんで料理、盛り付けをしている。


「去年より混んでいる気がするなぁ」


 のんきな声でマクシさんは言っていた。


「そうなんですか」


「うん、あの2人のおかげだよ。毎年手伝ってくれないかな」


「それは無理です。今月中に俺らはこの街出ちゃいますもの」


「それは朝に聞いたけどさぁ……そうだ、この時期だけ帰って来るというのは?」


「……無理ですよ」


「だよねー」


 無駄話をしながらも手はしっかりと動かし、注文された分の料理は作られていた。俺は料理スキルがあまりないので盛り付けしかやっていないけどね。



 日が完全に落ちてからも食堂のにぎやかさは消えていなかった。というよりにぎやかさは増していると言った方が良いかもしれない。


『163年9月4日 21時01分51秒』


 ……もうこんな時間か……。

 休憩をもらったりしながらも、まだ俺たちは働いていたのだ。オークションの打ち上げとかとかで、酒を飲んでいる人が大半だ。


「コウ! 今日はもう大丈夫だ、手伝いありがとう」


「了解、あの2人にも言っときます」


「おー、お願い」


 おやすみ。と言い、マクシさんと別れた俺は、酔っ払いに絡まれながらも接客をしていたリーゼとシュリカに今日の手伝いは終了と伝える。


「お、ねーちゃん、終わったって? じゃあ一緒に飲もうぜ」


「いいねぇ」


「華があるってもんだなぁ」


「あたしゃいるじゃないの!」


「おお、怖い。こっちのねーちゃんの方がよっぽど可愛いだろうよ!」


「なんだとぉ!」


「ま、まぁまぁ、お客さん喧嘩はよして」


 俺は何もできず傍観していると、危ない雰囲気に気づいたのかマクシさんが慣れた様子でなだめていた。

 今絡まれていたシュリカはというと、俺の後ろに隠れて背中の裾をぎゅっと持っているのがわかる。

 ……なにこれ……可愛いんだけど……。


「こうしゃまぁ~」


 続いて呂律が周りきっていない声が聞こえた。シュリカとは打って変わって、リーゼはこの短時間ですでに出来上がってしまったようだ。

 お酒は15歳からというのが、この世界のルールだから別に良いと言えば良いのだが……いつの間に飲んだのだ? さしずめ断り切れなくて飲んでしまったのだろうが、リーゼは酒に弱いということを覚えておかないとな。


「もぉ~、コウさまぁ? きいてまふかぁ~?」


「いっ!?」


 横からドンっ、と体当たりを食らう。リーゼが跳びついて来ていたのだった。

 リーゼの呼び声を無視したのがいけなかったのか、俺の首に腕を回してくる。


「ちょ、リーゼ!? ち、近い、というか酒臭い!!」


「ふぇ~? わ、わたひくさいれすかぁ~……、ひっ、くさい……こうさまにくしゃいって……」


「ちょ、ちょっと!!」


 何で涙声に変わるんですか!?


「ふ、2人とも行くぞ!」


 片腕で腰辺りを持ちリーゼを持ち上げ、シュリカと共に二階の自室へと戻った。

 戻る途中で、「泣かせてんじゃねーぞー」「ヒューヒュー」「まだこっちいろよー」「がははは」などという声が聞こえたが知らんぷりである。



「こうひゃまぁ~」


 部屋に戻って俺はリーゼを離したというのに、リーゼは一向に離れようとしなかった。


「わかった、わかったから。一旦離れような、な」


「い~や~で~すぅ」


「シュリカっ、ルナも、リーゼを離してくれ」


  俺たちが部屋に戻った時には、すでにベッドで寝ていたルナも呼んで、足元がおぼつかないリーゼをベッドに横たわらせる。


「うぅ~、こうひぁまぁ……」


「おうッ!?」


 リーゼそばから離れようとしたが、その前に腕を掴まれてしまう。油断していたせいで重心がブレ、リーゼの寝ているベッドに上半身が乗る。


「ぬぉ!? 2人ともヘルプ!」


「ふぁ~、もう眠たいからムリー、シュリカちゃんも気にせず寝ちゃいな。おやすみ~」


「えっ、あれ大丈夫なの?」


「問題ないよ。明日もお手伝いあるんでしょ? 早く寝なきゃ」


「う、うん。……おやすみなさい」


「ちょっ、薄情者おぉぉ。り、リーゼはもう寝たのか!? や、やへぇ~……」


 何かが擦れる音がする。ルナとシュリカがベッドに入りやがったのか? ルナめ、起こしたから機嫌が悪くなったのか。シュリカだけだったら助けてくれたかも知れないのに……。

 別にリーゼが嫌いというわけではない。むしろ好きだよ。……でもね、お酒臭いのは嫌だよ……。俺が酒飲んだことないから苦手意識があるのかも知れないが、このにおいは慣れない。


「……うにゅ~」


 へっ?

 な、寝てるんじゃないんですか、リーゼさぁぁぁん!!

 寝相なのか、ガシッと首回りをガッチリとホールドされ身動きが取れなくなる。いつの間に腕から手を離していたんだ。……この状態で寝ろということですか? 膝立ちで上半身ベッドの上状態で? ……つらいな……うん、リーゼがいけないんだからな。

 俺は膝立ちの下半身を上手くベッドの上に乗せることにした。リーゼと同じベッドになってしまうが、この腕を外せないんだもの。何なのこの固い絞め技は、絞められてはいないからロック技? ……まぁいい。

 体を寝かせることに成功した俺はリーゼに抱き枕にされながら眠りについた。気づけば酒のにおいも気にならなくなっていたのだった。



 ----



「ふぁ」


 浮遊感で目が覚める。


「いっったぁぁ!?」


 そして顔面に激痛が走った。


「す、すみませんコウ様っ」


 俺は顔を押さえながら辺りを見た。

 横にベッドの脚が見え反対には壁が見える。上からはリーゼの声が聞こえた気がした。

 ……そうか、落ちたんだなぁ。

 まだ働いていない脳を回転させ、結果を導き出した俺はリーゼがいるであろう場所に目をやった。


「同じベッドで寝てたのはリーゼが俺を離さなかったからだからな」


「あ、あの、昨日私失礼な事をしてしまったんですか……?」


「……もしかして覚えてないの?」


「は、はぃ、昨日お客様に断り切れずお酒を頂いたところまでは覚えているのですが……起きたらコウ様の顔がまじかにあって、驚いてしまい突き飛ばしてしまいました、すみませんっ」


 しょんぼりとしながらも頭を下げてくる。


「……覚えていないのならしょうがないな。気をつけなよ」


「は、はぃ」



 今日は宿の手伝いはリーゼとシュリカに任せて、俺はルナと一緒にゴードンさんの店に向かうことにした。もう5日だし、ウェルシリアから帰って来ているだろうと思い、リーゼ購入時の契約がどうなったのかを知るために向かうのだ。

 1回行ったことあるが、もちろん俺は道がわからない。ぼんやりとした方向はわかるが、さて合っていることやら……。


「コウちゃん、そっちじゃないよ」


 ……違ったようだ。

 道案内はルナに任せることにして、俺は道を覚えようと辺りを見回しながらついて行った。



「到着!」


「おおっ、流石ルナだ」


 街の外壁が近いこの場所……確かに覚えがあるぞ! 目的地の近くは覚えているのに、なぜそこまでのルートがいつもわからないのだろうか……、って今はそんなこと考えてる場合じゃないな。

 頭を左右に振り、方向音痴の事を頭の中から弾き飛ばして奴隷のお店に入った。


「いらっいしゃいませぇ~」


 一度来ているが、やはりなんかイメージとは違うお店なんだよな。店の中は暗い感じはせず、何本ものロウソクが店内を照らしている。清潔感もあり、とても奴隷の販売を行っているようには見えないのだ。そして、この受付の人。さわやかな笑顔だがガタイが良い。たちの悪い客が来ても力で何とかされそうな感じである。


「今、ゴードンさんいますか?」


(かしら)ですか? 昨日帰って来たばかりですよ。何の御用ですか?」


「あ、えと、コウが来たと言ってもらえたらわかると思うんですが……」


 この人、目力強いぞ。得体の知れない圧力を感じるんだが……。


「あっ、コウ様でしたか! 聞いております。この前はお買い上げありがとうございます。すぐ呼んできますので」


 ……なにこの変わり身。一瞬で目力が消えたと思うと口調まで柔らかくなったぞ。

 受付の男は呼びに行ったらすぐに戻って来て、前と同じ応接室に俺とルナは通された。


「久しぶりだな、コウにルナ。嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」


「お久しぶりです。今日は別行動してるんですよ。そろそろこの街を出ようと思っていまして」


「そうなのか。また買ってもらおうと思っていたのに残念だ。……そうだ! 今からでも見ていくか? また新入りが入ったんだけどよ」


「や、やめときます。これ以上は今はいいです」


「今は、ねぇ」


 あっ! 心の本音ってやつなのか? 欲しいなんて考えていなかったのに、今は、とつけてしまったのは。


「がはは。まぁ、冗談はこれくらいにして、契約の事だよな」


「は、はい」


「率直に言うぞ、結果はな……」


 俺はゴクッと唾を飲み込む。


「…………大儲けだ! ありがとうコウ!!」


「そ、そうでしたか」


 ゴードンさんがタメるせいで、気づけば息を止めていたらしい。ふぅぅ、と大きく息を吐きだしながら俺は喋っていた。


「だからこの契約は終了だ。これは契約金と予想以上の儲けが出たからプラス5枚のおまけで15枚の返金だ」


 袋に入った金貨を俺の前に置いて言うゴードンさんに俺は驚いた。


「えっ!? 利益は全部差し上げるという約束ですよ?」


「良いんだよ。おかげで運搬の副業をしなくても、当分の商品たちの食費やら何やらの資金ができたんだ。また、どこかの奴隷商を訪れるときにでも役立ててくれ」


「……そうですか。それはないかも知れませんが、ありがたく頂きます」


「おう」


「それじゃあ、俺はこの辺で。お忙しいときに失礼しました」


「気にするな。またどこかでな」


「はい。ルナ行くぞ」


「ふにゃ! ちょっと待って」


 応接室に通されてから、出されていたお茶菓子と思われる食べ物を無言で食べていたルナを引っ張って奴隷商を後にした。



「どこか行きたいところあるか?」


「とふにないひょ」


「……特にないのね」


 店を出てから、やる事も、行きたい所もないのでルナにも聞いてみたが、俺と同じだった。


「ふんっ」


「口に入ってるものを食べ終えてから話そうな」


「うむうむ…………んっ。コウちゃんから話しかけてきたんじゃん!」


「そうだけどさぁ」


 いつまで食べているんだって話ですよ。ちゃっかりお茶菓子を持ってきていたとはね。


「行きたい所がないなら宿に戻ろうか」


「そうだね」


「そうだ、今回は俺が先頭を行く! 間違っていても言わないでくれ」


 来るときに周りを見て歩いていたんだ。短時間で忘れはしないし、方向音痴を少しでも治したいからな。


「りょーかーいー」



 ----



 結果はわかっていたのだ! そうだ! 俺にもできるのだ、しっかりと道を見て移動すればな。あっはっはっは、あーっはっはっはっ……はぁ。


「コウちゃんでもちゃんと戻ってこれたね。おめでとう!」


「嫌味にしか聞こえないのですが……」


 そう、俺はあれから来た道を戻っていったのだ。戻っていると思っていたのだ。知らない道に出ても合っていると思っていたのだ、知らない道ではない、ここは来るとき通った。そう思いたかったのだ。しかし、現実か厳しかった。1時間は歩いただろう。この時間があれば宿まで着いたはずなのに、未だ住宅地らしき場所をさまよい、更に1時間後にやっと大通りに出ることができたのだ。

 出た大通りからはなぜかギルドが見えた。気のせいだと思っても見えたのだ。大通りに出たらさすがの俺でも道はわかるので良かったのだが、2時間近くも大通りに出られない俺の方向感覚は素晴らしいものだな。


「…………はぁ、これからはルナが地図担当な」


「おっけー」


 行きと帰りで道は同じでも風景が違うっていうのは酷いものだな。


「もしかして、俺は最初から間違った方向を歩いていたのか?」


「最初は合ってたけど、次の曲がる道を間違えてたよ」


「……そうだったのか」


 落胆しながらとぼとぼと歩く。ゴードンさんの店を出てから約2時間30分後に俺は宿に帰り着くことができた。


「お帰りなさいませ、コウ様」


 今はお客がいないようで、リーゼが宿の入口にいた。


「おう、お疲れリーゼっ……何だそれは?」


「どうですか、変じゃないですよね?」


 その場でくるっと1回転をしたリーゼ。その時、スカートが軽く舞う。


「可愛いよ、リーゼちゃん!」


「ルナ様、ありがとうございます。ミレーナ様が貸してくださったんですよ」


 黒を基調とした半袖、膝上のワンピースみたいな服に白のエプロンをつけ、エプロンにはフリルまでついている。これってメイド服じゃ……。


「ドレスと違って動きやすいのに可愛い服ですよね」


「えっ、ああうん。似合っているんじゃないか?」


「本当ですか! ありがとうございます。シュリカ様も着ているんですよ」


 リーゼが向いた方を向くと、こっちを見ていたシュリカが顔を赤くしているのがわかった。


「ほんとだー」


 真っ先に駆け出したルナは、シュリカの傍まで行くと何かを話している。その言葉は上手く聞き取れなかったが、気にせず俺もリーゼと一緒に2人の近くまで行った。


「あ、あわわわ」


「何をそんなに恥ずかしがっているの。午前中はそれで接客したじゃない」


 笑いながらキッチンから出て来たミレーナさんはシュリカに言うが、シュリカは耳まで赤くしていた。

 シュリカってこんなキャラだったのか。もっとツンツンしていると思っていたが、数日の間一緒に暮らしている中で、俺の中でシュリカのイメージが変わっていっている。


「で、でも、コウさんたちに見られるのは恥ずかしいというか……」


 シュリカもリーゼと全く同じ服を着ているのに、なにを恥じらっているのだろうか。


「シュリカも似合ってるよ」


「あ……はぅぅ」


「流石コウちゃん!」


「何がだ?」


「ふふふっ、ひみつ~」


 ルナによくわからない事を言われるが、気にしなくていいか。いつもの事だし。


「なに面白そうな事やってるんだ。もう1着あるからコウも着るかい?」


 キッチンから今度はマクシさんが出て来て、俺にそう言ってきたのだった。


「いや、遠慮します。こんな服、どうして持っているんです?」


「従業員の制服みたいなもんだよ。昔泊まったお客にいらないからって貰ったんだが、僕たちは着ないからね。アルバイトの人に着たいならどうぞという感じでしまってあるんだよ」


「へー……」


 もしかしてこれを作ったのは、前にこの世界に連れて来られた人なのかも。という考えが頭によぎるが、その人には会えないだろうな。マクシさんも昔って言っちゃってるし。会ったところでどうすればいいかも良くわかんないし、気にしない方向で行こう。


「やっぱり着たくなった?」


「そんなことないですよ!」


 そうだ、マクシさんに聞きたい事があったんだ。


「あーっと、マクシさん、今暇ですか?」


「うん? 一応暇だね。お客もいないし」


 ちょっと聞きたい事があるので聞いてください。と近くの席を指しながらマクシさんを誘導する。


「じゃあ僕からも1つ」


 席に座ると先にマクシさんからの質問を投げかけられるのだった。


「何で最近敬語に戻っているの? 別に僕としてはどちらでもいいんだけどね。気になって」


「ん? そうですか……そうみたいですね。無意識です」


 俺が、ははは、と笑うと、「そうかそうか」とマクシさんも笑っていた。

 ほんと無意識だ。今の今まで気づいてもいなかったんだからな。多分敬語の方が話しやすかったんだろう。


「話しやすいんですよ、きっとこっちの方が。という事で次は俺の質問です。ここから中央の都市に行くにはどういうルートが良いかな?」


「……そうか、やっぱりもうすぐ行っちゃうのか」


「はい」


「わかった。コウはいいとして、リーゼさんとシュリカさんをこのお店に置いて行かないか?」


「いやいや、そうしたら途中で俺が魔物に殺されますよ」


「ルナがいるじゃないか。あの2人のおかげで儲けさせてもらっているんだよ。だからさ、お願い」


「そんなこと言われても……」


 そう言い2人の方をちらっと見る。

 俺たちの話は聞こえていないらしく、服の話で盛り上がっているようだ。

 あの2人が、自らここに残りたいと言ってきたら俺にはどうしようもできないが……。


「……聞いてみたらいいじゃないですか。2人に」


「いいのかい! ……あはは、冗談半分で言ったのに、コウは真面目だなぁ。そこが良い所なんだろうね、気にする事ないよ、聞かないからさ。それに聞いてもコウについて行くだろうしな」


 うん? マクシさんはどうしてわかるのだろうか。聞かなきゃ本音はわかんないだろうに。


「わかる事もあるんだよ、今のコウみたいにね」


「え!!? ……顔に出ていましたか」


「はは、自覚はあるみたいだね」


「……たまにですが。それで、俺の質問いいですか?」


「おお、そうだった。変な話ししてごめんな。中央都市に行く方法だったな、ちょっと長くなるけど良いか?」


「はい」



 ----



 マクシさんに聞いた話だと、ここ西のウェース大陸と中央のミーア大陸の間には、境目になっている大きな山があるそうだ。この山、というか山脈があったからこそ、そこが境目になったというわけらしいのだが。

 行き方は3つ。山脈を登るか、北の方から迂回するか、南の方から迂回するかだ。山脈にはどこにもトンネルはないという。魔法でパッと造ろうと思えば造れるのではとも思ったが、変なことは口にしなかったので謎のままだ。

 山脈を登って行く方法は、当然途中に村や町などはないから食料が尽きたら終わりだ。現地調達もできるが、俺はそれを調理できるスキルは持っていない。そもそも、魔物は倒したら粒子になってしまうじゃないか。魔物と野生動物はどう違うのだ? 野生動物は倒しても消えないのだろうか? う~む……、後でルナに聞いてみよう。まぁ、そういうわけで、遭難するのも嫌だからこの案は却下だ。

 あとは北か南からの迂回だが、このヴィンデルの街は西の大陸の中央よりも北に位置するらしい。ということは、行き方は決まったも同然だ。


「俺たちは中央のファンセントという名の都市に向かって北から迂回して行くことになりました。道はマクシさんに後で詳しく教えてもらえるからルナさん、お願いします」


「は~い」


「話し合いの結果10日まで宿のお手伝いをする事になったので、11日に最後の準備をして12日に出発します」


「はいっ」


「うん」


 俺たちは今日の手伝いを終え、部屋で取り敢えずは俺が考えた予定を発表していた。


「リーゼとシュリカには悪いけど、手伝いお願いな」


 俺がいたってもう役には立たないし。


「いえ、ミレーナ様もマクシ様も凄い優しいので大丈夫です!」


「……うん」


「そうか、良い人だもんなあの2人は」


「うんっ、あたしにご飯大盛りにしてくれるもん」


「ルナは食い意地が張ってんなぁ」


 ささやかな笑い声が響き、それから各自のベッドに潜り込んだ。

 ……出発まであと8日か。お金も結構あるし依頼はやらなくてもいいかな。


いつも閲覧ありがとうございます!

今まで奇数日投稿をしていたのに、前回間違えて偶数日に投稿してしまいました……ちょっとショック。

でも、もう過ぎたことは気にせずこれからも大体6日に1回更新して行きます! よろしくお願いします!!






……ガサゴソ

ウラスタ「あんなこと言ってるが、あいつ結構ショックがってたんだぞ。これもウチを出してくれなかったからだな、ふふっ。……良かったらこれからも生暖かい目で読んでやってくれ」


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