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031

「ありがとう。それでは、また」


 そう言い残し、ハセルの両親は墓場から出て行った。


「…………こ、ここからはうちの方が近いと思うから、良かったら来ませんか?」


 シュリカが一番に口を開く。声が上ずっていたが誰もそんなことは指摘せず、そうしようと話がまとまる。


 シュリカについて歩き、シュリカ宅にお邪魔した。

 リビングに通される。

 リーゼは勝手知ったるようにキッチンへ行き、カチャカチャと物音をたてている。


「あっ、ありがとう」


「いえ」


 リーゼがトレイにコップを3つ乗っけて来ていた。


「あれ? 1つ足りなくない?」


 ルナがそう言うと、「私はいらないので」とリーゼは言う。

 本人がいらないというなら良いか……。


「よし、話を聞こうじゃないか」


 そう言って、ふと思った。俺が言うんじゃなくて、シュリカから言いだすのを待った方が良かったのではないかと。


「は、はい……あの、ですね……」


 しかし、シュリカは話し始めてくれた。これはこれで良かったのかも知れない。


「私……、考えたんです。私もパーティメンバーにしてもらえませんか!」


 その言葉にルナは顔をほころばせ、リーゼはうんうんと頷いていた。仲間が増えるのは嬉しい事だからな。でも、俺は少し気難しそうな顔をする。


「入るのはいいが、この街から出てしまうけどいいのか? いつ帰って来れるかもわからないし、……運が悪ければ帰って来られないかも知れないぞ」


 最後の事はないようにしたいが、どうなるかはわからないもんな。


「はい。前に約束していたんです、いつか、いつの日か3人でこの街を出ようと。2人は出られなくなってしまったけど、その分私が見て聞いたことを、私がハセルとスティナの所に行ったとき話したいと思ったんです」


「そうか、……シュリカ、これからもよろしくな」


 俺も顔をほころばせながらそう言った。


「ほら、言ったじゃないですか! コウ様は反対しないとっ」


 リーゼは前に相談をされていたのだろう。興奮気味に、今にも跳びつきそうに言うリーゼに対して、シュリカは、「うん、そうだね。コウさん、リーゼさんもルナちゃんもこれからよろしくね」と笑顔で笑いかけて来たのだった。


 少しの間シュリカの仲間入りでわいわいと話していたのだが、これからの事も話さなければいけない。ということで俺は質問を投げかける。


「でだ、9月中にはこの街を出ようと考えているんだが、どこか行きたい場所や意見があったら教えてほしい」


「は、はいっ」


「はい、シュリカ君」


 俺が言うや否や、即反応したシュリカだった。


「く、くん……? あ、あの、私、中央の都市に行ってみたいです」


「中央かー……2人もいいか?」


「うん」


「はい」


 2人は迷いもなく返事をする。


「じゃあ決定だな」


「えっ、ええ!?」


「どうした?」


 行きたいといったのにどうして驚くのだろうか?


「こんな簡単に決まっちゃっていいんですか!?」


 ……なるほど、もう少し意見があると思ったのかな。でも、それがなかったんだなぁ。


「うん。俺も行ってみたいとは思っていたし、それに反対も他の意見もなかったからな」


「あ、ありがとうございます」


「お礼を言う事でもないぞ」


 行き方はマクシさんにでも後で聞いてみよう。そう考えながら俺はリーゼが入れてくれたお茶をすすった。



 シュリカは1人暮らしだった、という事実を先程聞いて俺は驚いた。

 まさか1人暮らしをしているなんて考えてもいなかったのだ。込み入った事情がありそうな気がしたから深くは聞かなかったが、きっとシュリカの両親はもうこの世界にはいないのかもしれない。シュリカの表情を見てそんな気がしたのだ。というわけで、リーゼをシュリカの家においてルナと2人で宿までの帰路に着いた。


「そういえば、ギルドで何か手紙みたいの貰ってなかったっけ?」


 無言で帰っていたらポンっと思い出したので聞いてみる。


「うん。貰ったよ」


「読んだ?」


「明日の昼頃ギルド2階に来てほしいって内容だった」


「へー、……知り合い?」


「前に言った知り合いの冒険者の人! この前あたしの事見かけたらしくて、届かないかも知れないけどギルドに送ってみたんだって。会うのは久しぶりなんだよ」


 楽しそうに語るルナに、俺はルナの知り合いってどんな人なのだろうと興味が湧いていた。こっそり後ろをついて行くという手も……ルナにはバレてしまいそうだな。あっ、先にギルドにいて椅子に座っていればいいか。これならバレても休憩中とか言って誤魔化せるし。


「じゃあ明日は自由行動だな」


「うんっ」


「俺もギルド行って依頼でも見てこようかなぁ」


 ルナの知り合いを見るための言い訳をあえてぼやきつつ、宿に帰り着くと、マクシさんの言葉により俺の明日の予定は決まってしまった。


「あっ、お帰り。コウ、明日から仕事頼んでいいか?」


 という言葉によって。



 ----



 良くしてもらっているのだから無下にはできない。という事で、8月28日、朝の7時。俺は今キッチンと食堂を行ったり来たりしていた。この宿のご飯はメニューが無く、いつもその日その日で違う料理なのだが、なぜかお客の数が多い。席全部が埋まっているのだ。


「今日と明日は馬車に乗るって人が多くてね、その人たちのために食堂だけも開いてるんだよ」


 稼ぎ時さ。と、近くにいたミレーナさんが言葉を付け足す。

 28日の朝だと次の日の昼頃に着くだろうし、29日も30の昼頃……ぎりぎり間に合うのか。9月1日はウェルシリアは混みそうだなぁ。行かなくて良かったかもしれない。

 そんな事を考えていた俺に、「はい、お願い!」と出来立ての料理が渡される。


「うっす」


 そう返事をして、俺は食事を運んだり、片付けたりと繰り返していた。



 朝6時に起きたから眠い。我ながら良く起きれたものだ。

 11時に解放された俺は部屋に戻ってベッドに突っ伏した。

 ルナは、俺が忙しく動いているなか、悠々と席でご飯を食べて出て行ってしまっている。

 今からギルドに行こうかとも考えたが、眠さに負けた。……はぁ、疲れた……。



 ----



 その頃ルナは、丁度ギルドに着いた所であった。


「早かったかな?」


 2、3年ぶりに会うからか楽しみにしていたルナは、2階に上がり、もう待っているかもしれない人を探す。

 ギルドの2階も人がごった返していた。宿も凄かったが、ここも同じぐらいの人だろう。

 そんな中、人の間を縫って歩いて行く。


「あっ!!」


 ルナは目的の人物を見つけた。2人掛けの席に座っているその人の方に足を動かす。

 あちらもルナのことに気づいたようで、軽く手を振ってきた。


「ようルナっち、久しぶりだな」


「うんっ、久しぶりだねダンジオ」


 ダンジオと呼ばれた青年。動き易そうなカジュアルな服装に身を包んでいる細顔の男は、明るめの茶色い髪を掻きながら変な顔を浮かべていた。


「ルナっちに本名を覚えてもらっているのは嬉しいが、前と同じように呼んでくれ、なんか変な感じだ」


「そう? じゃあダンちゃん、久しぶり」


「おう。言っといてなんだが今はジオって名で通ってるんだけどよ。前のギルドカードは使えないからな」


「うん? じゃああたしは何て呼べばいいのさ?」


 首を傾げながら聞いてくるルナに、笑いながらダンジオは答えた。


「それはどちらでも構わんぞ」


「じゃあダンちゃんで」


「おう。……っと、久しぶり過ぎて変な話ししちまったな。ルナっちをどうして呼んだかと言うと、まぁ普通に話したかったのもあるが、あいつの事でな」


「……あいつ?」


「ああ、最近多いだろ魔物の異常発生や特異個体が」


「そういえばそんなことコウちゃんに聞いた気もする」


「コウちゃん?」


「うんっ、今一緒にパーティ組んでるの!」


「あっ、あの少年か? それとも女の子?」


「ふにゃ! 何で知ってるの!? 少年の方だよ! 女の子はリーゼちゃんって言うんだよ」


「そうか。、ここにいるということは冒険者になったのはわかったけど、そこまで楽しんでいたとはな」


「えへへ~、ダンちゃんだって楽しんでるんじゃないの?」


「まぁ俺もそれなりにはな。俺の組んでる人たちは今ウェルシリアにいてさ、オークションが終わるまで自由なんだよ。今月の中旬にルナっちが馬車に乗る姿が見えたのを思い出して、こうして会いに来たというわけさ」


 俺はオークションなの興味ないからさ。とダンジオは付け加えた。


「運が良かったね。昨日手紙貰ったんだよ」


「そうだったのか……っていけね、話が逸れたな。えーっと……そう、あいつ、サムナの事だ」


「サムちゃん?」


「そう。サムっちがふらふらせずに1ヶ所にとどまっているから起こる現象なのは知っているよな」


「それはまぁね」


「この事に大陸トップの奴らが気づいたって言う噂を耳にしたんだ、ほんとかはわからんが。だからルナっちもあいつにあったら教えてやってくれ」


「わかった。……会えるかわかんないけどね」


「そこなんだよな。今この大陸にいるのはわかってるんだけどなぁ。あっ、そうそう、この前ヴィっちに会ったぜ。あいつはあいつで流浪の商人やってるって言ってやがったぞ」


「っぷ、あははは、な、なにそれ、面白い! というか似合ってる!!」


「だろ! 俺もそう思った。で、言ってやったらさ、ありがとよだってさ。流石だよな」


「ほんとだよー。あっ、エルちゃんとは会った?」


「いや、それが会ってない。噂も聞かないからなぁ」


「そっかー、臆病だもんねあの子」


「直そうとはしていたじゃないか。俺たちとは普通に接していたし」


「でも、時間かかったじゃん。サムちゃんとだけはすぐに仲良くなってたけどさ」


「……恋ってやつじゃないか?」


「やっぱりそうなのかな。じゃあもしかすると2人で行動しているかもしれないんだね」


「おー、その発想はなかったな。……でもそれだとこんな事態にはならないように注意するだろ。ああ、そうそう、他にも――――」


 この後も2人の会話は弾み、時間はあっという間に過ぎていく。気づいた時には、時間は19時を過ぎていた。


「――――おっ、もうこんな時間か」


「うにゃ? ば、晩ご飯が!」


「ははは、流石ルナっち、大食いは健在か」


「当たり前だよ! ご飯は魔力の元にもなるんだからっ」


「そうだったな。生活魔法しか使わない俺には関係ないんだけどな。そうだ、明日もこの街にまだいるから話さないか? 思い出話も良いけど、あれからのことも聞きたいしさ」


「あたしも知りたい! 明日、同じ時間で良い?」


「おう」


「じゃまた明日ー」


 ルナは椅子からぴょんと降りると、足早に階段を降りていく。

 この時間は依頼わ終わらせたりして飲んでいるパーティもいたが、ギルドにいる人は、2人が会ったお昼のときよりも確実に少なかった。


「……やっぱ変わらねぇなルナっちは。それが良い所なんだけどな」


 ダンジオは楽しそうな表情でルナの後ろ姿を見送っていた。



 ----



「な、なぜだ……」


「ほら、コウさん口じゃなくて手動かして」


 ミレーナさんに注意を受け、俺は止まった手を動かし始めた。

 なぜ昨日より混んでいるのだ! 昨日より早い時間なのに。ルナはまだ寝てるし……もーっ。


 昨日あのままベッドで寝てしまった俺は、起きたときには次の日、29日になっていた。

 晩ご飯食べてなかったせいでか、お腹が空いていた。昨日は1食しか食べていないもんな。今の時間は朝の4時前だ、流石にマクシさんもミレーナさんも起きていないよな……。しかし、お腹な減りは凄まじかった。ぐぅ~と鳴りやまないのだ。

 この時間でもやっている店があるかも知れない。そう思い立った俺はルナを起こさないように部屋から出て一階に降りていった。


「……あれ?」


 キッチンに灯りがともっているのが見える。もしかして誰か起きてるのかな。


「……おはようございます」


「ひゃぁ!?」


 驚かさないように小さい声で話しかけながらキッチンを覗いたのだが、俺の気遣いは意味なかったようだ。キッチンにいたミレーナさんは驚いて数センチ飛び上がっていた。


「な、なんだ、コウさんか。驚いたなぁもう」


「す、すいません」


「こんな朝早くどうしたの?」


「あ、えとですね……お腹が空きまして、どこかやってるも店でも探そうかと」


「そういえば昨日の夜はルナさんしか来なかったからねぇ、聞いたらコウさんは寝てるって言ってたし」


 半笑いでミレーナさんは言うと、「これでも食べな」とお皿に盛った料理を渡してくれた。


「い、良いんですか!」


「もちろん。その代り今日も頼んだよ」


「……ふぁい?」



 そして今に至る。

 何でこの人たちはもっと前にウェルシリアに到着する、という事をしないのだろうか。

 あの朝ご飯で、この働き量は給料不足だ! もっと何かを――


「にいちゃーん、こっちにも飯くれー」


「はーい、ただいま」


 呼ばれた席に座っている人数を見てからキッチンに。


「3人前お願いします」


「はーい、ちょっと待って」


 キッチンにいたのはさっきまでミレーナさんさんだったのに、いつの間にかに代わっていたマクシさんが答えると、手際良くお皿に盛り付けトレイに置かれる。


「取り敢えず1つ持っていって、すぐ2つ分作るから」


「はーい」


 トレイを持って俺はさっきのおじさんの所に向かった。


「お待たせしました。後2つはすぐ持ってきますので」


「おう、ありがとう」


 キッチンに戻るとすでに2つ出来ていた。トレイをさっきの人たちの所に運ぶ。


「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ~」


 ……ふぅ。


「あっ、コウちゃんおはよー」


「ん? おう、ルナか。おはよう」


「あたしもご飯お願い」


「……ルナさんはお手伝いしてくれないのですか?」


「今日も予定あるからさ」


「……そうでしたか。ご飯1つ追加でー!」


「あいよー」


 俺が自棄になりながらも叫ぶと、キッチンから返事が返ってきた。



 ----



「終わった……やっと終わった」


「お疲れ、コウ」


 肩をポンと叩かれて俺は振り向いた。


「ありがとねコウさん。おかげで助かったわ」


「あとは、今行った人たちが返ってくる頃にまた頼むな」


 えっ……。


「嫌そうな顔しても、お願いな」


「本当に嫌だったらアルバイト雇いますので大丈夫ですからね」


「あっ、いや……手伝います……」


「ほんと!? ありがとうコウさん」


 マクシさんだけだったら何とか理由を付けて断ろうと思ったが、ミレーナさんに頼まれたら断り切れない。何かそんな雰囲気をかもし出していた。


「あっ、コウ様!」


 そんな時、聞きなれた声が俺の耳に入り込んでくる。


「リーゼか?」


 声がする方向に体を向けるとリーゼともう1人、シュリカの姿があった。


「おっ、リーゼさんお帰り」


「おかえりなさい」


「た、ただいまです」


 シュリカはそんなやりとりの後、マクシさんとミレーナさんに会釈をした。

 リーゼたちはどうやら俺に話があるらしく来たようだ。シュリカの挨拶が終わってから部屋に行き話しを聞くことになった。ルナはご飯を食べてすぐ出掛けていったのでいない。


「好きな場所座って良いぞ」


「は、はい」


 シュリカは椅子に腰を掛けた。俺も椅子に座る。


「今日、私の家を預けてきました」


「預けた?」


「はい。おばさんに借家なり売るなり好きに使ってくださいと渡してきました」


「……そうか。じゃあこれからは俺たちと一緒に泊まるということでいいのかな?」


「はい」


「では、改めてよろしくねシュリカ」


「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


「リーゼもありがとな」


「はい?」


 リーゼは何の事か分かっていないようだったが、気にせず俺は続ける。


「そうしたらもう1部屋借りた方が良いよな」


 流石に3人とも俺と一緒のベッドは嫌だろう。


「で、でも、お金がかかっちゃいますから大丈夫です」


 慌てた様子でシュリカは言うが、「気にしなくていいよ。ちょっと相談してくるね」と俺は言い、部屋から出た。



「あっ、ミレーナさん!」


 一階に行くと、受付で何かをしているミレーナさんを発見。俺はさっきの子をここに泊まらせたいんだけど流石に4人は多いからもう1部屋借りたいと言うと、「じゃあ4人部屋に移動する?」という返答がきた。


「い、良いんですか!?」


「明日から3日間ぐらいは暇になるしねぇ。移動するなら今がチャンスですよ。……正直に言うと移動してくれた方がオークションから返ってくる人が泊まれる人数が増えるから、わたしとしても嬉しいのだけどね」


「じゃあお願いします! ……料金は……」


「あっ、お金はいらないですよ。その子の……シュリカさんだったわよね?」


「はい」


「シュリカさんの分もいらない。その代りに3日からのお手伝い、お願いね」


 ウインクを飛ばしてきたミレーナさんに、俺は、「は、はい」としか言えなかった。


「これが部屋の鍵ね。場所は二階になるから」


「ありがとうございます。あっ、そうだった、ルナがまだ帰って来てないので、帰って来てから移動しても良いですか?」


「今日中ならいつでもいいわよ。移動したら前の鍵は返してね」


「はーい」



「戻ったぞー」


「お帰りなさいませ」


「お、お帰りです」


 部屋に戻ると声をかけられる。……これってなんか嬉しい事なんだなぁ。

 表情になるべく出さないようにしながら嬉しさに浸る。


「……っと」


 危ない危ない。このまま何も言わなかったら変に思われてしまうじゃないか。


「部屋が変わることになったから」


 とだけ言うと、シュリカから、「わ、私のせいで……」という声が微かに聞こえた。


「シュリカのせいじゃないぞ。2部屋でも良かったのだけどせっかくだから、というミレーナさんの心遣いだ」


 本当は1部屋で済ませたいと言っていたが、そういう心遣いをしてくれたのでは? という勝手な考えのもと俺は言ったのだった。


「り、料金高くなっちゃいましたよね。出します。出させてください!」


 前のめりになって口早に言うシュリカに驚きながらも俺は、お金はいらないよ。と言った。


「で、でも……」


「その代り、今度ここの手伝いをお願い」


「わ、わかりました」


「コウ様! 私も手伝います」


 リーゼは近づいて来るなり言う。そして、俺の耳元で、「シュリカ様、迷惑をかけたくないみたいです」と呟いた。

 ……そうか。一緒にパーティを組むにしても知り合ってまだ数日だもんな。ルナやリーゼが異常に慣れるのが早かったのかも知れないが普通はこうなのだろう。リーゼも最初はよそよそしい所もあったもんな。……ルナにはなかった気がするが……。


「シュリカ、俺たちに敬語はいらないぞ。好きなように話してくれ」


 これさえできれば自然と遠慮は減るだろう。と俺は思っていたりする、もちろん持論だ。


「えっ、でも」


「そうですよ、シュリカ様。私に話すみたいにで構わないのですよ」


「う、うん。……リーゼさんは何でいつも敬語なの?」


「私はコウ様の奴隷ですので」


 それ答えになっていない気が……。


「そうなんだ」


 納得しちゃった!? それでいいのかシュリカさん!!

 そういえばリーゼには友達と話すみたいに喋っているな。……いつの間に、やっぱりお泊りの力なのか。


「えっと……コウさん、よろしく……ね?」


 なぜ疑問形……。まぁいいか。


「うん、よろしくシュリカ」


 3度目のよろしく宣言をしたのであった。

明けましておめでとうございます! 今年も投稿して行きますので、よろしくお願いいたします。

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