015
8月10日 16時頃
「――――はぁはぁ」
「いたぞ! あそこだ!」
「待ちやがれ!!」
この街に逃げて来てから、私を追いかけてくる人が増えた気がする。最初は城の兵士だけだったのに。
昨日の夜、ユリーナに言われたことが信じられなかった。
「売られた? 誰に?」
「ダミア様です」
えっ!?
「どうしてお父様が!?」
「私も詳しくは知らないのですが、この前の財政政策が失敗したらしく、借金ができてしまったようです……」
「そ、そんなことが……」
あるはずはない。そう言いたかった。しかし、絶対ないとは言い切れない。
私はお父様の子ではあるが正妻の子ではないらしい。それを聞いたのは10歳の頃であった。
昔から母親はおらず、私を生んでくれた母親と会ったこともない。そんな私の面倒はユリーナが見てくれていた。
母親のことをユリーナに聞いたことがあるのだが、彼女は何も教えてくれなかった。
私をお城から出すことも滅多になく、出たとしてもユリーナと2人きりで、2人とも、いかにも街に住んでいます。というような恰好をしていた。
お父様は私のことを世間には知られたくなかったんだと思う。
それに、後継ぎとなる人は存在するのだ。
母親は違えど、私には兄が2人いるのだ。兄は2人ともお父様の正妻の子だ。私はあまり会ったことがないから顔が思い出せないけど。
そんな私をこのお城からいなくさせるのと、借金返済が同時に出来るのだ。良い気分かもしれない。
どうせ、私は強制的に売られた。と訴えても権力に物を言い、嘘をでっち上げるに決まっている。
私はお父様にもよく思われていないのだから……。
「お嬢様! 逃げましょう! ロープはあります。窓から降りますよ」
ユリーナはロープをだして窓の近くに縛り、固定している。
「――――――」
「――――」
「――なの――です」
ユリーナが入ってきたためドアが完全に閉まっていなかったようだ。廊下から足音と共に喋り声が聞こえる。何を話しているかまではわからなかった。
「早く! 降りたらまず馬小屋に行ってください。そこでウマを準備してくれている仲間がいます。お嬢様は1人じゃないんですよ!」
最後に言われた言葉が心に響く。
ユリーナにいつも言われている言葉だ。私は1人じゃない。母親のことを聞いた時に言ってくれたのだ。
「お嬢様。私にはお母様は分かりません。でもお嬢様には私がついています。私だけでなく、他の人だってお嬢様を見てくれている人がいるんです」
この言葉にどれだけ救われたのだろうか。言われなかったらどうなっていたか、想像もしたくなかった。
決心をして窓に近づく。
その間も話し声は近くなっている。
「ユリーナはどうするの!」
「私はお嬢様が逃げ出したということにして追わせていただきます。そして、追いつきお嬢様を守ります」
「わかったわ……無茶だけはしないで」
「はい、もちろんです」
優しく微笑んだユリーナに見送られた。
それから、気づかれないように馬小屋に行くとユリーナの部下がいた。その人に逃走の手引きをしてもらいヴィンデルに向かったのだ。
「途中で見つからなければ、こんなに追い回されたりはしなかったのに……」
ぼやきながら身を隠した所から顔を出して辺りを確認する。
ユリーナはまだかしら……。
「おい! いたか?」
「こっちにはいねぇ」
「どこ行きやがったんだ」
「もう少しで金貨1枚だってのに」
「おい、山分けだぞ」
「わかってるって」
……金貨1枚? 何のことかしら?
息をひそめ考える。
私のことじゃなければいいけど……危ないわよね。いなくなるまで待ちましょう。
「こっち行ったんじゃないか?」
「行ってみよう」
足音は遠ざかっていく。
「……はぁ」
もっと良い隠れ場所を見つけたい。
辺りを確認して、私は走り出す。
「ふぅ」
少し走り、隠れて休憩を繰り返す。
「よし」
あの角を曲がろう。
そう決め小走りで角まで行き、顔を出す。
「――ち覚えて、うおっ!?」
ドン
角を覗き込んだら人がちょうど出てきていた。
尻餅をつく。
「いてて」
ぶつかった相手も尻餅をついていた。
ど、どうしよう。見つかった!?
ぶつかった人は一緒に歩いていた人に心配されている。
……獣人、さんだ。触ってみたい……。
ウェルシリアでも住んでいる獣人族はいるけど触れたことはない。買い物はいつもユリーナが店の人と話していて、出かけたりしてもお城にいる以外の人と話すことなんて滅多になかった。お城の人たちはみんな人族だから他の種族に興味があった。
「す、すみません、大丈夫ですか」
ぶつかった男は手を差し伸べてくれた。
その優しさに私も男の手を取ろうとした。
「あっ……」
とっさに手を自分の体に引き戻す。
こ、この人たちもあいつらの仲間かもしれない!
私はフードを直しそのまま駆け出していた。
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「よし、昨日のリベンジだ!」
「おー!」
俺とルナは、昨日行ったダンジョンに来ている。
「ただいまの時刻、朝の5時だ」
「おーう」
「では、行くぞー」
「おーー!」
ルナもノリノリで俺も嬉しい。
作戦はこうだ。
昨日ボスが倒されたのが13時50分くらいだった。ならそれまでに深くまで行きお宝探しをしようじゃないか。という安直な作戦だ。
このために昨日早く帰って、ご飯を食べてすぐに寝たんだ。
魔物が出て来てもルナさんがいれば大丈夫でしょう。
地図を装備して、いざ探検へ。
「……人、多くないかい?」
「……多いね」
ダンジョンに入ってすぐは良かったんだ。下に降りれば降りるほど人が増えている気が……。
今は8層まで降りてきた。
降りてすぐ2、3パーティとすれ違ったよな……。
どうしよう。予想以上に人が入っている。みんな同じことを考えていたみたいだ。
「もう少し降りてみようか」
「は~い」
10層まで降りる。
さっきより人はいないみたいだ。
「ここから適当に回るか」
「適当だと迷っちゃうよ?」
「ん?」
「だから、適当に歩くと地図ないよ」
「……ああ! そっか」
地図は、入口からボスまでの道しか記されていないのだった。
「コウちゃんったらー」
ルナに呆れられるのか……。それは嫌だ。
「よ、よし。ここから壁沿いを歩くってのはどうだ?」
帰りはその逆を辿れば良いのだから。
「う~ん。いいんじゃない?」
「おし!」
気を取り直して出発だ。
「……行き止まりだよ」
「またか……」
壁沿いに歩くこと……何分だ? ダンジョンに入ってから4時間は経っている。
「どうする?」
「次行こう!」
やっぱりダンジョンは迷宮だ。行き止まりが多いし、気づいたら同じ所を回っているし大変だ。
最初に下に行く道を見つけた人は凄いんだな。
「おっ、11層に行けるな」
気づけば、10層内を回って下への道の所まで来てしまったようだ。
「いこー!」
「おー……って行くのか!」
「行かないの?」
「行ってもいいんだけど……」
『163年8月11日 9時31分58秒』
まだ大丈夫かな。
「行くか」
「うん!」
11層に降りて壁伝いに歩き出す。
分かれ道を右へ。そして、道なりに歩く。
また分かれ道を右へ。そしてすぐまた右へ。
……行き止まりだ。戻って右へ。
道なりに角を曲がる。……行き止まりだ。
「あっ! アイテムだよ!」
「へっ?」
「アイテムあったよー」
ルナは行き止まりの所まで行き俺を呼ぶ。
「アイテムってどこだ?」
辺りを見るが何もないのだが。
「ここだよ、ここ!」
「ここって……これ?」
行き止まりには、淡く光る揺らぎがあった。
ボックスみたいな空間の歪みに淡い光が入った感じだ。
「そうだよ」
「……これどうやるの?」
「何かで攻撃すればいいんだよ。こうやって」
えいっ! とルナはそれをチョップした。
すると、光が一瞬強くなり、消滅する。
……アイテムは宝箱の中だと思ってたよ。まさか探索中に見逃してたりしてないよな。
ルナは下に落ちているアイテムを拾っている。
「それは杖?」
20センチくらいの木の棒みたいな物だった。
「そうみたい」
そう言いながら、ルナは杖を俺に渡してきた。
「杖なら魔法使いのルナが持ってた方が良いじゃんか」
「ん? いらないよ。杖持ってるもん」
ルナはボックスから自分の身長ほどの杖を見せてくれた。上の部分には綺麗な青い石みたいなのが埋め込まれているし。
「なっ……よ、良さそうなの持ってるね」
ルナがこんなの持っていたなんて、コウちゃんビックリよ。
「えへへっ」
結局、杖は俺の物となった。
「杖ってどういう効果なの? ルナはいつも持ってないけど」
杖のことが気になったので聞いてみる。
「杖はね。魔法の補助だよ。魔力を杖に流し込むと魔力操作が少し楽になったり、詠唱無しで魔法を打てたりするんだよ」
「詠唱無しはルナもじゃん?」
「ええと……いつも詠唱している人もってこと」
「なるほど。……杖で魔力が上がったりは?」
「しないよ」
即答でした。
「魔法の威力が上がったりする杖はあるよ」
「そうですか……」
魔力が上がらなければ意味ないんですよ。魔法なんて俺は全然使えんのですから……。
それから、探索を再開するも何も見つけられなかった。
『163年8月11日 12時07分33秒』
「あっ!」
やばいダンジョンに居過ぎた。帰る時間が。
「何かあった?」
「違う。ダンジョンに長居しすぎたんだよ。そろそろ帰ろ」
「わかった!」
歩いてきた道を引き返す。
「途中で魔物が復活するかもしれないからな」
「りょーかーい」
楽しそうな返事が返って来たのだった。
数時間前は人がいっぱいだったこの8層も今は誰ともすれ違わない。
『163年8月11日 13時28分50秒』
「あと20分くらいで魔物が出るぞ」
「りょうかい!」
これは間に合わないな。なるべく上の方で魔物の復活時間になってほしい。
そう考え、俺とルナは小走りでダンジョン内を動く。
「タイムアップか!」
7層の途中で、辺りは昨日入った時の暗さに戻ってしまった。
「気をつけるぞ」
「うん」
そう言ったそばからゴブリンが壁から姿をを現した。
「うえ!?」
魔物ってこうやって生まれるのか!?
「えい!」
ルナの可愛らしい声により、ゴブリンは黒焦げとなる。
俺はというと、驚きのあまり走ってゴブリンから距離を取っていた。
「ま、魔物って壁から出てくるのか?」
「ダンジョンではそうみたいだね」
地上では違うのか? まぁ壁からは生まれないだろうな。そんなことが起こったらホラーすぎる……。
「コウちゃん! 魔物だよ」
「おう!」
前方に4体。バッド2、コボルト1、ゴブリン1だ。
「コボルトは任せろ」
「わかった」
返事をしながらルナはバッド1体を倒していた。
……俺も負けてられないな。
と思ったが、すでに負けているな……。
「うらっ」
コボルトに斬りかかるふりをする。
コボルトはバックステップで後ろに下がり回避を試みているが、そんなわかりきった行動を俺が読めないとでも思ったか。何回戦っていると思ってるんだ。
振るのを途中で止めていた剣をそのままの位置に、足を止めずコボルトに向かって進む。
そしてコボルトは着地し、その瞬間に斬る。
「よし!」
ルナの方を振り向くと、
「おつかれー」
という言葉が返って来た。
「あれ……魔物は?」
「倒したよ」
「そうですか」
……流石ルナさんです。
その後も順調に進み4層まで来た。
走ると辺りの警戒が薄くなることに気づいたので歩きながらだ。
「ふぅ」
湧いてきた魔物を蹴散らせ一息。
ルナは鼻歌を口ずさんでいる。
余裕っすね……。
そんなルナがここにいてくれることは、戦力的にも精神的にも助かっているのは事実である。
「コウちゃんあれなに?」
ルナが腕を引っ張って聞いてきた。
「うん?」
言われた方を見ると、奥の道で魔物が行列を作って動いていた。
「な……なんだ?」
すぐに魔物の行列は俺たちの視界から姿を消した。
「……何だったんだ?」
「なんだろうね?」
疑問を浮かべる俺とルナだったが、わからなかったのでダンジョン脱出のため歩き始める。
そして、その疑問は解消された。
「わっ!?」
「わー! あはは」
4層から3層への道が見えた最後の分かれ道、魔物がいないか確かめるために曲がり角を覗くと走っている3人の姿が見えた。魔物を沢山引き連れて……。
「笑っている場合じゃないぞ! ルナ、行くぞ」
俺は逃げる選択を取った。
「助けてくださいー!」
「ちょ、く、来るなー!!」
「お願いですー!」
3層に上がる俺とルナについて来る人たち。魔物も引き連れて。
「後ろの奴らをどうにかしたら助けてやる!」
「それをお願いしたいんです!」
何も考えず走る。
前に魔物がいたって気にせずに。……これがこの状況の原因だな。
走っていると左右に別れている道が見えてきた。
「俺たちは右に行く。お前らは左に行け。わかったな!」
「わかりませんー」
「ダメだ! わかってくれ! せーのっ」
先頭を走っていた俺とルナは右側に行く。
後ろを振り向くと、俺たちを追いかけていた3人も体が右側へ向いた。……みんな右に来ましたよ。
そして、その道の先は行き止まりに繋がっていたのだった……。
「コウちゃんアイテムあったよ」
「今はそれどころじゃない!」
魔物たちも走るのをやめて俺たちにじりじりと迫って来る。
「えー……せっかく見つけたのにー」
ふくれっ面で言われても、本当にそれどころではないのですよ。
「しょうがないなー」
ルナは俺たちの前に出る。
「き、君、危ないよ!」
俺たちについてきた1人の男の人が言う。
……そんなことを言うなら俺たちについて来ないでほしかった。
「だいじょー、ぶ!!」
ルナは右手を前にだし、前方に電撃を放った。
バチバチと凄い音を出して、魔物たちを黒焦げにする。
黒焦げになった魔物は消えていく。死んではいないが電撃を浴びて行動不能になっている奴もいるみたいだ。
俺はそういう奴らにとどめを刺しに行った。
ルナの活躍によりものの見事に片がついた。その時間5分くらいだ。
魔物も大量にいたためか、アイテムが結構落ちていた。それを2人で拾い集めてから走らされた元凶のもとに行く。
男1人と女2人だ。全員俺と同じくらいの年に見える。
「さて、どうして俺たちを追いかけてきたのかな?」
笑顔で声をかける。
「ひっ」
後ろにいた茶色い髪色の女の子が少し下がった。
この顔怖いのか。初めてやってみたけど効き目は良かったみたいだ。
「あ、ありがとうございます! 助かりました!」
灰色っぽい髪色の少年はそんなこと言ってきた。
「お礼はいいからさ、どうしてついてきたの? ああいうのはマナー違反じゃないか」
トレインの擦り付けはいかんだろ。
「さ、最初はちゃんと戦っていたんです。だけど、魔物の数が多くなって、自分たちでは手におえなくて……それで……」
少しつり目の赤髪の女の子はそう答えた。
「僕が時間を見なかったのがいけないんだ。安全だからって行き過ぎた。だからこの2人は悪くないんだ。僕が――いたっ!」
この男の頭を叩く。
「誰が悪いじゃなく、お前たちが悪いんだよ。これからは気をつけろよ」
俺も時間を見てなかったから今ここにいるわけで、ルナがいなかったらこいつらと同じことをしていたかもしれない。そう考えるとそこまで怒れなかった。
必死に逃げていたせいか汗が凄い。というか最初から逃げなくても良かったのかもしれないな……。
「じゃあな。ルナ行くぞ」
「はーい」
先程見つけたアイテムを取っていたルナを呼んで踵を返した。
「あっ……ま、待ってください」
今まで脅えていた茶髪の少女が口を開いた。
「あ、あの、わたしたちと一緒に帰ってもらっても……い、いいですか?」
脅えながらもそう言ってきたのだった。
「……しょうがないな」
ここで死なれたことが俺の耳に入ると目覚めが悪くなりそうだしな。
「じゃあ行くぞ」
「あ、ありがとうございます」
「本当ですか!?」
「…………」
三者三様の返事が来る。
「仲間が増えたー」
もう1人は素直に喜んでいた。
「気をつけていくぞ」
「はい」
3層を適当に駆け巡ったため地図が意味なくなってしまった。そのため、2層まで自力で行かなくてはならない。
俺と少年……青年か? まぁどっちでもいいか。俺と少年が前衛、ルナが中衛、残り2人が後衛だ。
少年はサーベルを背中に装備しているから剣士なのだろう。赤髪の女の子は弓矢を装備している。茶髪の少女は小さな杖を持っているから魔法使いだろう。
弓矢を使う人は初めて見るな。いや、装備している人はギルドで見たことあるから、使うところを見るのは、だな。
実際使う場面がくるのか怪しいが。
狭い道ではルナが無双できる。魔物を密集させて、そこに魔法を打ち込めばいいのだから。
いくつもの戦いを乗り越えて……ルナ1人で乗り越えて、2層に繋がる道を見つけることができた。
「コウちゃん」
「ん? どうした?」
「魔力が半分くらいになったかも」
「えっ!?」
後ろで驚く声がするが聞き流す。
「了解。あと少しお願いできるか?」
「魔力が半分に近づいただけで、まだまだ余裕だよ!」
「頼りにしてる」
と言うか、頼らないと全滅の恐れが……。魔物の数が多いと、手に負えなくなりやられてしまうからな。
「まかせて!」
頼もしい声が返ってきた。
ボス復活後は魔物の数が多いみたいだ。昨日入ったときより遭遇率が高い。いる場所が2層だからなのかはわからないが。
2層も地図を見ながら通り抜ける。そして1層へ。
「もう少しだ」
「はい」
返事は相変わらず少年だけだ。
赤髪の子はなぜか俺を見る目が怖いのだが……。茶髪の子はルナと仲良くなっているし。魔法使い同士で気が合ったのかな。あの子は優しそうだし、友達が増えることは良い事だな。
1層に出てすぐに魔物の集団を見つけた。やっぱり狩られていない分、魔物は多いみたいだ。
「魔物発見! ルナ頼んだ」
「おっけー。まかせて!」
ルナは前に出て炎を放った。
前方では魔物たちの声にならない声が、炎の音とともに聞こえて来る。
「うあっ!?」
炎の中から1体コボルトが飛び出してきた。
端っこにでもいたのか!
驚いて腰を抜かしている少年を尻目に、コボルト斬り倒す。炎のダメージのおかげかコボルトのスピードがいつも以上に遅かった。しかし、気迫はいつも以上あったような気がする。
いきなり殺気と気迫を纏って炎の中から出て来たんだ、それは驚くよな。俺も一瞬足が動かなかった。
……魔物たちも生きているということか。
「大丈夫か?」
俺は少年に手を差し出した。
「あ、ありがとう。助かった」
手を取り立ち上がらせた。
「気にするな。早くここから出ようぜ」
「は、はい」
そして、ルナの魔力も切れずに、無事出口に着くことができた。
「……雨か」
ダンジョンを抜けた先に待ち構えていたものは雨だった。




