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番外編/初めての男の子①

【サイド/セシリア】


 あの夜、私の全ては失った。その事を語らせて下さい。

 私は田舎の農村に産まれました。本当に田畑しかない場所で遊ぶ場所も手伝う場所も、行動範囲は自分の家の畑のみでした。たまに麓と村に麦を届けるくらいで、私の生活はそれで完結していました。そのまま幼少期を両親を手伝い、親が決めた青年と結婚をして子供を設けました。子供が出来てからは笑うことが増えたと思います。子供は愛くるしくて、それをみて笑うことが増えてきたと思いました。このまま子供の我侭を聞いて稲を刈っていく。それが幸せだと。そう思っていました。




 !……深夜、ふと肩を強く揺さぶられて跳ね起きた。何。起こしたのは旦那。何か切迫している表情だった。こんなことは初めてだ。急速に目が覚める。貴方と声をかけたが旦那はその声を聞かず村の西から逃げろと言った。混乱した。掛け布を跳ね上げた。おそらく盗賊が攻めてくる、東で押し留めているが多分無理だ。そう言った。ああはいと。私は言った。猶予はありますかと聞いた。もうない。そういうやりとりだった。とにかく娘の部屋に駆け出してグズる娘を抱えて裏口から裸足で駆け出した。そういう状況だった。もう何がなんだがわからなかった。


 娘を抱き抱えて一直線に西門を目指した。旦那の様子でもう村がダメだとわかった。東の方がやけに明るい。火の手が上がっているのか。とにかく猶予はない。村の細道を選んで逃げて西門をくぐるために最後に大通りに出た。後方からの追手はない。振り向いた。大通りの中央で賊を押し留めていた旦那が斬られていた。驚愕。私の旦那死ぬの。娘。とにかく娘を守らないと。娘をとにかく遠ざけないと。これだけは何より誰より守らないと。そんな心境で走った。西門をくぐる。


 無我夢中で走った。頭は混乱している。ウソ、旦那死んだ。娘は抱えてる。娘だけは守らなきゃ。娘だけは。この温もりだけは離しちゃいけない。それだけは。それだけは解る。

 山道を登るにつれて空気が澄んできた。はっ、はっ、と自分の吐息とは別に、ドドッドドという音が遠くから聞こえる。追われてる。何人かはわからないがこっち方面に逃げてる人がいるのだろう。

 藪に囲まれた山道で、遠くに追手の足音が聞こえたら多分誰しも藪に飛び込みますよね。私もそうしました。娘を宥めて息を殺して。飛び込んだ藪を元に戻す偽装して。やり過ごして山道に戻ると娘が歩きたいといったのでビクビクしながら登山しました。今日の娘の寝床、夕食どうしよう。それしか頭にありませでした。山道は以前藪で時折山林。いつ前に行った部隊と後続部隊に接触するかわからない。見つかれば殺されるか酷い目に合わされる。はっきり言って極限です。もうただひたすら娘を抱えて歩くしかありませんでした。


 ……気づけば私は村で呼ばれる『絶望の崖』と呼ばれる淵に娘を抱えて立っていました。あれ、ここ目指してたっけ。ちょっとちょっと、マジで違う。いやいやいやいや。それはないから。そんな感想を娘と手を繋ぎながら考えていた。いい眺めだねと娘の背中をゆさゆさしながら立ち去ろうとした。そうしたら後方に人の気配を感じました。嘘。躱したと信じてたのに。追手に囲まれてました。後ろ崖。前盗賊。迫る盗賊に耐え切れず、せめて娘だけでも生き延びてくれたらと娘を抱えて崖に飛び込みました。落下途中に意識喪失。


~~~


 ん・・・ん。あ、ここはどこ。ベットに寝かされていた。まず飛び込んできたのは見知らぬ青年だった。なに。なに。「大丈夫だ。ここは安全だ。」と話しかけられた。ああ、そうなんだ。何か声を発したい。「そうですか・・・。」と言った。そこで意識が落ちていった……。



 目が覚めた。窓の感じでは早朝だ。衣服を確認する。盗賊に迫られる途中に切りつけれた外側の切り傷はあるものの下着に乱れはない。寝込み襲う人ではなかったか。娘を襲う人だったら母を襲わないだろう。娘は大丈夫かなと良い人なのかな。ちょっと怖い。恐る恐る部屋を出て居間に行ってみる。

 彼は流し台で顔を洗っているようだった。ちょっとほっとした。声をかけてみたところ、手ぬぐいで顔を拭い爽やかな笑顔で「目が覚めましたか。お怪我はありませんか。」と言ってきた。素敵な笑顔を向けられた。


 ………あ、キュン()だ。ウチの村ではそういってた。一発でキュンとする笑顔。こんなの見れるの奇跡だって。マアル。マアルには悪いけど、次のお父さん、注目株きましたよ。「お気になさらず。それよりこれから朝食をつくるのですが、食べられますか。」お母さんズキューンしてますけど、まずは娘、娘が大事。「ええ、勿論用意します。よければ娘さんの所にいてあげてください。起きたら呼んでください。」

 顔赤いでしょ。今顔赤いでしょー。



 ……マアル。

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