一人のリードは一人を招く
一章
俺は毎朝二人暮らしの姉、
蔵池白穂を起こすのが日課になっている。
姉はIT関係の会社に就いていて、その中でも技術開発部に所属しているらしい。
そして、家でも仕事をしているため、当然家事は全て俺がやることになってしまった。
もともと姉はものぐさだったけど。
「姉ちゃん、弁当作っといたからー」
「はいはーい、ありがとねー昴」
いつも通り姉を呼び起こし、
自分も学校の準備をする。
こんな大変なことに慣れてしまう
のだから、慣れは怖いな。
後は自分の荷物を準備するだけ、と
ピーンポーン
朝早くなのに、誰かが来たようだ。
こんな時間に誰だ?
姉の同僚が来たのかもしれないと思い準備を続けていると、
「昴ー?」
ん?俺に用がある人か?
友達にもまだ家の位置は教えてないはずだけれど。
「少し待ってもらってくれー」
「はいはーい、急ぎなさいよー?
それじゃあ、姉さんは行って来るからー」
「了解ー、いってらっしゃいー」
それにしても誰だろう、郵便局か何かかな?
とりあえず、急いで出ないとな。
「すいません、お待たせしまし......」
「おっはよー!蔵池君!
今日も学校に行きましょうか!!」
それからの俺の行動は飼い主を見つけた犬のごとく速かったと思う。
まず扉をしめ、考える。
どうやら俺はまだ寝ているようだ。
この間約1秒足らず。
自分で自分を褒めたくなってもおかしくないよな、うん。
早くこの夢から起きないかなーなんて考えてると、チャイムが凄い鳴り響いてる。
そんなに押しまくるとご近所さんに迷惑だろう、まったく。
これ以上ご近所さんにお世話になってもあれなので、仕方なく扉を開けると。
「どしたの?早く学校いこ?」
なんて首を傾げて聞いてくる。
小動物みたいだ、そんなに飼い主を求めるみたいに見ないでくれよ。
......そろそろ現実を受け止めよう。
だけど、何故こいつがここに居る?
家の場所なんて教えていないぞ。
「ったく何で倉野がここにいるんだ?
家の場所教えた覚えなんてないぞ?」
すると倉野は、
「ふふん、人から教えられるだけでは
成長できないのだよ、蔵池君!」
なんて言い放った。
おいおい......
ストーカーでもそこまでの開き直りはできないと思う。
ああ、ストーカーだったな、こいつは。
「そのセリフ、もっと他に使うべき場面があるだろ......?」
「もー、いいからいいから、早く行こっ?」
こいつはどうやらマイペースな自分っ子らしい。
こっちの意見をまるで聞いてないからな。
「あ、ああ、分かった」
どの道この状況からは逃れられないのだし、今は倉野と一緒に学校へいこう。