周辺その一
初投稿です。
いやいや、力の限り当事者だろう。なぜ周辺に分類されているのか。馬鹿を申してはいけない。
なんと言ったって、わたしは彼女の夫だ。正真正銘、この国の王太子妃を妻に持つ男だ。つまり王太子だ。
そんなわたしが、妃の周辺な事情――。涙を禁じ得ないが話さねばならない。
つい うっかり ポロッと
言ってしまったことに端を発するのか?わたしが妃の周辺なことは。
いいや、ついもうっかりも、次元が違うのだ。これは不可抗力としか言いようがない。そして誰も悪くない。
*** *** ***
わたしが妃を見初めたのは、この国の建国祭のときだ。それというのも、この間のはなしだが。ロイナー伯に連れられ、王宮内の様子をきらきらとした薔薇色の瞳で伺っていたのがとても印象的だった。まあ、いうなれば一目惚れというアレである。
そのときのわたしの様子を関係者はこう語る――――
「完全に呆けた、超弩級の阿呆面でしたよ」と。
なかなか辛辣なアレでアレだが、まあそんなことは気にしない。
そんなこんなで、周りのお膳立て(光の速さで強引だったが)もあり、わたしは念願叶ってあの麗しい娘を妻に迎えることができたわけである。
当の妃はといえば、それはそれは愛らしく花の精もかくやと思わせるような、毎日ルンタッタな風情で過ごしてくれていた。わたしの顔を見上げてくるときの妃の瞳のうるうる感といったらもうっ……! 薔薇色の瞳に見つめられるわたしが薔薇色! ……みたいな。
……若干ひとりで盛り上がってしまった。
とにかく、結婚してからの三ヶ月間は、夢色・薔薇色・アッハッハ という感じであった。
そう、三ヶ月間は――――。
わたしは わすれることが できない
アレを言ったあの瞬間、わたしが愛してやまないあの薔薇色の瞳が
火のように光り
血のように滾り
紅蓮のごとく燃えあがった
あの、恐怖の深淵を――――。
目を通してくださいまして、ありがとうございます。