解錠
24 解錠
三日目、午前中は前に住んでた辺りへ。
駅前、よく行っていたスーパー、コンビニ、蕎麦屋、ファミレス、弁当屋、公園など。カレー屋と本屋はなくなっていた。そのあとは通っていた小学校、正月に初詣していた神社、前に住んでいたマンション。歩き回りながら、「ここはよくママと一緒に行ってた」とか「お父さんと遊んだ」とか、思い出をよしつねに話したら、興味津々で聞いてくれた。そんなに面白い話でもないと思うが、出会う前のわたしのことで、あまり知らないからだろう。
「せやけど、どないしてこの辺に来よう思たん?」
「単純に前住んでたから今どうなっているのかなって、1年半前からどれくらい変わったのか確かめたかったんだ」
「変わっとった?」
「少しね。なくなったお店もあるし。でもね、一番変わったのはわたしの方。前はここ行きたいとか、ここでごはん食べたいとか、また来る前提っていうか、自分の世界として見てたけどさ、今日はさ、昔を思い出すのもあるけどさ、何か客観的っていうかさ、こうなってるんだとか、あっちにもこういうのあればなとか、違う世界のものとして見る感じになってた」
「またいつかここら辺に住みたいん?」
「うん。思い出補正もあるかもだけど、やっぱり安心するし、良いところだなって。だからもし、将来トーキョーに住むとしたら、この辺りがいいかなって。まださきのことだし、その頃にはこの辺りもわたしも変わっているかもしれないけどね」
「好きな場所がいくつもあるちゅうのはええよな」
「そうだね。よしつねは前住んでたところに行ったりしないの?」
「せんな。だいぶ変わってもうたし、まあその、結局ループしてそこで生活するからな。わざわざ行かへんし、このところはトーキョーは墓参りくらいしか来んな。参考にならんくてすまんな」
「だよね。変なこと聞いてごめん」
「いや。けどいろいろ考えてんやな、りかおん」
「まあ、せっかくトーキョー連れて来てくれたからね。ただ遊ぶだけじゃなくてね。じゃあ次、パフェ行こ?」
「おう」
電車で移動して昼食、と言って良いかわからないが、パフェ。桃がいっぱい、ジュレ、ソース、クリーム、シャーベットなどが重なり、ハーブが添えられていて、すごい迫力。食べ進めると味が変わって、最後まで美味しく楽しめた。初めてだけど、昼食に甘いものだけ食べてちゃいけないってこともないだろう。パフェと紅茶だけでお腹いっぱい、満足できた。よしつねもこんなパフェは初めてだという。少し優越感。
再び電車移動。よしつねの両親のお墓参り。道中しんみりしていたら、昨日今日死んだわけじゃないから気にするなということを言われた。いつまでも悲しんでいるのは良くないと思いつつ、父のことを思い出すとやはり悲しくなる。
お墓に着いて、まず掃除。毎月来ているだけあって綺麗だったが、よしつねはまたいつ来られるかわからないからとしっかり洗っていた。もしものとき、想像したくないけれど、そのときはわたしが代わりに来てあげると伝えたら、そんな暇があるならもっと遊んだり勉強したりした方が良い、と言われた。少し恥ずかしそうに。
合掌。よしつねよりわたしの方が長く手を合わせていたみたい。黙って待っていてくれた。
<わたしはつねはるさんに命を救ってもらいました。おかげで今も楽しく過ごせています。その他にもたくさんしてもらいました。だから、今度はわたしが、つねはるさん、よしつねって呼んでいますが、彼を苦しみから解放できるようにしたいと思います。ありがとうございます>
そう胸の中で伝えた。
ホテルの近くに戻って夕食におでん。夏におでんってどうかと思うが、エアコンの効き過ぎで寒いこともあったから、まあいいだろう。それにしても昼との落差が大きい。大根、玉子、ちくわ、じゃがいも、さつま揚げなどのおでんと、出汁巻き玉子とお茶漬けを食べた。ホテルも近いからとお酒をすすめたら、ほならと日本酒を少しだけ飲んでいた。寝られては困るが、少しは饒舌になるだろうか。
ホテルに戻る。よしつねは少し酔ってはいるが、問題なく部屋までたどり着いて、窓際のローチェアで休む。わたしは向かいに座る。
「大丈夫?酔った?」
「少し…ね。今日は疲れたな。けど、りかおんと酒飲める日が来るなんて。ありがとう…ね」
「わたし、飲んでませんけど?二十歳未満だし」
「あ…うん…」
「あのさ、聞きたいことあるんだけど」そう、初めて会った日に聞いたこと。よしつねが唯一閉ざしてる、箱。
「何?」
「わたしの将来目指しているもの、夢、知ってる?」
「あ…言いたくない」
だめか。酔って判断力が弱っていたらもしかしたらと思ったが。
「でも、知ってるよね?」
「い…言わない」
「他のことはさ、聞いたら、言いたくなさそうなことでも、聞くかって、いったん確認して、わたしが聞くって言ったら必ず答えてくれるのに。でも言えないってことは知ってるってことでしょ?もうわかっているんだよ」
「…どうして?」
「ぬいぐるみ、クレーンゲームで獲った日ね、前世と予定が変わってさ、わたしが最初一人で本屋に行って本を買ったんだ。それで、そのあと、あのビルに行ったか聞いてきてさ、行ったって答えたら、ぬいぐるみのことだけ聞いて、本のことは聞いて来なかった。あのとき買った本がさ、中高生向けの法律の本だったんだ。前世で見て知ってて、だからあえて避けてたのかなって思って。あとわたしがさ、身体的素因とか、出捐とか、実質的所有者とかの、法律の言葉使ってもまったく突っ込んで聞いてこないんだよ?普通なら、よう知っとんなとか、何やそれとかさ、一回くらい言いそうなもんだよ?」
「…そうだね。結局…ごめん」
「何で謝るの!?」わたしの声のトーンが上がっていく。
「…」うつむいて何も答えないよしつね。
「そう、知ってるんでしょ!?叶わないって思ってるんでしょ!?前世でそうだったから。だからあえて避けるようなことして。でも、叶えたいって思ってわたしの言うこと聞いて、そうやって何回も繰り返して来て、でも叶わないんでしょ?」
「…」
「自分のせいでさ、わたしの夢が叶わないって、思ってる?」
「…うん」酔っているせいもあってか、目が虚ろだ。
「ならさ、わたしに構わなければ良かったのに」
「…え?」
「もうさ、来世でも、わたしに構わないでいいよ。怪我するけどさ、死にはしないんでしょ?それで、もしかしたら夢叶えるかもしれないし」
「そんなの…」
「でもそれが本当なんだよ?ううん、本当はさ、最初はよしつね死んじゃうから、わたし生まれてないかもしれないんだから、それに比べたら、生まれただけでめっけもんだよ。怪我くらいどうってことないよ。なのに勝手に助けて、自分のせいで夢が叶わないって思い込んで、迷惑なんだよ!」
「…そんなのだめだよ。わかっているのに、君に怖い思いを、怪我をさせたくない」目を潤ませて、今度はこちらを直視してくるよしつね。
「だったらまたズルすればいいよ?そしたらわたし怪我しないんでしょ?」
「でも…僕のズルで、君を惑わせてしまうから、君の夢が叶わない。僕のところへ来るせいで」
「そっか、それもズルやめた理由なんだね?他人の人生って、わたしの…だったんだ…」
「そうだね…だから僕が、君の夢を…」
「…けんな」わたしはわたしを抑えられない。立ち上がって、よしつねの襟元を掴む。
「…!」よしつねが、潤んだ目を見開いているのがわかる。
わたしは、全身全霊の力を込めた拳をよしつねの胸に、極限まで目を見開いた視線をよしつねの目に、精一杯の声に乗せた本音と虚勢の全部をよしつねの耳そして心に、思い切りぶつける。
「ふざけんなッ!!自分のせいでわたしの夢が叶わないって!?自惚れんな!!
それで罪滅ぼしのつもりでわたしのわがまま聞いて、親切を押し付けて、喜んでるんでしょ!?気持ち悪いんだよ!!
ほら、その顔、ビビってんでしょ!?あんたの知ってる莉花と違うんでしょ!?わたしはあんたの思うようにはいかないし、あんたなんか必要ないんだよ!!
だから、今すぐわたしの世界から消えてよ…もう二度とわたしの前に現れないでよ…」
椅子に叩きつけられ、もたれかかるよしつね、何も言えず唖然としている。
わたしはよしつねの目を見たまま。視線を外せば、もう二度と見られないかもしれないと思いながら。
「…莉花…ああ、僕は…ごめん…何もわかって…」よしつねはそう言うと、嗚咽をもらして、じきにそれはすすり泣きに変わる。
やがてわたしの顔を見たまま、泣き声を止める。わたしから視線をそらす力すら残されていないかのように。そのとき、よしつねの身体から、何かが、よしつねが消えそうになっていくのを感じた。
消える?
死ぬ?
わたしが望んだから?
この期に及んで自分の傲慢さが嫌になる。でもそれがわたし。
わたしはよしつねの両の二の腕を掴み、泣き、叫ぶ。
「だめだよ!!そんなにすぐわたしの言うこと聞いてさ!わたし、あなたと違って嘘つきだからさ!さっきのは嘘だから!お願いだから戻って来て!ごめんなさい!!お願いします!!お願い…」
全身全霊以上の力でよしつねの身体を揺さぶった。それが正しい方法なのか考える余裕もなく、ただ眠らせないように、決して離さないように、それだけを思って。そのまま…わたしは意識を失った。
ふと、気が付くと、誰かの身体にもたれかかっている。見上げる。よしつねがこちらを見ている。ただ目を開けているのではなく、わたしを見ていることがわかる程度に、優しい生命を感じる。
「…莉花」よしつねの声だ。
「え…生きてる?これは、その…現世?」
「うん。もちろん君の生きてきた、君の現世だよ。戻って来てって、君が言ったから。気持ち悪いよね?」
「ごめん。わたしその…消えろなんて」
「もう…大丈夫だから」
「それにひどいこと言って」
「いや。本当のことだから。僕の自惚れとおせっかい」
まだよしつねの腕を掴んでいたことに気付き、手を離し、身体を離し、立ち上がる。
ちゃんとよしつねの存在を認識できて、涙が溢れる。
「ごめんなさい…、ひぐっ、本当は、よしつねにもう苦しんで、欲しく…なくて、わたしが、ふぅ…負担になってるんじゃないかって、だからわたしから離れたら、はぅ…わたしを嫌いになって…会わなくなったら、よしつねが楽になるんじゃないかって。それで…」
どこまでが目でどこからが涙かわからないくらい。
「もう大丈夫だから、気持ちはわかる…と思うから」
「…あのさ、助けられて迷惑だなんて嘘だから。大嘘。その…怪我だってしたくないし」
「うん」
虚勢は全部、涙が流してくれた。残ったわたしの言葉は…
「…でもね、あなたが知っている前世のわたしと、今のこのわたしは違うっていうのはさ…きっと本当なんだよ。わたし…あなたと会って、すごく変わったんだよ…こんなに、ひどいこと言うくらいに。もう前世のわたしとは似ても似つかない別人なんだ。だからね…ううん、もともとさ、前世のことなんて気にしなくて良かったんだよ」
「うん、そうだね…」
よしつねが安堵しているのがわかる。すごく、優しくて、消えそうな笑みをたたえた顔。その顔を直視できなくて、わたしは離れて向かいに座る。その一瞬で気持ちを整理する。今度は優しい言葉で、嘘のない、わたしの心を伝えたい。
「今までのね、前世も含めて、わたしに構ってくれたことはありがとう。でもわたしの夢を叶えるのはわたし自身だから、報われるだけの正しい努力をしていけばいつか辿り着けるから。これについてよしつねのできることは…ないと思う」
「…そう」
「だからさ、もう…よしつねはわたしのこと気にしないでさ、自分の好きなように人生を生きて…」精一杯の言葉を絞り切った。
「それは…本当?」
「…」わたしは答えられない。本当の気持ちだと思って発した言葉のはずなのに。
「そうだね。僕は、君がどう思うか気にせずに、本当にしたいことをするよ。それがようやく、わかったから」よしつねは、ゆっくりと噛みしめるような口調で、自分自身に言い聞かせるように。
「そっか。それは良かったね…うん。応援する」そう、それは嬉しいことのはずなのに。
「うん。ありがとう」
「えっと…それさ、聞いたら教えてくれる?」
「うん。もう話すよ…何でもね」
「じゃあさ…教えて」怖いけど、応援したいって思うから。
「それはね、君が夢を叶えるって信じて、応援すること」
いつものニヤニヤではない、けれどにこやかな表情のよしつね。何を言っているのだろう。わたしが言ったことを聞いていたのだろうか?けれど、それがよしつねの望みなら、わたしが否定する必要はない。
「ふふっ、何それ?わたし、応援するの応援することになるよ?」また笑えることに気付いて安心する。
「だめ?」
「ううん…その、好きにすれば?」
「うん。そうする」
「…その、わたしを応援してもいいけどさ、何年もさきの話だけど、わたしが夢を叶えたらさ、やることなくなっちゃうよ。だからさ、それまでに次のやりたいこと見つけなよ?」
「うん…せやな」
そのままよしつねは眠った。着替えもせずに。
わたしは帰り支度と寝る準備。明日は早起きして朝ごはんを食べるから、よしつねはそのあとに準備すれば間に合うだろう。手伝ってあげてもいい。
でも、朝起きてどう接したら良いだろうか。普通に?普通ってどうだろう。今までと同じ?いや、わたしもよしつねもこの夜を境に少し変わったのだと思う。わたしは別人のように感情をよしつねにぶつけ、よしつねは死にかけた。ものすごく、よしつねを傷付けたかもしれないし、その実感はある。けれど、また笑って話せた。だからわたしたちの関係は何も変わっていないはず。閉ざされた箱は開けられて、より自由になっただけ。どんな関係なのか、定義することもできないし、その必要もない。
翌朝、物音がして目が覚める。よしつね?靴を履いて玄関ドアを開けている音が聞こえる。どこかへ行ってしまう。応援するって言ってたのに。嘘だったの?気が変わったの?行かないで。
ベッドから飛び起き、裸足のまま駆ける。玄関ドアが閉まる。手を伸ばしドアを開け部屋の外へ。そのさきに見える人影。わたしの声が追う。
「よしつね!」
声のさきの人物が振り返る。
「りかおん?どないした?」
「どないじゃないよ!黙ってどこ行くの?」
「あ…ちょっと買い物」
「好きにしてって言ったけどさ、そんな嘘つくなんて」
「嘘やないって。その…服をな」
「何で?服って?」
「あー、ま、しゃあないな。これ」と言って肩を前に出し、両方の二の腕を見せてくる。肌に赤く複数の筋が入っている。
「あ…ごめん」わたしが掴んだせいでできた跡。
「せやから、長袖をな。コンビニとかで」
「わたし、買ってくるよ」
「そんな格好やし着替えんとあかんし。それにもうええわ。戻ろ?」と言って部屋へ引き返す。
「やっぱりどっかいなくなるつもりだったんでしょ?」
「いや、腕、もうりかおんにばれてもうたから、あとでええかなって…あ!」ドアを開けようとしたよしつねが声を出す。
「りかおん、カードキー貸して」
「え、中だよ?急いで出たから。何で持ってないの?」
「その…忘れた。フロント、行ってくるわ」
「うん。早くしてね。わたし、寝巻きだし裸足だし。このまま置いて行かれたらその…ひどいよ」
「おう。すぐ戻るわ」
よしつねがスペアキーを借りてきて鍵を開け、部屋に戻る。よしつねが疲れてベッドの端に座って、そのまま後ろに倒れたのを見て、わたしも自分のベッドで同じようにする。二人で夜空ならぬ天井を見上げる。
「はあ…いっつも戸締り忘れるよね?」
「戸締りはされてたやん。むしろ閉まっとったのが仇になってん。システムの弊害や」
「そういうことじゃないの。オートロックであろうとなかろうと鍵は常に持っていかないとだめなの」
「りかおんかて、鍵持たずに出たやん」
「それは仕方ないでしょ?もしかしたらいなくなるかと思ったんだから?」
「さっきからな、わし何でいなくなるん?」
「だって昨日の…覚えてる?」
「りかおんに気持ち悪いから消えろって言われたやつのことか?」ずいぶんとあっさり言ってくれる。
「そんなこと…言ったからさ、もしかしてって。でも、そんな風に思ってないから」
「もう、気にせんて。昨日も言うたやろ?」
「うん…でもごめんなさい」と起き上がり頭を下げ、「わたし、人を救いたいって思ってたのに、よしつねを傷付けて。こんなんじゃ誰も救えないよね…」
よしつねも起き上がり、真剣な目でわたしを見る。
「人を傷付けたのがわかったら、自分も痛いやろ?」
「うん。すごく、苦しい」
「もうそないな思いせんようにってなるやろ?」
「うん…絶対に」
「それがわかったんやから、えかったやろ。犠牲者わしだけで済んだわな」いつものニヤニヤした表情で。
「良くないよ。でも、ありがと」
「せやけど、前世でもっと…いや、今回が群を抜いてひどいかもな」
からかうようなよしつね。だからもう、わたしもいつもみたいに振る舞おう。
「…何それ?でも…もうさ、前世のこと、気にしなくていいのに」
「前世がなかったら、りかおんに会えへんし、こうしてトーキョーへも来てへんやろ?せやから、わしはこれからも前世のことは忘れへんし、気持ち悪いままやで」
「ふふっ、本当にそう。もう構わないでいいって言ったのに」
「好きにしろって言うたやろ?」
「言ったけど」
「ほな、今日は何するん?」
「いいの?」
「何が?」
「ううん。えっとね…裁判所行って、傍聴とか」
「ほな、未来のりかおんの職場やな?インターン、みたいなもんやな?」
昨日までのよしつねなら言わなかったであろう言葉。もう気にしなくて良いから。でも…
「急にそんなふうに言われるようになるとね、ちょっと…」
「嫌なん?」
「ううん。恥ずかしいのと、あと覚悟っていうか、頑張らないとっていう気持ちが芽生えて自分に困惑してるってところかな?スイッチってやつ?」
「けど、まだ時間はたっぷりあるからな」
「そっちほどではないからね。現世でなんとかしないとだし」
「せやな、わしの人生が楽しくなるようにしてくれんやもんな?」
よしつねが身体を捻り、こちらを見つめてくる、ニヤついて。
「それ、今関係ある?」
「競馬、応援してる馬が勝ったら楽しいやん?」
「うん、そうだけど、だから?」
「わし、りかおん応援してるやん?」
「うん、言ってたね」
「もうわかるやん?」
「全然。何が?」
「三段論法やろ?」
「えっ?んっと、わたしがすることはよしつねを楽しくさせること。よしつねが応援している馬が勝つ…よしつねが応援してるのはわたしだから、わたしが勝つ、つまり夢を叶えれば応援しているよしつねは楽しい。だから、わたしがすることはわたしの夢を叶える…それがよしつねを楽しくさせること?」
「せや。とことん楽しませてもらうで?」
「うん。わたし頑張るよ…ってさ、なると思う?ならないよね?もっともらしく聞こえるけど、人の将来を賭けの対象みたいに言ってさ。貴族の遊びか何か?なかなかひどいよ」
「ほな、これでおあいこやろ、な?」微笑むよしつね。
「…ふふっ…はははっ、よしつねってさ、本当に…」わたしの全部を引き出してくれる。こんな笑顔も、罵声も、涙も。




