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宇宙は広くて

宇宙は広くて(惑星間探偵事務局KSK)

※※※※※※※※※※※※


「宇宙は広いな、大きいなー。月は回るし日は照らす♪」


 カゼノさんが地球の民謡を歌っていた。「こういうのは多少イジっても言いたいことがブレなければいい」という持論で編曲しているらしい。そんなことしてたら二千年前の古代人にだってもうちょっとマシな暇つぶしをしたらいいと思われてしまう。私たちの宇宙艇はアマノガワ惑星系列を飛んでいた。ここは最近ちょっとだけ、騒がしいらしい。


 アマノガワ系列の端の方から、ステーションやコロニーがある星は陣取り合戦みたいになっている。それまでは儲かりマッカ、ぼちぼちデンナという古代文明の神秘言語を使うような場所で、みんな雰囲気で言い合って笑っていた。でも最近は「あの人たち」「この人たち」で人を見るようになって、住みづらいらしい。惑星系列の端っこには最初小さな国のある星があった。どうやらそこから始まったらしい。


小さな国と言っても国だし宇宙に出る文明がある。波動共鳴体が産出される星なので裕福だし資源もある。その国が星を飛び出して、宇宙に出た。隣の星がその国の一部になって、周りのコロニーもそうなって、次は。もうすぐ半分を超えちゃうから店じまいかなあっていう人がたくさんいて、過疎化した場所もある。「大きい割には寂しいね」とシリカ君に聞かれて、うん……と言うしかなかった。資材を買いに行った専門店街の商店は半分も開いてない。きっともうすぐ、アマノガワはぜんぶその国になるんだろうってよく知らないけど思った。止めてあった宇宙艇に戻ると、カゼノさんが誰かと揉めていた。


 みんなで行ったら浮遊停止禁止で切符を切られるからカゼノさんが残って多少なりとも運転していた。でもなぜかその辺に降りて、他の星の人に責められている。甲皮と大きな角のある昆虫型の人。力持ちだし喧嘩が強くて、格闘技の中継ではあの星の人がみんな投げ飛ばすのがいつものことだった。カゼノさんのことだから「ネット連載でマンモスと戦ってた神様ですか?」とか聞いて怒られているんだろうと思ったけど、どんどん人が増えてきた。長い足でジャンプしたり、一つ多い腕の関節を前にたたんだり、この辺のいろんな星の人。……アマノガワを半分取り上げちゃったドルニクス公国の傘下の人たちだと、一応わかった。いろんな星の人がいるけど、昆虫型の人は現場に送られるらしい。ドルニクス公国はそういうことをするって有名だった。


 カゼノさんもちょっと困ってるみたいで、違反してないですよって言い張っていた。でも最初の角の生えた人がカゼノさんにつかみかかろうとして、カゼノさんは相手の肘を少しだけ上に押して避けた。前に出すことしか考えていなかったから下から押されるとつかめない場所にそれる。たったそれだけなのに、その人は慎重になって引き下がった。他の人たちもみんな一緒に帰って、何があったんですか?ってカゼノさんに聞いた。知らないけど見当はつく、ってまた適当に言う。また喧嘩になったら嫌だから早く帰りましょう、って私もシリカ君も言ったけど、もう少しいようってカゼノさんはのんきに言っていた。だからすぐ後に検問が敷かれて、私たちは通れなかった。


 ほら、早く行こうって言ったじゃないですか!今通ったら怪しいですよ!ってどれだけ言っても、それだと捕まりますよってカゼノさんはミスを認めない。すぐに立ち去ろうとすれば捕まって、こっちが来ないから周りに言い始めたって根拠もないのに。「カゼノさんが言うなら間違いないです」というシリカ君は、ちゃんと中身を聞いていたんだろうか。そういうのよくないよ。カゼノさんって間違ったら言ってほしいタイプだから、私の分までシリカ君に言ってほしいのにそれはわかってくれない。私たちはアマノガワで立ち往生、仕事がなくてよかった!って悲しくなる喜び方をしていた。


 交通量の多い航路で、私たちの宇宙艇はお散歩していた。人目がないと何をされるかわからない。なにせこっちはプレアデスの会社、トラブルを持ち帰って欲しくないはずなんだって。カゼノさんが行くところにはいつもトラブルがあるから気にせず持ち帰らせてほしい。慣れてるし!でもカゼノさんが言うには、「こっちでトラブルを起こして欲しい」らしい。歩きながら説明します、って言われて私たちは宇宙艇を降りた。食料はそんなになかったから買わないといけない。短時間で買わないと、30分以上経ったら10分ごとに15ライムも取られるからいつも食べるパンでみんなもう決めていた。なのにカゼノさんの行くところには、トラブルがある。


 途中にいた人は、やっぱり昆虫型。道端でうずくまっていて、どうしました?ってカゼノさんが聞いた。蜂みたいな姿の女性は、肩を貸してほしいと言っていてカゼノさんは喜んで貸した。生態が違っても美的感覚で言えば地球人型の美人だから躊躇しない。蜂の女性は、こんなことしてもらっていいんですか?私なんてそんなに美人でもないのに……って謙遜していた。お国では女王とかそんなのではないんだろうけど、とてもきれいな人なのに「宇宙人だからきれいかどうかが真逆」という昔ながらの設定でもあるのか自信がないみたい。ベタなのは使いすぎない方がいいよって後で言っておこう。誰にとかはないけど。でもその人は、他にも何か抱えていたみたいで。肩を貸したまま周りに現れたのは、別の星の人。カゼノさんが珍しく、しまった!って慌てていた。その人たちは、体を震わせてものすごい音を出した。私もシリカ君も、耳を塞げなかったカゼノさんも一発で倒れてしまった。ハニートラップって人間しかしないと思ってたけど蜂もするんだ!何かおかしい気がしたけど、倒れる前だから何を思っていたかはよく覚えていない。



「……起きたか?」


 私たちは縛られて、暗い中に転がされていた。呼びかけられる前にカゼノさんは起きていたみたいで、同じタイミングで目を覚ました、ような感じにした。暗い中に別の人がいる。その人はたぶん黒くて、指先にぼうっと光る物を出していた。たぶん持っているんじゃなくて、発光器官だ。


 ドルニクス公国は、もうすぐアマノガワを掌握する。ならば次だ、って何か探していたらしい。これ以上何をするんだろう、もう何も困らないのに。そう思っていたら、カゼノさんがその人に聞いた。怖いんですか?ちょっと黙っててほしい、しゃべるなら一人の時に。


 怖いのではない、合理的戦略だってその人は言っていた。ドルニクス公国がアマノガワを席巻したら、アマノガワで何があったのかと別の星系の人が警戒する。横やりを入れられないように、そういう星系の人はみんな押さえるらしい。……それじゃ終わらないって、私でもわかった。その周りには別の星系があって、その周りにもたくさんある。どんどん大きくなって、どんどん押さえていって、最後にどうするんだろう。カゼノさんはそれを知っているみたいで。


「変えたくないんでしょ?」


 ……今、この人はドルニクスの一番上にいる。だから一番上にいたい。それを続けるためには、変えなければいい。広がって広がって、全部になったらもう動かない。今からアマノガワの外に出て行くためには、アマノガワの外から来た人がトラブルを起こすのがいい。あとはいくらでも、こじらせることができる。ほう、って答えたその人は、ドルニクスの偉い人らしい。これは戦略指揮だから見に来たんだそうで、後ろにはたくさんの親衛隊がいる。……いるのはわかるけど、誰もしゃべらない。人間じゃないのかと思ったけど、人間らしい。支配には屍が必要だ、って怖いことを言っているその人に、カゼノさんがまた。


「続けたいですか?」


 そうやってみんなに言うことを聞かせて、一番上から見ているのは楽しいのかもしれない。でもみんなでトランプをしてババを取り合う方が、よっぽど楽しい。今すぐにはしてくれない人もいるだろうけど、宇宙は広いんだからしてくれる人もいる。暗い中にいないといけないのは、きっとつらいと思うって当たり前に言っていた。撃たれたらどうするんですか。でも変なことを言っているとは思わなかったから、あんまり怒らなかったし焦りもしなかった。うーんと伸びをしたカゼノさんは縄から抜けた。地球人用の縛り方をしているから私もシリカ君も動けないんだけど、簡単に抜けた。カゼノさんは「地球人は本当はこれくらいできる」って言ってた。タコじゃあるまいし。


 せっかく抜けれたのになんで今教えるんだろう、秘密にしてればいいのに。向こうもそう思ったみたいで、何のつもりだって聞いてきた。カゼノさんの言い分は、いつも簡単で。


「縛られてたら、カードが持てないでしょ?」


 あんなことを言っておいて隠し事はよくない。だからもういいかなって。それだけのことで、逆転とかそういうのがなくなった。暗い中からぎりりと銃の引き金を絞る音が聞こえた。カゼノさんは、その人に言っていた。撃ったら、寂しくないですか?銃声は鳴らず、その人は銃を誰かに渡したみたいだった。その後、電気がついた。親衛隊に銃を渡したその人が明かりをつけて、地球人にはこの方がいいだろうって言っていた。やっぱりっていうかなんて言うか、黒いアリみたいな昆虫型。話のわかる人でよかった、っていうカゼノさんは銃が怖くないんだろうか。「避けれるかもしれないし」って避けれないかもしれないんですか!ってびっくりしたのは二、三日後の話。今はそんなことにびっくりしているときじゃなくて、明かりがついたら親衛隊は見渡す限り周りにいた。10人くらいかと思っていたのに0が二つ足りない。それよりもっといるかもしれない。カゼノさんは驚いていなかったから、わかってやっていた。転職を考えようかな。


 ドルニクス公国の執務室で軽食とお茶、その後は公国の元の予定をキャンセルして懇談会になったみたい。カゼノさんは、焦ったり遠慮したりせずに話を聞いていた。でも仕事が全然ないわけじゃないから、私たちはそろそろ行かないといけない。ドルニクス公国は、少し時間がかかるけどり領土を返還していくって言っていた。お互い暇になったら、トランプでも。カゼノさんがそう言って、私たちは領事館を後にした。帰り際、カゼノさんはあの人以外にもトランプに誘いたい人がいるから、後で連絡しますって言っていた。誰だろうと思ったんだけど。


「蜂の人」


 ああ、やっぱり。昔の地球ではここまで生態の違う人を恋愛対象にすると「HENTAI」と呼ばれたはずだ。でも大丈夫、「僕が連絡しますね!」ってシリカ君が言っていたからもう会うことはないだろう。頼りになるなあ。

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