空にはもちろん
空にはもちろん(惑星間探偵事務局KSKリターンズ)
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ミラン・アルタイル。私たちが保護したその子は、地球人型だけど違う系統の生物が進化を遂げた星の人。クワガタみたいな角が生えた女の子だった。文化も食性も全然違うから「もう少し近ければ!」ってカゼノさんが悔しがっていた。生物として近い以外にも、地球人で言えば高校生くらいだから年齢も離れている。5年も経てば文句なく美人だろうけど、5年後にもう一度会えるなんてことはない。
「じゃあ送り先はヒヤデスの近くですね」
会えなくなる原因のシリカ君が「一刻も早く」送り届けようと手を打ってくれた。ヒヤデス星団は商業が活発で、メルクリウス財団が撤退した数少ない星域だ。温暖な気候の星には十分な環境と資源と、人材があったんだけど最近はそうでもない。その原因と関係あるかはよく知らないけれど。
「太陽教団か」
カゼノさんが嫌な顔をした。ヒヤデス星団でたくさん活動している太陽教団は、光る物は素晴らしいと大づかみに言っている。ミランちゃんの故郷はあまり太陽が出ないからそうなるのだと思うけど、カゼノさんが無神経に聞いた。
「なんでこんなことを?」
カゼノさん!って思わず止めた。ミランちゃんは近くのコンビニで万引きして、店を出る前にカゼノさんが止めたから捕まらなかった。ぼーっとしてたみたいですよ、って商品を返した後、カゼノさんは宇宙艇にミランちゃんを連れてきた。お腹が減っているのかと思ったらそういうわけではなく、怖くなって慌てたらしい。怖くなることも、慌てることもないと思うんだけど……ミランちゃんが説明できなくて困っていると、カゼノさんは「わかった」って切り上げた。怒っているのかと思えば、お茶とお菓子はいいものが出てきたから気に入っている。もう会わない方がいいよ。私たちは、宇宙艇でヒヤデス星団のマリエルに向かった。
マリエルは太陽がなかなか出ない。もちろん気候が温暖で生物がいるんだから太陽がないなんてことはない。でも二百年前に大量発生した虫が、空を覆い隠してほとんど何も見えなくなった。嵐の後、少し空が見えるだけでみんな大喜びなのだそうだ。ミランちゃんは宇宙に出て仕事を探したけど、初めて来る場所は何を見てもわからなかったそうで、こういうことに。しばらく母星で休むのがいいと思って、ご両親に届けた。お父さんもお母さんも慌ててミランちゃんを叱ったけど、何も起きてないですよ、びっくりしただけですって止めたらわかってくれた。「二度とこんなことがないように!」って一人怒っているシリカ君をなだめる方が大変で、カゼノさんは宇宙艇でどこかに行ってしまった。
マリエルではあと二ヶ月は太陽が見えることがない。太陽教団なら光源を持っているからいつも照らしてもらうらしいけど、仕事も大変だしお祈りも欠かせない。明かりくらい、って思うのは私たちだけで大変なことだ。バッテリーを置いていってもエネルギーはすぐに切れる。助けにならないし、こういう星だから仕方ないのかなあってカゼノさんを待っていた。海の方に飛んでいって、すぐに帰ってくるとは言ってたけど何をしてるんだろう。教団の人工太陽に照らされた公園で、シリカ君と一緒にカゼノさんを待っていると、ミランちゃんが来た。泣きながら謝っていたので、大丈夫だよって言って座ってもらった。この星は真っ暗。本当は光がほしいのに、プレアデスは光がたくさんすぎて困ってしまったっていうミランちゃんの話で、不思議に思った。こういう星だから、光がないのが普通なんじゃないの?ミランちゃんが言うには誰も普通だと思っていないそうで、明るいところで遊びたいっていつも思っているという。なんでこんな星になったんだろうって思っていたら、海の向こうから雄叫びが聞こえた。何?怪獣?ゴリラとクジラ?水平線の上にうっすら見える影は、遠くてわからないけど何百メートルもある蛇みたいな生き物。鎌首をもたげて上を向いて、そんなのがたくさん出てきた。そしたら、その口に向かって空の虫がどんどん吸い込まれ始めた。
何が起きてるの?って思ったらカゼノさんが帰ってきた。宇宙艇がぶら下げているのは、何かの機械。沖合の島で見つけて、壊しちゃったらしい。こんなに大きいのを壊そうと思ったら手元の武器になりそうなものを全部注ぎ込まないといけないと思うけど、どうやって壊したんだろう。そういえばホームセンターの材料でそれっぽいものを作ったという話も聞いたことがあるけど、あっちはリセットした話だから今は関係ない。
この機械、何かな?ってシリカ君が聞かれて、うーんと構造を見ていた。大きな電極があって、この星には珍しいエネルギー源と、簡単な機械機構と反するような精密なコンピュータ。何かの信号を出すんじゃないかって。電気分解みたいな感じで、溶液につけて使うんじゃないかって言っていた。ちょうど、海水につける感じで……そしたら太陽教団の人たちが飛んできて、カゼノさんを怒鳴りつけた。あなたたちのですか?ってカゼノさんに聞かれて、教団の人たちは服の下から何か取り出そうとしたけど、カゼノさんが止めた。
「みなさんの、神様が見てますよ」
大きな蛇に吸い込まれてだんだん減ってきた虫は、逃げたり食べられたりして合間が見えてきた。その隙間から、光。太陽が見え始めた。あの虫はもともと群れて大陸を渡るけど、天敵になる生物がいれば一気に食べられる。昔危険がないようにと活動を抑制されたあの蛇がそうで、必要以上に活動が減ったのはなぜか誰もわからなかったらしい。太陽が出てきてみんなが大喜び、教団の人たちだけがなぜかへたりこんだ。これからは、いつでも見れますねって言ったカゼノさんは、これ以上は何もしないらしい。わかってしまえば誰がやったって同じ、この星の人たちはきっと賢い。だから大丈夫、ってミランちゃんを見た。ミランちゃんは驚いて、何も言えなかったけどカゼノさんが言った。
「大人になったら、来てくれたら雇うから」
私とシリカ君でぶん殴って、カゼノさんを引きずって宇宙艇に乗り込んだ。この星はきっと良くなるから、無理に来なくていいよ!これでようやくハッピーエンド。




