表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/28

強い人は隅にいる

この回からリブラさんという久我重明が出てくるのだが、名前に困った跡がありリブラさんだったりハリーだったりするが、両方リブラさんだ。

強い人は隅にいる(惑星間探偵事務局KSK)

※※※※※※※※※※※※


 押忍!と胴着の帯を締めたカゼノさん。やったことあるのかなあと思ったら、帯が真っ白。やたら細いから長さが余って、ビローンと落ちていた。あーあ、バカにされてる。私たちは今、仕事の現場にいる。大昔の格闘技を再興した、なんかそういうとこ。


 その昔地球にはたくさん格闘技の流派があった。宇宙開拓時代より昔から1000年ほど忘れられていたのを昔の人が再発見して300年。昔とすごく昔と最近の昔があるので整理しづらい。再発見されたキョクシンという流派を発祥に、たくさんに分かれたうちの一つ。大きな道場を持っていて、いろんな星の人が稽古をしている。たくさんいるからいろんな人がいて、みんな鍛えているからたまにトラブルが起きる。なんでも近くの繁華街がある小惑星帯で喧嘩して、怖い人と関わって館長に脅迫状が送られてきた。狙われているから犯人を見つけてくれ、という依頼。シリカ君が「助けて!って言ってるんだよ」と意訳してくれたのですんなり飲み込めた。最初からそう言えばいいのにな。


 館長さんは人目があるのであまり出てこない。下手に出てきたら刺されるかもしれないし、そうだろうな、ってカゼノさんが言っていた。だから周りを調べようと思ったら道場の関係者である必要があって、一番簡単なのは入門すること。白帯を締めたカゼノさんはやったことがないらしく、みんなとちょっと動きが違う。注意されてもあんまり直らない。先輩の一人が、真面目にやれと怒ってきた。気合いを入れてやる、ってカゼノさんを道場の真ん中に連れていって、実戦稽古をするらしい。押忍、ってついていったカゼノさんは大きく息を吸って広く構えた。ちょっと笑ってるからきっと怒られると思ったら、やっぱり向こうは怒っている。やっちゃえー!と叫ぶシリカ君に黙ってもらった。知り合いだと思われる。カゼノさんの怪我が、重くなくてすみますように。軽いとは最初から思っていない。そしたら端っこにいた人が出てきて、先輩の道場生の肩を叩いた。先輩は、振り向きざまにザク!と音がしてが倒れてしまった。今のって、叩いたの?ナイフかと思った。血が出てないからたぶん大丈夫だけど、刺されたのと変わらないくらい痛そうだ。その、素手で刺した人が不機嫌そうに言っていた。


「お前が敵うか」


 おーっ!と感心するカゼノさんは、いっちょやりますか?ってその人に聞いた。刺されたいのだろうか。その人は、何の嫌みだと怒って端っこに戻った。周りの人たちに、帯の色で何かわかるのか、って怒っていたけどカゼノさんは周りの人に「この帯ちょん切っていいですか?」とか言ってるのでだいたいわかるだろう。どんどん立場がまずくなっていくので、ただの見学だと思われている間に帰ろうかな。そう思っていたら、さっきの人とカゼノさんが一緒に来た。お茶でもしないか、って話らしい。


「恥ずかしいことだ。強くなろうというのに、弱い相手を探している」


 弱い相手を探すのは弱いヤツのすることだ、とリブラさんは言っていた。アンタレス系地球人のリブラさんは、強くなりたいなら体に合ったことをするのがいいとここに来たらしい。いつ果たし状が出てくるのかと怖がっていたけど、「弱いヤツを殴る趣味はない、相手が強いならあんたらと同じだ」とのこと。やるとなったらそうでもないでしょ?って言い始めたカゼノさんは黙っていてほしい。リブラさんは、できればそう言いたいものだって言っていた。私たちのだいたいの事情は察しがついたらしい。


「館長だろ?」


 あの館長じゃそんなもんだろうな、ってあきれたように言っていた。ここの館長がすごかったのは三代以上前、技も流派もだんだん消えていくのは今も変わらないらしい。リブラさんはここに資料や文献があるからいて、勝手に読んで勝手にやっている。後は連中の体裁くらいしかいる意味がない、ってこちらにもつかない方がいいだろうという感じのことをどんどん言う。早く帰りたい。捨てたもんじゃないですよ、ってカゼノさんが言っていたけど、情けは結構と突き返された。そんなことを言われたら、やり合わないといけない。オレは死にたいわけじゃない、っていろいろ主張がおかしい気がする。でも私は文句を言わずに黙っていた。終わってほしいし。リブラさんのお支払いで長いお茶会が終了、「食べないのか?」って聞かれたけどそんなことされたら知り合いみたいじゃないですか!と思ったのは言わずにそのまま道場に戻った。午後の稽古でカゼノさんが大暴れするなんて、思ってなかった。


 どういうわけだかカゼノさんは先輩たち相手に全然容赦しない。他の人みたいな動きをしないのにみんな倒れていく。やってられっか、館長を出せ!って騒いで、道場生がてんやわんや。シリカ君、帰ろうよ!カゼノさんが強くって嬉しいのはシリカ君だけだよ!どんどんやられた後、遂に登場したのは館長……じゃないみたい。リブラさんが引きずってきたのは、誰ですか?


「潰されたんじゃ殺す意味がないからな」


 伸びていたのは、相手の雇った殺し屋らしい。喧嘩相手の怖い人たちは他の組織とつながっていて、この道場の館長を殺したとなったらここで鍛えている人たちがすくみ上がる。数が多いから関係ない人まで口コミで怖がり始めて、コントロールしやすくなる。だから潰される前にいそいで終わらせようとしたらしい。オレはそんなことのためにやっているんじゃない、とリブラさんは殺し屋を帯で縛り上げて警察を呼んだ。その間、カゼノさんと何か話していた。


「悪いな。守るほどの場所じゃなくて」


 ここには大したヤツがいない。だからどうするか、迷っていたんじゃないか?ってカゼノさんに聞いていた。うーん、ってうなったカゼノさんは、あまり考えていないらしい。


「いい場所じゃないけど、いい人がいるみたいだし」


 カゼノさんは一言、リブラさんに向かって押忍って拳を握った。買いかぶるな、って言ってたリブラさんが、嬉しそうな恥ずかしそうな、そんな感じだった。殺し屋からたどれば事件は解決。リブラさんが捕まえたから道場の中で終わっていて、私たちがいる意味はない。リブラさんは、私たちも呼んでお礼を言った。


「ありがとうな。お嬢さん、入門してみないか?細くなるぞ」


 思いっきりリブラさんをぶん殴って気絶させた。カリンカさん、今のはスタイルが崩れることがないという意味で……!とフォローに入ったカゼノさんも、道連れ。道場生たちに、どうやったら強くなれるんですか?と聞かれたから、怒ることです!と答えておいた。なるほど、地球の文献で見たことがある!そういう宇宙人がいるらしいし!ってみんな感心していた。「地球人ではないはずだけどなあ」ってシリカ君が言ってるのは、誰も聞いてなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ