夏の夜に踊る
夏の夜に踊る(惑星間探偵事務局KSKリターンズ)
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色とりどりの屋台と月が飾るプレアデス一丁目公園に、私たちは来ていた。数日前、お祭りの太鼓を叩く人がいなくてKSKに依頼が来た。依頼というか「なんとかお願いしますよ~」という星内会の相談で、やってみたらどうだ?と言われたのはシリカ君。太鼓のバチはいいぞ、と進めてシリカ君を送り出したカゼノさんはたぶん別の思惑がある。シリカ君を見守る、という名目で私とカゼノさんはお祭りに繰り出した。最近のシリカ君は、彼を書こうとしていたのにだんだん出番どころか必要がなくなってきて持て余されているという裏事情があるから、ぜひがんばってもらわないといけない。残念だけど太鼓をいくらがんばっても文字に起こしたら出てこないからあんまり意味ないけど。
浴衣と足袋と草履まで用意したカゼノさんは、団扇片手に屋台を見て回った。お金はないのに私の分の浴衣まで用意してくれた。くれたというか勝手に用意して、来ただけで感激してむせび泣いていた。味を占めてもこれ以上のものは着ませんから気をつけてくださいね。
団扇片手にとうもろこしとか綿菓子とかたこ焼きとか、カゼノさんが適当に買ってきた。お祭りは楽しむのが第一、使いすぎなければいいという信条で結構買う。爪楊枝が刺さったたこ焼きを一つもらって、太鼓の会場を見に行った。広場の真ん中の櫓で太鼓が鳴って、周りでみんなが踊るんだって。これくらい大きくするといいですよ、ってカゼノさんがやってみせてくれた。しぇえ、そんなのできるかな。どんなおフランス育ちでもミーはそんなことしないざんす!って嫌みを言いそうな踊りだ。もうすぐ本番、楽しく踊ればそれでいいって言われて納得して歩いていると、端っこに来ちゃった。戻ろうとすると、知らない人たちに囲まれた。姉ちゃんちょっと遊ぼうや、ってもはや古典芸能みたいなセリフだけど古典になるくらいだから効果的で実際に言われると怖い。見かねたカゼノさんが足を引っかけて転ばせると、相手は刃物を取り出した。わーっ!とカゼノさんが驚いて相手の人はその刃物を突きつけようとした。そしたら、カゼノさんが上げた手がヒュッと風を切って横に流れて、相手の刃物を弾いた。カゼノさんは空中を回る刃物をもう片方の手で捕まえて、刃先を持って相手に返した。しっかり持って、落とさないように、と言われて相手の人たちは帰っていった。いつものことだよね。その後やぐらの周りでみんなで盆踊り、前から盆踊りみたいな動きをするカゼノさんだけど本当に盆踊りするとこうなるんだ。……踊るカゼノさんの背中は少しだけ、さっき刃物を弾いたときの動きに似ている気がした。でもさっき見たのは後ろからじゃなかったから、たぶん見間違いだと思う。
帰り道、シリカ君が「見てくれてました?」ってカゼノさんに聞いていた。ああ、かっこよかったぞ、って答えるカゼノさんはもちろん見ていた。私も見ていた。文字にすると出てこないだけで、ちゃんと見てるんだよ!




