第八話 開催 武闘大会
準備期間を終え、ついに始まる武闘大会。
第七戦隊からは火村桜花と出雲薫の2名が出場する、波乱の個人戦予選が今幕を開けるー
「それではMAA部下大会1日目、スタートです!」
透き通るような青空に隊員達の歓喜の叫びが響く。
ついに始まったMAA武闘大会、その初日。開会式を終え、ついに予選が始まろうとしていた。
個人戦予選はこの闘技場から北西に広がる広大な森林で行われる。制限時間は3時間。その間にできるだけ多くのポイントを獲得する。ポイントは、他の選手の撃破か、《MAA》が放ったEからB危険度の魔物の討伐である。選手には《MAA》の研究部が開発した魔道具の腕輪をつけており、戦闘不能状態になる、意識を失うなどの条件で、決められた地点に転移され、傷を癒す。しかし、闘技場の結界同様効果範囲が決まっており、実戦には向かないとの事らしい。
「え!紅って予選出ないの?」
前を歩いていた火村が驚いて後ろを振り向く。あの時話をして以来、火村は段々と心を開いてくれた。
「さっきも言ったろ?個人戦に出場する戦隊長、主に『七聖』はシード枠でいきなり本戦スタートなんだよ」
「えーなんでーずるー」
今度は出雲が頬を膨らませながら言うこいつが本当に最年長なのか時々分からなくなる
「戦隊長が初めから参加すると、予選で脱落者が出すぎるからだと思いますよ」
呆れ気味に桐生が説明を加える。
「そんなもんかねぇー」
火村はもう対して興味も無さそうに言うそこでハッと気づいたように言う
「ハッ!じゃあ今日菫と紅は2人っきり?!」
すると桐生は珍しく慌てた様子で答える
「あ!いや、言い方!言い方が悪いです!けして私にそのような考えはなくてですね!」
「んん〜?そのような考えってどんな考え〜?」
桐生が顔を真っ赤にして押し黙る
「〜!もう!桜花!」
剣崎も呆れた様子でそのやり取りを見る。
「あのなお前ら。こんな所まで来て騒ぐなよ...」
はーいと火村は愉快そうに桐生は不満そうに応じた。
「さて、火村、出雲。まずはこの予選でしっかり結果を出さねぇと本戦には出れない。緊張するとは思うが、お前らなら大丈夫だ。頑張れよ」
「「はい!」」
そして剣崎と桐生は2人を見送ったあと(神門は人混みに酔って体調を崩したので寝室に戻った)、観客席の方に向かった。中央のグラウンドのようなところには、これまた研究部開発の通信魔道具が置かれていた。巨大なスクリーンで、予選の映像を余すことなく中継するものだ。原理は知らないが東部戦線所属の生産系の異能力者が開発したのだとか。
空いている席を探していると、何やら見知った顔が並んでいるのが見えた。
「あ!紅じゃない!こっちこっち!」
「時間ギリギリ。相変わらずだな」
「全く...昔と一緒...」
「お前らもさっき来たばっかで人の事言えねぇけど?!」
柊、栗田、太刀川、泉の4人だった。
「いつになっても騒がしいなお前らはよ」
「「「紅に言われたくない」」」
なんでこういう時は息ぴったりなんだよ
そしてふと、剣崎が辺りを見回す。
「そういえば、水木は?」
そう言って俺はこの場にいない『七聖』の名を出す
雨宮水木。東部戦線第五戦隊戦隊長で、『七聖』の6人目、《全能の魔女》だ。異能力者ではないが、《MAA》史上最大の魔力量に加え、現在確認されている魔術の全10属性全てに適正があり、それを全て最高水準で操る。挙句の果てにはオリジナルの魔術を開発する、まさに絵に書いたような”天才”なのだ。まあ、性格に少々難アリで、そして何より、
「水木ちゃんがこんな催し来ると思う?今も研究室に篭もりっぱなしだよ」
とんでもない魔術オタクである。
基本的にどの戦線も第五戦隊は主に研究部隊となっていて、戦闘員と言うよりは研究員に近い隊員が多く所属し、日々魔術や魔物の研究をしている。東部戦線の第五戦隊というのは、その研究部の頂点に位置するような部隊だ。そんな部隊なのでもちろん、専用の研究室も設けられていて、雨宮は毎日そこに入り浸り、研究しているいるようだ
「はぁ、まあ仕方ないか。」
すると柊が俺の後ろにいる桐生に気づく。
「あ、あなたはこの前の」
すると桐生は若干緊張気味で1歩前に出、丁寧に挨拶する
「申し遅れましました。西部戦線第七戦隊所属、桐生菫二等級少尉です」
実はこの二ヶ月の間にそれぞれ昇級昇格していた。
桐生と火村は二等級少尉に、出雲は準二等級少尉、椿野は三等級少尉、神門は二等級伍長になった。ちなみに剣崎も一等級中尉に昇級していたりする。
「なるほど、菫ちゃんね。この前はごめんなさいね?試すようなことして。」
「いえ、こちらこそ騙そうとして申し訳ありませんでした。」
この前の中央統制本部でのお互いの無礼を謝罪し、最初こそ緊張していた桐生も早速打ち解けて仲良くなっていた。すると横の男3人が興味深々に話していた
「おい紅、ついにガキに手ぇ出したのか?」
「しかもどうやら1人ではないらしいぞ」
「複数...年下...犯罪臭...」
「何好き勝手言ってんだオメェら!」
あらぬ誤解を生みかねない発言はやめて欲しいものだ。
そんな事をしているうちに予選会場に選手が全員集まったようだ。
「さあ!皆さん準備はいいですか?それでは位置について〜」
出場する隊員たちが構えを取る。
「よ〜い...スタートぉ!」
一斉に隊員たちが闘技場を飛び出し森の中に消えていく。スタートから3分間は隊員同士のポイント争いは無効なため、初めは皆魔物の方を狙うようだ。すると目の前の掲示板に順位と数字、名前が表示される。隊員達のポイントの管理は腕輪が行ってくれるそうで、それと連動してこちらの掲示板も表示されるということだ。
「お!2人とも10位以内」
「いい滑り出しですね」
しかし、本当の本番はここからだということに、俺たちはまだ気づいていなかった
スタートから2分ほど、真っ先に森の奥に突入し、あたりの魔物を狩り尽くした火村は木の上で一息ついていた。
「ふう、これで結構ポイントは溜まったはず」
そう言って腕輪を触るすると空中にホログラムのようなものが映し出される。名前と残り時間、ポイントと現在の順位が表示されている。
「よし!5位だったら中々いいんじゃない?」
下にスクロールすると全体の順位が表示されて、出雲の名前が9位にあることを発見した。
「薫姉もいい感じだね...げ、この前の八塚って人と星詠って人3位と2位なんだけど。1位の人は...ぼうじん?なんて読むんだろ」
現在火村のポイントは60ポイント、そして上3人は80、70前後で1位は97ポイントだった。
ちなみに隊員たちは初期ポイントとして皆10ポイント持っている。
「うわすっご!1位のぼうじんさん?もうすぐ100行くじゃん!アタシも頑張らないと!」
その時アナウンスが入った
『はーい!たった今3分が経過しました!これより対人戦が解放されまーす!皆さん頑張ってくださいね!』
「お、始まったわね、よーしなら私も準備をっと」
その時森の奥で何か光ったような気がした。
「ん?何今の...」
すると次の瞬間恐ろしいほどの数の砲弾のようなものが轟音と共に雨のごとく降り注いだ
「?!何これ!」
間一髪のところで躱したが視界の端に捉えていた数名の隊員は無惨にも砲弾に引き裂かれ、薄い光に包まれて消えた。恐らくスタート地点に戻ったんだろう。つまり
「全員...即死?」
火村は急いで順位の変動を確認する。ついさっき見たばかりだから大きな変動があればすぐに分かるはずだ。そして順位表を見た時、背筋が凍る
「はぁ?何...これ...」
順位表の1位の点数が、300点を超えていた。
アナウンスが入ったと同時、こちらにも聞こえるほどの砲撃音に観客席は騒然とする。
「な、なんですか今の!」
「考えたくねぇが、隊員の誰かだろうな」
すると柊が高笑いをしだした
「早速やったわねあの子!」
剣崎は原因を知ってそうな柊に問う
「おい、今のはなんだ?」
すると柊が自信満々の様子で言う
「今のは私の部隊の子の攻撃で間違いないわ。西部戦線第一戦隊副隊長、防人要準一等級大尉。私の弟子とも言える子よ」
『なんだ今の大規模攻撃は!?一体どの隊員が行ったのでしょうか!?』
アナウンスが流れると同時に、1番大きいスクリーンに1人の隊員が映し出される
そこには薄く赤みがかった茶髪ショートで、眼帯を付けた...右腕が大砲になった少女が立っていた。




