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第六話 敗北と決意

久しぶりの再会から極秘任務を任された剣崎紅。仲間たちと共に優勝を目指すため改めて気合を入れる。しかしその間、第七戦隊のみんなに何かあったようで-?

3人と別れた後、みんなの元に戻ると、ジト目の桐生(きりゅう)に迎えられた。


「ずいぶんと遅かったですね。なにしてたんですか?」


実にトゲトゲしい物言いで言われる


「あはは...色々あったんだよ」


まさか、懐かしいやつらと再会して極秘任務の密談してたなんて言えるはずもなく、何となく誤魔化した。


「そういえば今はお前だけか?他の奴らは?」


すると桐生(きりゅう)は表情を曇らせた


「それが...さっきまで演習場にいて、今は医務室にいます」


演習場は隊員達が自分の魔術や異能の試し打ちだったり、簡単な模擬戦をする時などに使われるところだ。何故そんなところにいるんだ?

するとちょうど医務室の方からボロボロの火村(ひむら)と同じくボロボロの出雲(いずも)が椿野に連れられてやってきた。


「?!どうしたんだお前ら。」


すると後ろから男が2人歩いてきた。


「あれだけ啖呵切っといてこの程度かよ!笑わせんなよな!」


「あんだけ弱いのによく俺らにケンカ売れたな」


どちらも火村(ひむら)出雲(いずも)に向かって言っており、2人が悔しそうに唇を噛む。


「なあ桐生(きりゅう)、何があったんだ?」


「実は...」


すると桐生(きりゅう)は曇った顔のまま話し出した。


時間は剣崎(けんざき)桐生(きりゅう)達と別れた直後に遡る。


「あれ?こーくんは?」


剣崎(けんざき)が離れていくのを見ていた出雲(いずも)が聞いてきた。


「少し用事を思い出したらしいです。すぐ戻ると思いますよ。」


何となくぼかして説明すると天然お姉ちゃんはあっさり納得した


「そっか〜。じゃあ!ちょっとあっちでパフェ食べてきてもいいかな?!」


「...ちょっとならいいんじゃないですか。」


あんまりにもキラキラした目で言うもんだから桐生(きりゅう)も蔑ろにはできず、みんなで食堂に行くことにした。


「ムフフ〜♪美味しそ〜」


「たしかに美味しそうですね!」


ご満悦の出雲(いずも)とちゃっかり混ざっている椿野(つばきの)がパフェを手に歩いてきた。すると椿野(つばきの)が、横から来た2人の男隊員にぶつかってパフェをこぼしてしまった。


「あ?!まじかよ、ベットベトじゃねえか...」


「あ、あの...」


「あ?んだよチビっ子。こんなとこにガキが何の用だ?」


1人は薄い金髪にピアスの色黒、もう1人は背は低めだが顔には大きな古傷がっしりした体格をしていて、2人とも上腕から肩にかけてお揃いのタトゥーを入れている。椿野(つばきの)からすればそうとう怖いだろう。今にも泣き出しそうな顔をしていた。すると火村(ひむら)が間に割って入った。


「ちょっと!芽衣(めい)ちゃんに謝んなさいよ!」


「はあ?どっちかっつーと謝んのはそっちだろうが」


「あんた達がぶつかってきたんでしょ!」


火村(ひむら)が男の胸ぐらに掴みかかり、大きな声で言い争い始めてしまい、周りもザワつきだした。


「ったく調子乗んなよこの(あま)ぁ!」


「お前、誰に喧嘩売ってんのかわかってんの?それに、隊員同士の私闘は隊律違反なのわかってんのか?」


男隊員達の方もだいぶヒートアップしてしまった。止めないと、そう桐生(きりゅう)が思った時には遅かった。火村(ひむら)が高々と叫ぶ


「なら決闘よ!負けたら謝罪しなさい!」


「ほう?言ったな。そっちが負けたら俺らに謝罪しろよな。」


「望むところよ!」


そう言って謎の決闘が始まってしまった。


場所は変わって闘技場。2人の男と火村(ひむら)出雲(いずも)の4人が向かい合っていた。


「ルールは異能も魔術もありで相手が降参または戦闘不能になるまで行うタイマン。負けた方が勝った方に謝罪。これでいいな?」


「構わないわ。早く始めましょう」


周りには騒ぎを聞きつけたギャラリーが多数おり、ちょっとしたイベントのようになってしまった。ちなみに出雲(いずも)は、『芽衣(めい)ちゃんだけでなくパフェまで傷つけて許せない!』と憤慨していた。やっぱり少しズレている。

ここに来るまでに相手の男のことを聞いておいた。

古傷の男は星詠王介(ほしよみおうすけ)。南部戦線第一戦隊副隊長で、等階級は準一等級中尉。異能力者で『星座ノ使者(せいざのししゃ)』という星座に関する異能を扱うらしい。

金髪ピアスの方は八塚悠仁(やつづかゆうじ)。同じく南部戦線第一戦隊の隊員で、等階級は準一等級少尉。異能力者ではないが、炎属性と雷属性、闇属性の魔術を扱うことで有名らしい。

ちなみに魔術には基本四属性である炎、水、風、土の4つと雷、氷、闇、光、空間、無の5つの亜属性がある。それぞれ適正があり、適正の低い属性は上手く扱うことができない。大抵の場合は適正は1属性が普通、2つあれば上等なんて言われている。ましてやただでさえ珍しい亜属性に2つ適正があるのはそうない事だ。

火村(ひむら)の相手は八塚(やつづか)で、出雲(いずも)の相手は星詠(ほしよみ)だ。

お互いが睨み合う中、審判の合図で4人が一斉に飛び出した。


まず先制したのは火村(ひむら)の突撃だった。


「スキル!『爆裂拳(ばくれつけん)』!」


爆発する拳が地面を抉る。しかし、八塚(やつづか)はひらりと躱し魔術の詠唱を行う


「炎属性魔術『炎矢(ファイアアロー)』」


無数の炎の矢が火村(ひむら)に襲いかかる。が、反応が少し遅く、いくつかは躱しきれず被弾する。


「ッ!まだまだ!スキル『爆炎咆哮(ばくえんほうこう)』!」


咆哮が爆炎のようになり、火村(ひむら)から正面に広がる。またしても正面からの大技。八塚(やつづか)からすれば単調で避けやすいことこの上ない。

またしても躱し、火村(ひむら)の後ろに回る。


「たしかに威力は大したもんだ。でも制御がまるでできてない。そんなんじゃ当たらんぞ」


「うるっさい!」


やけになった火村(ひむら)はやたらめったらに技を繰り出す。


「こんなデタラメな攻撃当たらねぇよ。ったくこいつちょっとはやるのかと思ったが、雑魚じゃねぇか。」


そう言って八塚(やつづか)が詠唱を始める


「いいか?力の制御ってのはこうするんだよ。」


そして手を高々と上空にあげる。


「炎雷複合魔術『炎雷(ファイアイズボルト)』」


火村(ひむら)を炎を纏った無数の雷撃が襲う。

複合魔術。緻密な魔力制御を必要とする高等技術で、扱えるものは少なく、魔力消費も激しい。がその分威力は絶大で、ほとんどの魔術師は切り札として隠しておく。それを八塚(やつづか)は平然と放った。どれ程の魔力と魔力制御だろうか。

土煙が晴れるとそこにはボロボロになって為す術無く崩れ落ちた火村(ひむら)が倒れていた。


「スキル『幻影ノ人影(ドッペルゲンガー)』」


初手でスキルを繰り出し、攪乱からの奇襲を狙う出雲(いずも)。短剣片手に煙と分身に紛れ、星詠(ほしよみ)の背後に回る。


「攪乱からの奇襲狙いか!たしかに発想は悪かねぇ。だが、焦りすぎたな!」


振り下ろした短剣が()()()に弾かれた。

するといきなり後ろに振り向き、出雲(いずも)を蹴り飛ばした


「カハッ!?」


後ろの壁まで吹き飛ばされ、出雲(いずも)は混乱を隠せない。


「ど...どうして...?」


すると星詠(ほしよみ)の後ろに12個の星座浮かんでいた


「スキル『水瓶座ノ加護(みずがめざのかご)』このスキルは発動中、俺の全方位にくる攻撃ををフルオートで防御する。相手が悪かったな!俺に不意打ちは効かねぇ!」


すると背後の星座が動き、別の星座に変わって止まる


「スキル『牡羊座ノ加護(おひつじざのかご)』!」


すると先程とは比べ物にならない威力のパンチをもらい、出雲(いずも)は防ぐこともできず沈黙した。


「なんだよこいつら。ぜんぜん弱えーじゃねぇか」


2人揃って医務室に運ばれるのを桐生(きりゅう)は黙って追いかけるしか出来なかった。


そして今に至る、ということだ。


「んで?お前ら最初の約束は忘れてねぇよな?」


2人とも悔しそうに黙っている


「なんだ?まさか言い出しっぺが約束守らないなんて言わねぇよな?」


火村(ひむら)に関しては今にも泣きそうになりながらもゆっくりと絞り出したような声で言う


「ご...ごめんなさ―」


「なあ、そのくらいにしてくれないか」


剣崎(けんざき)が間に割って入る。もちろんこれが正しい事とは思わないが、あまりにも見てられない。


「あ?誰だテメェ」


そして星詠(ほしよみ)達の矛先は剣崎(けんざき)に向く。


「俺は西部戦線第七戦隊戦隊長の剣崎紅(けんざきこう)だ。あまりうちの部下をいじめないでくれ。」


星詠(ほしよみ)たちも戦隊長と聞いて少し身構える。がすぐに元の調子に戻る。


「じゃあお前がアイツらの戦隊長か。部下の指導もできないようじゃあ、ろくな隊長にならねぇな!」


すると後ろにいたみんなが殺意剥き出しで掴みかかろうとしたので、手で静止する。


「ああ、確かに俺の指導不足だ。だから、ここは俺の顔に免じて許してくれねぇか?」


「あ?どいつもこいつも舐めてんじゃねえぞ!」


気に入らなかったのか、星詠(ほしよみ)が睨みながら掴みかかろうとしたとき、後ろから声がかかった。


「こら!王介(おうすけ)悠仁(ゆうじ)!何してんだ!」


そう言って星詠(ほしよみ)の拳を片手で停めた。


「まったく、俺がいない間に一体何してたんだ!あんた!うちのがすまねぇ...」


その男と目が合う。薄い茶髪のマッシュに、黄色と黒のオッドアイの瞳が剣崎(けんざき)を見据える。


「もしかして...(こう)...か?」


「あ!珀治(はくじ)じゃん!」


まさかの知り合いだった。

泉珀治(いずみはくじ)。南部戦線第一戦隊戦隊長をしていて、剣崎(けんざき)の昔の仲間、つまり『七聖』の一人だ。二つ名は《千変万化(せんぺんばんか)》。


「やっぱり(こう)なんだな?ったく心配かけさせやがって」


そう言って目を少し潤ませるあたり、やっぱり口が悪いくせに根は優しいところは変わってないようだ。


「ああ。迷惑かけたな」


「なに、気にすんな。それで、これはどういう状況だ?」


剣崎(けんざき)はことのあらましを説明した。すると(いずみ)は大きくため息をついた。


「ったくこのバカ共は!なんで年下の女の子ボッコボコにするかなぁ?!いくらケンカ売られたからって限度があるだろうが!」


「「はい...サーセン...」」


「俺じゃなくてあの子たちに謝れ!」


さっきまで大暴れしていた2人がすっかり大人しくなってしまった。


「まあまあ、こっちにも非はあるし、今回はこんなとこでいいって」


「そうか?(こう)がいいならいいけどよ」


一応お互いごめんなさいだけ言って今回は手打ちとなった。


「じゃあお前も大会エントリーに来たのか。」


「ああ、なんでも七聖は強制参加だからな〜。めんどくせぇ」


「じゃあ本戦で会うかもな」


「ブランクあるからって手加減しねぇぞ」


「余計なお世話だ」


そう言って俺たちは分かれた。

火村(ひむら)達はその間もずっと黙っていた。余程悔しかったのだろう。


出雲(いずも)火村(ひむら)


2人がビクッと反応する


「お前らが今回やったことは間違いじゃあない。仲間のために怒れる、いいことだ。ただ、実力が伴ってなければ今回のようになる。これが実戦なら今頃部隊は全滅だ。お前らも、それだけはよく覚えとけよ」


みんな俯いてしまった。だから剣崎(けんざき)はあえて明るく言う


「まあ、今回はダメだったが、本番の本戦、予選まではまだ時間がある。それまでに修行して強くなって、見返してやれ。それで万事解決だ」


「「「!...はい!」」」


そう言ってニカッと笑う剣崎(けんざき)を見て、みな強くなろうと決意し、剣崎(けんざき)に対する好感度が上がったのだった。

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