第五話 七聖の再会
武闘大会の受付にきた剣崎たち。そこで偶然にも過去の仲間達と再会する。そしてこの武闘大会には何かあるようでー?
「久しぶり、だな。朱音」
忘れもしない6年前、大戦の最後私は何も出来なかった。倒れる2人に寄り添うことも出来なかった。それが悔しくて、今更だとわかっていながら私はもっと強くなった。忘れられるように仕事に没頭した。でも忘れられなかった。私は大切な仲間を2人も失ったのだと、そう思っていた。でも、今、目の前にいる。いなくなったと思っていた大切な人が、見た目は少し変わっているけど、あの時と変わらぬ優しい目の彼が、今、目の前にいる。
「紅?紅なの?」
「ああ、正真正銘俺だよ。髪はちょっと白くなっちゃったけど」
そう言ってニカッと笑う。その瞬間気持ちが込み上げてきて、気づいた時には走り出し、彼の胸に飛び込んでいた。
「もう!こっちの気も知らないで!...死んじゃったと思ったんだから!もう6年もずっと!寂しかった!」
6年間溜め込んだ気持ちが涙とともに溢れ出す。
「悪かったな、心配かけて。その...ただいま」
「!...うん!おかえりなさい!」
もう泣いてるのか笑ってるのか分からなくなった。でも今は帰ってきた大切な人を抱きしめることを優先した。
ひとしきり泣いた柊と俺は少し場所を移すことにし、建物の屋上に来ていた。2人て並んでベンチに座る。
「それにしても髪真っ白だねー。綺麗な黒髪だったのに。」
「呪いの影響らしい。治るかどうかは分からないんだと」
柊はそっかと少し暗い顔になる。
「今更気にすんなよ。てかお前さっきのあの態度なんだよ。思わず写真撮りそうになったわ」
少々強引だが話題を逸らす
「あ!あれはその...イメージ!イメージづくりのためだから!」
と、恥ずかしそうに慌てるあたり、あの頃と変わらないなと思った。
「というかなんで今回は武闘大会に出ることにしたんだ?お前こういうのあんまり好きじゃないだろ。」
柊はあまり大人数が得意じゃなかったはずだ。このような催しなんて尚更。
「そんなことないよ?私、こういうの好きになったんだ〜。それに他に出なきゃ行けない理由もあるしね。」
他の理由?何か賞品でもあるんだろうか。
「それに関しては僕達から説明しよう」
すると後ろから2人の男が歩いてくる。またしても見覚えのある顔だ。
「久しぶりだな、瑛介、颯」
「ああ、一応心配してたぞ。紅」
この長身にメガネをかけた黒髪の男、南部戦線第一戦隊戦隊長、《鉄血軍神》栗田瑛介。頭がすこぶる良く、軍の指揮なんか天才的だ。俺が1番信用している、気に食わない透かしメガネだ。
「嘘...俺らの中で...1番心配してた」
このフードを被った金髪のクールイケメンは北部戦線第一戦隊戦隊長、《疾風雷神》太刀川颯。物静かだが、意外と気さくな1面も持つ。女性隊員からの人気は絶大だ。
「あ、あんたらも来てたんだ。」
柊がさも今気づいたみたいに言う。
「いや、朝挨拶しただろうが!」
心底憎たらしいといった声色で言う。
相変わらずこいつら仲悪いな。と考えていると永遠にケンカしそうなので話題を切り替える。
「んで?他の理由ってのはなんなんだよ」
すると2人もケンカを止め、真剣な空気に戻る、
「ああ、簡単に言うと、暗殺の阻止だ」
「!?」
栗田が説明を続ける
「数週間前、中央本部に一通の手紙が届いた。内容は『魔神王様に仇なす者共よ、魔の使命に従い、天誅下す』と言った感じで、どうやら最高指揮官の誰か、もしくは複数人を狙った殺人予告のようだ。」
なるほどいたずらですまずにはやりすぎな手紙だ。
「でもそれとお前らが出場することに何の関係が?」
すると今度は柊が口を開く
「最高指揮官達は普段は中央直属の近衛部隊《首なし騎士団》の警護があるから、まず手出しできない。でもそんな警護が外れる瞬間があるのよ。」
あ、と俺もそこで気づいた。
「そう、武闘大会の最終日。個人戦と団体戦の優勝者の表彰は指揮官達が代表で行う。おそらくそのタイミングで暗殺は決行される。」
なるほど全体が見えてきた。
「なるほどな。わざとらしく警備を強化すれば諦めて暗殺に来ない可能性がある。そこで出場者して優勝することで1番近くで守れるって事か。」
「さっすが紅。理解が早い。まあ、混乱を防ぐために暗殺のことを公開してないってのもあるけどね。」
そう言ってニコッと笑う。普段からこんな感じの素で過ごせばいいのに。
「手紙の出し主はわかるのか?」
「宛名は書いてなかったが、文面などから推測するに、《影の箱庭》でほぼ間違いない。」
そこで俺はここ最近の疑問をぶつける
「なあ、前から気になってたんだけどその《影の箱庭》ってなんなんだ?」
すると栗田が説明をしてくれる。
「そっか紅は知らないのも無理ないか。《影の箱庭》はここ何年かで動き出した犯罪組織だ。魔神王の復活を理念としていて、中々の手練が多い。何より、構成員のほとんどが魔術師で、幹部クラスには異能力者までいるって情報もある。」
そこまで大規模な組織だったとは予想外だった。
「ってことはこの前のやつは幹部クラスの誰かだったのか」
ボソッと独り言を言うと柊が反応した
「え?紅、《影の箱庭》と戦ったの?」
「あーいや戦った訳じゃないんだけど、この前のゴブリン討伐の時、死んだはずのゴブリンを操って逃げて行ったんだよ」
するとずっと黙っていた颯が反応する。
「!まさか《死霊術師》に出会ったのか!?」
あまりにも急に来て俺も驚いてしまう。
「ちょっと落ち着けって。《死霊術師》てのはなんだ?」
今度は栗田が口を開く
「一応確認されている幹部クラスには識別名が存在するんだ。そいつもその1人だな。」
なるほど。あれレベルのやつがあと複数人いるとなると中々厄介な組織だな。
「んで、颯は1度《死霊術師》と戦って、逃げられたんだ」
太刀川から逃げるとはほんとに手練なんだろう。要注意だな。
「まあ要するに俺もその極秘任務を手伝えって事ね」
「...理解が早くて助かるよ。」
わざわざ俺にこの話をするということは遠回しにお前も手伝え、と言っているようなものだ。まあ、元々優勝は狙っていたしやることは変わらない。
「まあ、わざわざ僕達が参加するのは、他にも理由があるけどな。」
「?」
「俺らは...久しぶりに...紅と...全力で戦いたい」
「僕らもここ数年でさらに強くなったんでね。力を試すにはちょうどいい。」
そう言って拳を突き出す。本当にこいつらは変わらないな
「ああ、望むところだ」
そう言って俺たち3人は拳を合わせた。あのころと同じように。
「ちょっと?私もいるんだけど?」
むくれた朱音が横から入ってきた。まったく、締まらないな
「じゃあな、次は本戦でな」
そう言って俺たちは分かれた。




