第十六話 それぞれの想い
七聖たちの過去を、真実を知った火村達。何を感じ、何を思うのか。そして決勝トーナメントが遂に始まる────
「それから、俺たちは戦争を終わらせた英雄として祭り上げられたってわけだ。実際はその場しのぎをしただけだけどな...」
そう言って、泉はタバコを灰皿で潰した。
部屋は静まり返っていた。英雄の戦いの一部始終を聞いた全員がそのスケールの大きさに、言葉を失う。何か言わなければと思うけど、やはり言葉が出ない
すると雰囲気を察した泉が少しおどけた口調で言った
「まあ、もう昔の話だ。今更何か言ってもしょうがないし、何か言って欲しい訳でもねぇよ。」
そして剣崎が後ろの5人に向けて口を開く
「俺も、あの後すぐ昏睡しちまって、この話を聞いたのも、1年くらい前目が覚めた時なんだ。だから、俺に何か言う資格なんてないのかもしれないけど...お前らには、知っておいて欲しかったんだ」
その時、火村が目を潤ませながら勢いよく立ち上がった
「紅!あたし、絶対負けないから!もっともっと強くなって、ずっと隣で戦うから!」
桐生達も後に続く
「私達も、もっと強くなります。ですから、ひとりで背負わず...頼ってください」
「そーだよ。私たちもこーくんの大切な仲間なんだから」
「あ、私も、できることが、あるなら...」
「これからもどんどん頼ってください!」
剣崎は目を見開く。そして視界が僅かにぼやける。頬をつたう涙の感触にも気づかないほど、気持ちが込み上げていた。そして、何となく───あいつの姿が見えた気がした
「あぁ、ありがとな」
防人も、自分の隊長に言う
「私も、存分に頼ってくだされ。朱音隊長」
すると柊は嬉しそうに防人を抱きしめた。
「ありがとね、要」
今度は星詠と八塚が言う
「もちろん俺らもっすよ、隊長。なあ悠仁」
「当たり前だ。そのために俺たちがいる」
すると泉は少し照れくさそうに頬をかいた
「...それもそうだな」
その時、アナウンスが響く
『まもなく試合が開始されます。Aブロックの出場者は控え室にお願いします』
火村と八塚がほぼ同時に立ち上がる
「早速出番か」
「見てなさいよ。絶対一泡吹かせてやるから!」
すると八塚は鼻で笑い、おどけたように言う
「ハッ、寝言は寝て言え。10年早ぇよ」
すると火村のこめかみに青筋がピキっと入る
「言ったねぇ?!目にもの見せてやろうじゃん」
早速いがみ合う2人を微笑ましく思う一行なのだった
「まったく、絶対ボコボコにしてやるんだから」
まだブツブツ文句を言いながら火村は控え室に一人で向かっていた。
(とはいえ、強いのは確かだしな〜。どー攻めるべきか...)
すっかり思考にふけって歩いていた時、曲がり角で思いっきり誰かにぶつかった。
「わぁ!?すみません!」
すると、ぶつかった男が優しい雰囲気の笑顔で言う
「かまへんよ。こっちこそすまんなぁ。前見てへんかったわ」
糸目で穏やかに笑うその男は、剣崎よりは少し黒っぽい白髪の長身で、隊服の上に白基調の羽織を羽織っている。
(ん?この羽織どっかで...)
そうして考えているうちに男の電話がなった
「ほなな。これから試合やろ?頑張りや、お嬢さん」
そう言ってスマホの画面を見ながら歩いていく。
(あれ?あたし、今から試合って言ったっけ?)
何となく違和感があったが、火村は特には気にせず控え室に向かった。
その時男は電話を取った
「ワイや...あぁ計画は順調や...安心しいや、誰や思てんねん...あいよ、ほな切るで」
そして電話を切り、不敵に笑う
「さぁ、祭りの始まりや」
『出場者が揃いましたので、只今より!決勝トーナメント1回戦Aブロックを始めたいと思います!』
スタジアムが歓声に包まれる。必然的にアナウンスにもかなりの熱が入る
「なんか暑いんだけど...」
出雲がタオルで汗を拭いながらボヤく
「しょうがないですよ。予選であれだけ盛り上がったんですから」
桐生もそう口では冷静に話しているが、汗が滲んでいる。
「まあ、こりゃ神門は退避して正解だったかもな」
あまりの熱気を既に感じ取っていたのか、入場前に、やっぱり中継で見ると言い出して、寝室に戻って行ったのだ。
すると熱のこもったアナウンスが入る
『それでは早速!選手の入場だぁ!』
そして、相対する扉から2人がゆっくりでてくる
『予選では、あの《歩く要塞》防人要を撃破する大立ち回りを見せた期待の新人!西部戦線第七戦隊所属!火村桜花!』
歓声が上がる。火村も合わせて拳をあげる
『対するのは!炎と雷を自在に操る、南の暴れ馬と名高い《双星》が1人!南部戦線第一戦隊所属!八塚悠仁!』
歓声(怒号)がスタジアムに響き渡る。当の本人は特に気にする様子もなくただ杖を構える。
『それでは!両者準備が整いました!それでは、第1試合!始め!』
2人がほぼ同時に駆け出した




