第十四話 七聖の過去
覚悟を決めた泉は、過去の英雄その真実を語り始める━━━━
《MAA》中央統括司令本部には、数多くの施設が併設されている。中でも訓練室は自身の修練や、新技の実験、簡単な模擬戦など様々な目的で日夜利用者が多い。その日も、数多くの隊員でごった返していたが、一区画、一際激しい訓練(?)をしている集団があった。
その中心には、白黒の髪に色の薄いサングラスをかけ、タバコをふかしながら数人同時に相手している男がいた。
その男に、大剣を掲げて切り込む青年が一人
「おーい珀治〜動きが単調だぞ〜?そんなもん避けてくださいって言ってるようなもんだ」
片手で払われ、大きく後ろに避けながら舌打ちする
「クソがっ!」
するとサングラスの男はタバコをはなし、青年、泉に怒鳴る
「コラ!汚い言葉を使うんじゃねぇの!全く、これだから最近のガキは...」
その時、2本の短剣を持った金髪の青年が、目にも止まらぬ速さで後ろを取り、切りかかる。
しかし、サングラスの男に素手で綺麗に受け止められる
「っ!」
「颯〜お前は殺気漏れすぎ。せっかくスピードで後ろ取ったんだから、最後まで殺気、気配は隠さねぇと意味ねぇぞ〜?」
その瞬間、正面に刀を構えた黒髪の青年が飛びかかる
「は!こっちだぜ!バカ一晴!」
そして切りかかる刹那、男の姿は消え、黒髪と金髪の青年、剣崎と太刀川がぶつかった。
「痛って!?」
「バカはどっちだ大バカが」
瓦木一晴。年は他の同期とは5つ離れているが、皆同級生のように接している。
今は同期の中でも優秀な奴らに手ほどきをしている最中だった。
「何で...攻撃の直前...声上げた...バカ」
「ほんっとだよ!何やってんだよこのバカ!」
「おめーらバカバカうるっせぇんだよ!」
やいのやのと騒ぐ剣崎達を端で眺める柊、栗田、雨宮の4人と瓦木がなだめる
「まあまあ、つまりお前らじゃ束になってもまだ俺にゃ敵わねぇって事だ!」
タバコを咥えたままドヤる瓦木を見て3人が息を揃えて言った。
「「「大人げねぇ...」」」
すると、瓦木に電話がかかる
「はい、俺です...了解、すぐ向かいます」
そう言って電話を切ると、俺たちに向き直る
「悪いな〜。仕事が入っちまった。続きは帰ってからな〜」
そう言い、踵を返した。
「またあの仕事か。」
瓦木には、自分たちとは違う裏の顔が存在する。
極秘隠密部隊《宵闇》。《MAA》の諜報機関で、主に違法魔術師(何らかの不正な方法で魔術を習得した者)や不正異能力者(異能力の覚醒を自覚していながら国に報告せず、異能力を行使する者)の対処や調査、敵性組織のスパイ活動、暗殺など手広く任務を請け負う、《MAA》における対人のスペシャリスト達である。本来所属していること自体、秘匿なのだが剣崎達には瓦木がうっかり話てしまったのである。
では何故瓦木がその部隊に訓練学生でありながら所属しているのかと言うと、彼の異能力が関係する
「いや...!嫌だ...!待ってくれ!本当に何も知らな...」
言い切る前に、逃げ惑うヤクザの男の首が瓦木によってねじ切られた。
「いやー流石だね瓦木くん。こうも簡単に魔道具の密造組織を壊滅させるなんてねぇ。」
そこらにはいくつもの似たような死体が転がっていた。
「...まあ、仕事だし、自分の為ッスからね〜」
そう言ってどこからかランプを手に取る
「...難儀な異能力だよな...」
すると死体から青白い光が立ち込め、どんどんランプに集まっていく。
異能力『魂葬者』。死した物の魂を操る異能力である。使用方法は、その場で使役したり、一度自身の中に取り込んでから使用するなど多岐にわたる。しかし操れる魂には制限があり、人間と魔物の魂のみ操ることができる。しかし魔物の魂は自身の中に取り込むと少しずつ瘴気に犯される為、使役以外ではほぼ使用しない。つまり、
「戦う為には人を殺さなくちゃいけないなんてな」
死体であれば良いということでもなく、死んでから時間が経っていたりすれば、使役しかできない。ランプに吸収できるのは自身が殺した人の魂だけなのだ。
「これも、他の大切なものを守るためですから」
そう言って、他の6人といる時とは打って変わって冷徹な顔でその場を後にした。
それからも彼ら7人は訓練学生でありながら隊員さながらの動きを見せ、3年間の訓練過程を終える頃には、成績優秀者上位7人、通称《七聖》と呼ばれるようになっていた。
その後、奇跡的に全員同じ部隊に配属された。それから3年、忙しくも充実した、平和な時間を過ごした。
そしてその時はやってきた。
『緊急連絡!中央山脈にて、西部第三戦隊の救援信号を確認!西部第一戦隊は直ちに急行せよ!繰り返す!直ちに急行せよ!』
けたたましく隊舎に鳴り響くアナウンス。スピード出世で戦隊長になった剣崎とその副官である瓦木が隊員達に指示を出す。
「ここからは遠いが十分行ける距離だ!すぐに向かうぞ!」
「万が一に備え、補給班、救護班は各小隊に数名ずつ着いておけ!」
慌ただしく準備を進める中、雨宮が不安そうに言う。
「紅くん、紅くん、なんか山脈の方の魔力はすごく嫌な感じがするのです。不気味な魔力が見えるのです...」
雨宮は特異体質で、魔眼と言われる目を持っている。効果は、魔力の流れや性質を視覚的に見ることができる。
「そうか、ありがとうな。警戒しておこう。」
そう言って頭を撫でてやる。すると不安は微かに残るが、安心したように、頬を緩ませた。彼女はいわゆる天才と言われる存在で、色々飛び級しているため、年は剣崎たちよりも一回りほど下だ。故に、つい妹のように扱うことが多い。それでも本人が嫌がることはあまりない。
「紅!大方準備できたぞ〜!そろそろ向かおうぜ〜」
瓦木が準備完了の報告を終える。
「よし、それでは現場に急行する!」
道中、大量の魔物に遭遇。難なく討伐はしたが、明らかに異常な量だった。
(妙だな...この辺りは、ここまで魔物は居ないはずだが...)
救援信号があった場所に向かうとそこにあったのは、
「!まさか...全滅...か?」
第三戦隊の隊員達の亡骸。原型を留めているものも少なく、立っている者は1人もいなかった
「隊長!こちらの隊員はまだ微かに息があります!」
急いでそちらに駆け寄ったが、下半身は完全に欠損しており、とても助かりそうな状態ではなかった。すると、隊員は掠れた声で何か話し出した。
「SS...危険度...《門》...出現...はや、く...に、げろ...やつが、くる...」
そこまで言って、隊員はことぎれた。
「やつ?一体...」
その瞬間、後方で現場を確認していた、隊員達の悲鳴が聞こえてきた。微かだが、戦闘音も聞こえる。
「!」
急いでそちらに向かうと、そこには隊員達が倒れ、既に息をしていない者も数名いた。そしてその中央に立つ存在に目を疑う。
「まさか...あれは...!」
剣崎と瓦木は息を飲む
「魔神王...!」




