第十二話 予選終了
遂に予選が終了し、結果を待つ火村と出雲。
そして隊員達を見下ろす影が━━━
『それでは只今より!個人戦予選の結果発表を行います!』
司会進行兼アナウンス担当の少女が大スクリーンの前でマイクを握る。
「あぁ緊張するなぁ...アタシ落ちてないよね!?」
「どーしよう...私最後ダウンしてたから、絶ッ対ポイント足りてないよぉ...」
火村と出雲が隣で泣き言ばかり言っている。
「2人ともそんなに緊張しなくて大丈夫だって。出雲はまだしも火村は流石に突破してるよ」
「私はまだしも!?」
『それでは!まずはトップスリーの発表です!』
ギョッとする出雲を他所に大スクリーン上にトップスリーが順番に表示される
『まずは第3位!それは...西部戦線第七戦隊所属、火村桜花隊員でーす!』
会場全体に歓声が上がる。同時に、火村にスポットライトが当たる。
「うぇぇ?!3位!?アタシが!?」
すると驚きを隠せない様子でその場に立ち上がる
「よく頑張ったじゃん」
そうして褒めると、火村は少し恥ずかしそうに頬をかいた。
『おめでとうございます!どんどん行きますよー!続いて第2位!西部戦線第一戦隊副隊長!防人要隊員!』
続いて防人にスポットライトが当たる
「ふむ、やはり最後リタイアしたのがまずかったな」
既に反省点を見極めていた。熱心なことだ。
横で、隊長が大喜びしているのは置いておいて。
『そして栄えある第1位は...北部戦線第一戦隊副隊長!氷室冬也隊員です!』
すると、淡い水色の髪の青年が隣の泉に言われて眠そうに立ち上がった。
「眠たい...帰っていい?」
凄く眠そうだった。
『以上が、トップスリーの発表です!その他の30位以内に残った方々も、予選突破おめでとうございます!』
前のスクリーンに30位までの名前が表示される。周囲から落胆や安堵の声が聞こえる中、隣から悲鳴にも似た声が上がる。
「うわぁーん、こーくん!点数足りなかったよぉ〜」
出雲が何とも情けない声で泣きついてきた。最後の最後で他の隊員に追い抜かれ、31位になってしまっていた。
「まぁ、そんな事もあるって。また次頑張ればいいよ」
そうやってなだめていると、火村が何かに気づいたようで剣崎に耳打ちした
「ねえ紅、あの上の人、なんかめっちゃこっち見てくるんだけど...」
そう言われ、火村の視線の先を見る。そこに居たのは、長い黒髪を括り、桜の形の髪留めで前髪を止め、白基調の羽織を羽織った、侍のような風貌の男。その姿に剣崎は思わず息をのむ
「?!なんであの人がここに...?!」
すると火村が不思議そうに聞いた
「え?なに紅の知り合い?」
気づけば、桐生と出雲も何事かと話を聞いている
「まあ、知り合いっつーか、知らないやつはいないっつーか...」
なんで知らないんだよというツッコミは飲み込み、剣崎は口を開く
「あの人は桜愁翠。御三家の一つ、桜家の現当主。《MAA》戦闘部隊総隊長であり、最精鋭部隊、《最後の希望》第一席。まぁ簡単に言うと...現代最強だな」
途端、全員が息を飲む。
現代最強
初めて見る、今の《MAA》のトップ。まるで雲の上のような存在に、思わず身震いする。
「あの人が...最強...」
3人が黙り込む中、剣崎は疑問に思う
(でも、なんでここに?たしか今、《最後の希望》は各地の《門》の攻略で全員海外のはず...何かあったのか?)
《最後の希望》。《MAA》の各戦線の一~六、七戦隊全ての中から選ばれた十三人の精鋭達によって構成される、《MAA》の最高戦力である。
「あれ?でも《七聖》の人はその《最後の希望》に入ってないよね?大戦の英雄なのに」
不思議そうに出雲が聞いた。
「それに関しては私から説明しよう。」
すると後ろから柊と防人が顔を出した
「いたのか。」
「ごめんね。途中から聞いてたの」
すると火村があっと気づいたように声を上げる
「あ!防人さん!」
「やあ、さっきぶりだね。それと私のことは要で構わないよ、桜花。」
「!...わかった!要ちゃん!」
後輩同士で友情を深め合うのを見て先輩二人も微笑ましくなる。
「やっぱりいいね。後輩が育ってるっていうのは」
「...そうだな」
その後お互いに軽く自己紹介して、桐生が本題に移る
「それで、何故《七聖》は《最後の希望》に所属出来ないのですか?」
「分かりやすく言うと、実績不足だね。確かに私達は魔神王を封印した《七聖》なんて言われて英雄視されているけど、あれが私達の最初の大きな実績なんだ。だから経験がまだまだ乏しいってことで、お呼ばれされてないの」
さらに《最後の希望》は、欠員がでなければ再募集されないのだ。殉職や退役等の理由で席が空かなければ新たに迎え入れられることはない。そして、《最後の希望》に選ばれるような人は簡単にはやられないので、何年も変わらないなんてこともざらにある。
「なるほど、そういうことだったんですか...」
みんながなるほど、と納得したところで予選の結果発表が終了した
『本戦は明日!トーナメントの1VS1で行います!皆さん明日に備えて十分に休んでください!それでは!本日の予定は全て終了とします!』
その日はそのまま解散となった。
明日は遂に本戦だと、緊張や高揚で全体的に浮き足立っていた。故に、敵がすぐ近くまで迫っていることにまだ誰も気づいていなかった。




