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第十一話 退屈と面倒

個人戦予選終了間近、退屈に思っていた八塚悠仁は、思わぬ強敵と出会う。

『残り時間30分!個人戦予選は残り30分となりました!皆さん!最後まで頑張ってくださいね!』


いっそうるさい程のアナウンスが、予選の残り時間を知らせる。アナウンスを聞いた八塚(やつづか)は小さく嘆息した。


(結局、大したやつには合わなかったな)


勝負になりそうな防人(さきもり)星詠(ほしよみ)は既にリタイアしており、おそらくもう戻ってこない。火村(ひむら)も、気絶しているので今から八塚(やつづか)と会敵するのは難しい。


(つまんねぇな...)


そう思い、終了の合図を待っていると、ふと、強い魔力を感じた。


(ん?何だこの魔力...近いな)


魔力を感じる方に行ってみるとそこには、辺り一面氷漬けになったところに出た。


「な、なんだこれ」


すると、草むらのところに寝転がっている隊員を見つける。


「おい、あんた。これは一体どういう状況だ?」


すると、淡い水色の髪をした美青年が眠そうに目を擦りながらこちらに向く。


「...誰?もう予選終わり?」


青年は心底気だるげといった感じで聞いてきた。


「あ?まあ、もう終わるが...お前ここで何してんだ?」


するとゆっくり起き上がりながら答える


「昼寝だよ...気温がちょうど良かったからついね...ああ、早く帰りたい。」


そういいながら体に着いた土埃を払う


(なんだ?この覇気のなさ。でも...)


確実にこの氷の惨状を作ったのはこいつだと確信する。


「お前、かなり強いだろ。最後に一勝負どうだ?」


すると青年は静かに八塚(やつづか)を見つめ返し...


「...メンドいからヤダ。」


バッサリ断って歩き出した。思わず八塚(やつづか)も、ツッコむ。


「いや、今ちょっとやる雰囲気だしてたろ!」


青年は心底面倒くさそうに答える。


「今日はもう疲れたから戦いたくないんだよ。じゃあね」


そう言ってスタスタ歩き出した。


「あ!てめぇ!ちょっと待て!」


そして青年の腕を掴み、引き止める。すると、突然空気が凍りつくような気がした


「...汚い手で僕に触らないでくれる?」


その少年から放たれる異様な殺気に気圧され、八塚(やつづか)は思わず距離を取る。


(なんだ!?今の...急に雰囲気が変わりやがった!)


「ようやくやる気になったって訳か!」


そう笑い、八塚(やつづか)は杖を構える。

魔術師とは元来、魔術媒体と呼ばれる道具を使い、魔法陣を描くことで魔術を発動する。魔術媒体には、魔導書型、長杖型、短杖型の3つの種類が存在する。中でも八塚(やつづか)が使うのは短杖型。この魔術媒体の特徴は、魔力の流れを極限まで効率化して、発動速度を早める。だが逆に言えば()()()()である。魔力量や構築する技術は本人の技量に依存する、かなり使い手を選ぶタイプだ。でも、八塚(やつづか)はこの杖を好んで使う。本人曰く、「戦場では速度が命」なんだとか。

そして、八塚(やつづか)は魔法陣を形成する


「雷属性魔術『轟く雷鳴(サンダーボルト)』」


瞬間、青年の姿が消える。八塚(やつづか)の魔術が空を切った。


(?!どこに...!)


気ずけばやつは目の前に姿を現す。そして八塚(やつづか)の腹部に掌を押し当てる。


「スキル『氷結陣(ひょうけつじん)』」


そして腹部から身体が氷始めた。

咄嗟に後ろに飛び退くが、離れても尚氷結は続く。


「クッ!炎属性魔術『燃え盛る剛球(フレイムボール)』!」


自らの腹部に魔術を放ち、氷の進行を何とか食い止める


「あ、避けるなよ面倒臭いな...」


次の技を放とうとするが、身体が動かない。


「雷属性魔術『拘束する電子(パライズスパーク)』」


(動きを制限する魔術...飛び退きざまに放ったのか...器用だな)


「はぁ、面倒臭い」


すると八塚(やつづか)が痛みに耐えつつ立ち上がり、杖を構える。


「だったらさっさと終わらせようぜ!」


お互いが技を放つ、その瞬間


『しゅーりょー!只今をもちまして個人戦予選を終了しまーす!あ、魔力は一時的に制限しましたのでもう戦わないでくださいねー!』


その時お互い魔力が押さえつけられる感覚に襲われる。


「チッ、やっといいとこだったのによ」


「はあ、やっと終わった...」


不満ながらも八塚(やつづか)は杖をしまう。そして青年を呼び止める


「俺は八塚悠仁(やつづかゆうじ)だ!この借りはいつか返すからな」


するとゆっくり振り返った青年は静かに見つめ返す


「...僕は氷室冬也(ひむろとうや)...別に覚えなくていいよ」


そう言ってお互いに踵を返す。


こうして個人戦予選は幕を下ろした。



予選が終了し、隊員達が続々と闘技場に戻ってきていた。火村(ひむら)も傷と疲労で重い体を引きづって何とか帰ってきた。


桜花(おうか)!大丈夫ですか?」


真っ先に桐生(きりゅう)が出迎えてくれる。すると一気に緊張の糸が切れたのかその場に倒れ込みそうになる。するとすかさず桐生(きりゅう)が肩を貸す。


「あ、ありがとう(すみれ)...そういえば(こう)は?」


「ああ、剣崎(けんざき)さんなら後ろに...」


すると桐生(きりゅう)の後ろから見知った隊長の顔が見えた


「おう火村(ひむら)。お疲れ様。」


そして、火村(ひむら)は破顔して、ブイサインを作る


「へへ、アタシ頑張ったよ」



その頃、先程まで数々の猛者たちが激戦を繰り広げていたとは思えない静けさを取り戻した森に、動く人影があった。

その人影は黒い石のような物を地面に置いている。その石の下には...怪しげに光る魔法陣が描かれていた。

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