第十話 リベンジマッチ
強敵との戦闘に見事勝利した火村桜花。その頃、出雲薫は、偶然にも雪辱の記憶と会敵する━━
火村が防人との激闘の末、疲労困憊で気絶したとほぼ同時刻。出雲薫は
「あれ?ここどこだろ?」
完全に迷子だった
殺風景な森の中、何も考えずに魔物を狩りながら奥に進んだ結果、戻れなくなっていた。
「うーん他の隊員見つけてやっつけないと行けないのにな〜」
そしてことごとく他の隊員に会敵しないという偶然も重なり、出雲のポイントは最初に狩った魔物のもののみとなっていた。
もちろんその間にも他の隊員はポイントの変動が続いており、少しずつ順位が下がっている。
(ヤバいよ〜このままじゃ予選突破できなくなっちゃうよ〜)
気持ちばかりが焦る中、ついに人影を見つける。
「あ!やっといた!すみませーん」
すると背を向けていた隊員がこちらに向く
「あ?なんだ?...ってこの前の霧女じゃねぇか!」
そこに居たのは以前ボコボコにされた星詠王介だった
「あ!この前の不良!」
すると星詠は怪訝な顔で言う
「はぁ?不良じゃねぇよ。てか、なんで後ろ向いてる敵に声掛けてんだよアホか?」
その時出雲はハッと気づいた
「た、確かに!」
(ほんとにアホなのかこいつ)
思わず心の中でツッコむ。でもここは戦場。気の緩みは許されない。
「まあ、いいや。雑魚狩りも飽きてきたとこだしなぁ!」
そして星詠の背後に星座が現れる
「スキル『射手座ノ加護』」
そして大量の弓矢が形成され、一気に放たれる。
出雲は避けきれず全て直撃した。
(チッ、全く成長してねぇじゃねぇか。つまんね)
そういい、踵を返そうとした時、辺りに霧が立ち込めていることに気づいた。
(?!なんだこの霧!いつの間に?!)
その時背後から気配を感じ、咄嗟に防御体勢を取る
「スキル『蟹座ノ加護』!」
甲殻類の殻のようなものが星詠の全身を覆う。その外側でギィン!と刃が弾かれる音がした
「うっそ!また防がれた!?」
そしてひらりと霧の中に消える
「さっき俺の攻撃が直撃したのに、なんで動けるんだ?」
思わず口に出た言葉に出雲は姿を見せずに応じた。どこからともなく声が聞こえる
「さっきのね。そもそも私はもう既にあそこにいなかったの。あなたが撃ったのは、幻影だよ。」
声の方向は分からない。まるで霧そのものが喋っているかのような不思議な感覚に、星詠も戸惑いを隠せない。でも、不敵に笑う。
「なるほどなぁ!てめぇも成長したわけだ!いいぜ!勝負してやるよ!」
そして星詠の背後の星座が変化する
「スキル『獅子座ノ加護』!」
星詠を中心に全方位に衝撃波が起こった。周辺の霧を吹き飛ばす。霧の中から出雲の姿が現れる
「この前のリベンジマッチといこうぜ!」
出雲も、再び霧を出しながら答える
「望むところ!」
そしてまたしても辺りに霧が立ち込める
「スキル『幻惑ノ霧』」
そのまま霧の中に姿を消した。
(なるほど、方向感覚を狂わせる霧か。道理でどこにいるのか分からなくなるわけだ。)
冷静に判断し、対処を探る
(なら魔力の気配を...ってそっちも妨害されるのか。なら、本人の気配を探るか)
そして人間が生きている以上、消すのは困難な生来の気配を探る。そして、見つけた
「スキル『水瓶座ノ加護』」
生きているかのような水の流れが霧をかき分け、出雲を捉え、巨大な水の壺となり、封じ込めた
「これは内側から破るのはほぼ不可能の水の檻だ。捕まえちまえばこっちのもんだ!」
そして駆け出したが、捕まえた出雲はニヤッと笑い、煙のように姿を消した。
(しまった!分身か!)
その時、背後から気配を殺し、近ずく出雲に星詠は気づけなかった。
「スキル『煙の毒牙』」
その時何かに刺された。しかし傷はなく、出血もほぼない。
(一体何をされた?...!?)
「グハッ!」
星詠は突然咳き込み、吐血した。視界も揺れ、意識が遠のく感覚に襲われる。
「チッ...毒か...!」
すると霧が少し晴れ、出雲の姿が現れる。
「正解。猛毒だからその場で即死でもおかしくないんだけど、やっぱり一筋縄ではいかないか。」
出雲は苦悶の表情を浮かべる。現状最高火力の毒でも仕留めきれなかったとなれば、もう一度打ち込むしかない。ただ、また不意打ちが成功するか分からない。すると星詠は突然声高らかに笑いだした。
「アッハハ!面白い!まさかここまでとはな!お前の評価を改めよう!出雲薫!」
猛烈な殺意を感じ取り、瞬間的に回避行動をとる。
「スキル!『幻惑ノ霧』!」
そしてまた背後からの不意打ちを狙い、身を潜める
すると星詠の背後の星座が変化する。
「スキル『天秤座ノ加護』」
すると星詠は、構えをとったまま目を閉じた。
(反撃は諦めた?なら今のうちに攻める!)
そして短刀を片手に星詠の背後から攻撃を仕掛けるが、突然星詠がこちらに勢いよく振り向く
「スキル『蟹座ノ加護』」
そしてカニの大バサミのようになった両手が片方が短刀を弾き、もう片方が出雲の右肩を貫いた。
「グハッ!?」
突き刺された勢いでそのまま後ろに飛ばされる。突然こちらの動きを見ていたかのようにカウンターを入れられ、出雲は困惑する。
「『天秤座ノ加護』はな、俺を中心に半径1メートルに入った害意のあるものにフルオートで反応するスキルだ。不意打ちは通用しねぇよ」
痛みで視界が霞む。一時後退し、木陰に逃げ込む。
「こうなっちまえばあとはてめぇを炙り出すだけだ。」
そう言って背後の星座が変化する
「スキル『射手座ノ加護』」
無数の弓矢が現れ、雨のごとく降りそそぐ。手負いの出雲では避けきることはできず、いくつか食らってしまった。
(このままじゃジリ貧だ...でも向こうも毒で限界が近いはず。次で決める!)
実際、星詠も想定外の猛毒に蝕まれ、もう立っているのもやっとだった。
おそらく次がお互い最後の一手。二人の間に緊張が走る。
そして出雲が木陰から飛び出した。
「スキル『幻影ノ人影』!」
先程とは打って変わって大量の分身で、星詠に襲いかかる。
(さっきまでの分身で、本体は魔力量で見分けられると分かった。つまり魔力の多い奴が本体!)
目測で1番魔力量の多い分身に狙いを定めて弓矢を放つ。その瞬間、周りの分身が止まり、煙となった。
「よし!これで...?!」
しかしそこに出雲の姿はなく、地面に矢が刺さっていた!
(魔力量はブラフ!まんまと釣られたって訳か!)
そして背後に気配を感じる。
「それはもう見たんだよ!」
そして振り向きざまに振り払ったがそこに居たのは...幻影。
「何?!」
その時、星詠の胸部を後ろから刃が貫いた
「グハッ...不意打ちも囮、か」
するとそこには、低い姿勢で飛び込んだ出雲が星詠に短刀を突き立てていた。
そして僅かに微笑を浮かべ...吐血した。
「反射的に間に合って良かったよ、スキル『蠍座ノ加護』」
出雲の太ももに星詠の腰に当たる部分から出た尻尾のようなものが刺さっていた。
「あの瞬間で発動間に合うとか...バケモンすぎでしょ」
「それでもこれがギリギリだったんだよ。」
そして、星詠の体が消え始める。
「チッ、まさか俺が負けるなんてな...」
そして観念したように倒れ、光になって消えた。
「や、やった...!」
出雲も後ろに倒れる。そして空に拳を掲げ、誰にとも言わず口にする
「リベンジ...成、功...」
そして体に毒が回り、光になって消えた。
ちなみに、リベンジを終え満足な出雲だったが、自分もやられたためポイントはほぼプラマイゼロだった。そして、順位は35位まで下がっていることにまだ気づいていなかった。
そして個人戦予選の残り時間はわずかとなった。




