第九話 予選開始
ついに始まる武闘大会。まずは個人戦予選が始まり、辺りで激しい戦いが繰り広げられる。するといきなり火村が強敵と対峙する。
アナウンスと共に鳴り響いた砲撃音を皮切りに、各地で次々と隊員同士での戦闘が始まった。
「スキル『射手座ノ加護』!」
無数の弓矢が宙を舞い、次々と隊員を仕留めていく。
「チッ!こんな雑魚共じゃあポイントの足しにならねぇ!強えやつどこだ!」
「雷属性魔術『轟く雷鳴』」
辺りを雷撃が照らし、隊員を焦がしていく。
「この程度じゃあ手応えがないな...この前の爆発娘でも探すか」
強者たちが存分に暴れる中、1箇所だけ季節外れの氷が張り詰める場所があった。そこには淡い水色の髪をした気だるげな美青年と...氷漬けになった複数の隊員がいた
うっすら意識の残る隊員がボソッと誰にともいわず告げた
「聞いて...ないぞ...なんで...こいつ...ガッ
!」
言い終わることなく人程のサイズの氷柱に貫かれる。
「...ああ、ホントめんどくさい、今すぐ帰りたい、帰ってこたつに入りながら肉まん食べたい...」
隊員が最後に聞いたのはそんな恨みがましい愚痴のような言葉だった。
火村が砲撃音の出どころにたどり着いたら、そこに居たのは右に眼帯をつけた茶髪ショートの少女だった。
「え、女の子...?」
すると少女は驚いたようにこちらを向く
「む?先刻の砲撃を食らってなお生きているものがいたのか?それとも範囲外から来たか?」
火村は臨戦態勢をとる。一瞬戸惑ってしまったが、間違いなくこの少女が
「ぼうじんさん?」
「...?」
数秒の沈黙。すると少女が気づいたように大笑いしながら答えた
「アッハハハハ!そうか、ぼうじんか!クククッ。いやーすまない。私の名前は確かに読みにくいよな。私の名前は防人要だ。西部戦線第一戦隊の副隊長を務めている」
すると火村は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら消え入りそうな声で言う
「あ、いや...ごめん。読めなかった...」
防人はなんて事ないように笑い飛ばす
「構わないよ。それより、君は?」
「ああ、アタシは火村桜花。西部戦線の第七戦隊所属だよ」
「ああ、あの新設部隊の。ということは王介や悠仁に喧嘩を売ったってのは君らかい?」
火村は少し苦い顔になりながら思い出したように言う
「ああ...まあ、そうだよ。もしかして結構有名?」
「いや、単にあれらとは同期でね。たまに会って話をしたりするんだよ。その時『面白いやつがいる』って2人揃って言うもんだからどんな子なんだろうと思ってね。」
すると突然防人の右腕が銃に変わる。
「!」
「スキル『身体兵装:右腕部、M4アサルトライフル』」
撃ち出された銃弾は火村を捉えることはなかったが、後ろの木々をなぎ倒した
「なるほど、これくらいは避けるか。ならこれはどうだい?」
すると今度は両腕が同型のアサルトライフルに変化する
「『左腕部、M4アサルトライフル』」
二丁のアサルトライフルが森の一角で咆哮した。
「朱音の弟子だって?」
剣崎は怪訝そうに聞く
「まあ、私が面倒見てるってだけで何か教えてるわけじゃないんだけどね。」
柊はそのまま続ける
「あの子の異能力は『兵装者』。体の一部を銃火器等の兵器に変える能力で実際の兵器を元にしてるらしいわよ」
「なるほどああいうことか」
ちょうどスクリーン上に火村と戦う防人の様子が映し出された
「あんなん、もう歩く武器庫じゃねぇか」
すると柊は苦笑する
「武器庫なんてもんじゃないわよ...みんなは歩く要塞って言ってるわ」
「ほんっとキリがない!」
無数の銃弾を避けながら火村は叫ぶ
「そんなこと言いながらずっと避けているじゃないか。大したものだよ」
防人は涼しい顔で言う。
「クッソ!まずはあの銃をどうにかしないと」
木の影に隠れながら火村は思考を巡らせる。相手は遠距離攻撃メイン。接近さえすればこちらに分がある。魔力量を考えて一気に決める結論に至った
そして勢いよく木の影から飛び出した。
「なんだ?もう諦めたのかい?」
そう言って照準を合わせる。
火村も集中力を極限まで上げる。
...ここだ!
そしてアサルトライフルが咆哮する刹那、スキルを発動する
「スキル『爆進駆動』!」
爆発の推進力を使って高速で移動する。そのまま銃弾を躱しつつ超接近した。
(急に速度が上がった?なるほどこれは...!)
そして火村は高速の勢いのままスキルを繰り出す
「スキル!『爆裂拳』!」
(手応えあり!このまま一気に...!)
すると防人から攻撃が飛ぶ。直撃はまぬがれたが僅かに食らった。
(は?直撃したのになんで動けるの?)
すると爆煙の向こうから現れた防人は武器が変わっていた。
「スキル『身体兵装:右腕部、耐爆装甲。左腕部、コンバットショットガン』」
左腕は近距離用のショットガン、右腕は爆発に耐えるために作られた盾に変わっていた
「そんなんありぃ?!」
『爆進駆動』の勢いそのままに後退。
「今のはいい攻撃だったかな。私が銃ばかり使うから白兵戦は苦手だと思ったのだろう。だが残念。私もそれはよくわかっているからね。対抗策ももちろんあるさ。」
そして状況は振り出しに戻る。銃相手に遠距離では不利。かと言って近ずいても攻撃はほぼ防がれる。
どうしたものか、その時ふとひとつの作戦を思いつく。
(一か八か、やるしかない!)
そして火村は低い姿勢で攻撃を仕掛ける。
「なんだい?もう諦めたかい?」
両腕をアサルトライフルに戻した防人はまた弾幕の雨を降らせる
(クッ、もう少し...!)
依然、低い姿勢で逃げ回る火村に防人は少し違和感を覚える
(いつまで逃げ回るつもりだ?体力だってもう限界だろう。一体何を狙っている?)
周囲に意識を集中するが、自分の攻撃による瓦礫ぐらいしかない。
(本当に無策なのか?だとしたら期待外れだな)
防人は星詠と八塚とは訓練校時代の同期で、よく連絡を取っており、火村のことも聞いていた。話を聞いて密かに期待をしていたのだ。
「そろそろ終わらせるとしよう」
そういい、武器を変える
「スキル『身体兵装:右腕部、八八ミリ徹甲弾戦車砲』」
右手が身の丈程の大砲に変わる
「私の手持ちの兵器の中で最も早く、火力の高い大砲だ。これで終わりにしよう。楽しかったよ」
そういい発射する直後、火村の顔が笑ったのが目に入った。
「今だ!」
そう言って火村は動きを止める
「スキル『擬似爆弾』!」
瞬間、周囲の瓦礫が一斉に発光。直後に爆発を起こす。
(!?、なるほど!瓦礫に魔力を込め、自身が操る爆弾に変化させていたのか!つまり、あの低い姿勢は瓦礫を作るための!)
そして咄嗟に両手を『耐爆装甲』に変化させ防御体制をとる。防御は間に合っただが、土煙が晴れると、そこに火村はいなかった
「!?どこに...!」
すると頭上、眩く光る火村の姿があった
「この技はさ、デカめの溜めがいるからどうにかして隙を作りたかったの。」
その時、防人体は爆破の衝撃で一時的に硬直していた。これでは避けることは出来ない
「喰らえ!スキル『爆裂螺旋砲』!」
爆炎の渦が飛来する。
「なるほど、先刻の小規模爆発はここまで想定した攻撃か。これは参ったな」
切り札かと思えた技はブラフで、本命の攻撃を後に控えていた。
すると困ったように微笑を浮かべ、爆炎に飲まれた。
土煙が晴れると、全身に火傷を負い、一部体も吹き飛んだ防人が木に寄りかかって倒れていた。
「ハハ、参ったな、まさか私が最後まで生存出来ないとはな。君の勝ちだ。おめでとう」
そこに火村が歩みよる
「なんか結構ゴリ押しだったけどね」
「そんなことはないさ。見事私を翻弄し、撃破した。十分さ。それに、この負傷では復活しても試合復帰は間に合わまい。ここでリタイアだ。」
火村は何か申し訳なくなり思わず謝罪する
「なんかごめんね。やり過ぎたかな」
すると防人は少し怒ったように言う
「その謝罪は敗者への冒涜だ。気持ちは嬉しいが、心の内に留めておけ。なに、私が未熟だっただけの事だ」
そして今度は優しい笑顔を浮かべて言う
「君は強い。誇っていい。私を倒したのは紛れもなく君自身の実力だ。どれだけ努力してきたのか私にも伝わって来たよ。」
「!...うん、ありがとう」
そう言って最後に笑い、防人は光を放ち消えた。スタート地点に戻ったのだ。
「これでポイントも大幅アップかな?」
そういい、順位表を見る、するとその順位は一気に2位まで上昇していた。
「やった!めっちゃいいじゃん!あれ?でも1位は...あれ!? 」
まだ1位には防人要の名前があった。この予選では隊員を倒すと、その隊員が所持していたポイントは半分にされ、もう半分は倒した隊員に配分されるという仕組みだ。なのに何故まだ1位なのか、そこでハッと思い出す。
「そういえばこの人、倍以上点差あったんだったね。だからあんな余裕そうな顔してたのか」
最後に見た顔を思い出し、苦笑する。
「薫姉は大丈夫かな」
順位自体は30位以内。予選突破ラインにはいる。だが何があるか分かったもんじゃない。
その時急激な眠気に襲われる。
「あ、大技使いすぎて、魔力が、」
魔力を大量に消費するスキルの連発。それに戦闘の疲労も相まって火村は限界が近ずいていた。そうして、その場に倒れ込み、そのまま意識を失った




