表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

八月二日 マーブルからジョシュアへの手紙

 拝啓ジョシュアさん。

 今はどこにいるのでしょう。季節はすっかり夏ですが、暑さに文句を言ってないですか?


 この季節になると、みんなで乗った船の旅を思い出します。ゴウくんの乗り物酔いがひどくて、大きなイカの魔物に襲われて。

 大変だっけど、あのとき感じた潮風や夕焼けの美しさは、わたしにとって一生の宝物です。


 すいません、関係ない話を。

 本題です。歴代勇者と魔王の出現について、やっとまとめることができました。


 魔王の出現時期は一定ではなく、前の魔王が倒されてから短いときで一〇〇年、長いときで四〇〇年ほどの空白があったようです。この違いの原因は不明です。ちなみにわたしたちの前は、二〇〇年ほど遡るようです。


 ジョシュアさんの予想通り、歴代の勇者一行が魔王討伐後、どのような人生を歩んだかの記録はどこにもありませんでした。

 わたしたちのような問題に直面したのか、まったくわかりません。

 

『この世界では大昔から、平和をおびやかす魔王が生まれます。魔王はおそろしい魔物を率いて、世界中の人々の命をうばいます。

けれど必ず、女神さまに選ばれた勇者が現れ、強い仲間たちと共に魔王を倒してくれるのです』


 世界中に伝わるおとぎ話にあるように、魔王は太古から現れ、そのたびに勇者と仲間たちによって倒されてきました。この繰り返しから、魔王を災害のようなものだと言う研究者もいます。


 でも歴代勇者の余生と同じように、初代魔王と勇者についての詳しい言い伝えはありませんでした。残る可能性は文化財指定の書物なので、今度閲覧申請を出してみます。


 さて、ここからはわたしの仮説です。

 わたしは魔王は世界そのものから生まれた存在、つまり世界の一部なのではと思うのです。


 ただ世界を創った女神様にとって、その出現は予期せぬものか、少なくとも望んで生まれたものではないのでしょう。だから勇者という薬を作り出す。そして魔王という病を治す。


 仮にこれが正しかったなら、わたしは魔法使いとして、瘴気という力がどうしても気になるのです。


 以前見つけた女神様について書かれた本に、こんな記述がありました。


『女神様は人々に力を分け与えた。それは風となり火となり、水となり土となり、雷となり氷となり、奇跡となる。世界の力であった』


 火や水といった要素は魔法に繋がるものであり、人々に与えた力とは魔力だと推察できます。

 一方で魔王の瘴気は破壊、腐食、錯乱、弱体、魔物召喚など性質が異なります。

 

 なのに、どうしてあんなに似ているのでしょう。

 まるで魔力が無理やり変異させられたり、捻じ曲げられたような印象を受けるのです。

 まるでだれかを呪っているような、でも愛しているような不思議な感覚が瘴気には……。


 すいません、まとまりがなくて。

 でも「とりあえず思いついたことを書け」と言ったのはジョシュアさんなので、乱文も許してください。


 そうそう。古文書を調べていて、面白い記述を見つけたんです。

 どうやら大昔、この世界には人間の他にも様々な種族がいたようで、その中にエルフと呼ばれる人々がいたらしいんです。

 尖った長い耳、スラリとした長身。輝く金髪か銀髪で、みんな美形なのが特徴だそうです。


 どうですか? ジョシュアさんに似てません?

 エルフたちはものすごく長寿で、千年以上も生きていたそうです。もしかしたらジョシュアさんも、とっても長生きかもしれませんね。


 長生き、してくださいね。

 わたしもカルミア学長みたいな素敵なおばあちゃんになりますから、ジョシュアさんもいっしょに年を取りましょうね。


 では、また。

 近くにいらしたら、絶対に会いに来てくださいね。こちらの夏は過ごしやすいですから。


 マーブルから尊敬と友情を込めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ