File11 -学術研究の端緒
いらっしゃい。
ん? 資格取得……?
いきなり何の話だ。
あぁ、会社で奨励されていると。
私が役に立てると思うかい?
あくまで話をするだけだよ。
気分転換か、なら良いだろう。
タイトルは「学術研究の端緒」。
◇◆◇◆◇◆
君は幽霊しか入学できない学校を知っているかい?
ふふ、そうだ。
どこぞの歌とは違いお化けが行く学校だ。
その名も『国立那由多大学』。
詳しい場所も知っているんだが、近畿地方とだけ言っておこう。
彼の大学は1907年に現代形而上学理論の祖、阿田中 龍一郎が設立してね。
今も学長として辣腕を振るっている様だ。
様々な学部があり、在籍者は日夜問わず活動している。
どうやら研究がとても楽しいみたいだ。
幽霊だから活気があるというのも変な言い方だが、やる気に満ち溢れていてね。
有用な論文も多数出している。
『グー=スーテマズ有機論と活用』や
『ドンクル細胞モデルの神霊医学における応用』なんかは特に有名だ。
そんな不思議な大学。かといって情報がないわけではない。
公式ホームページが稼働してるよ。
更新も頻繁に行われて、事務方も精力的みたいだ。
……ホームページがあるなら所在地がわかる?
もちろん地図も載ってる。
先程言ったろう? 近畿地方だと。
ただ、ホームページ記載の住所は実際には湖があるだけなんだよね。
入学や就職の方法?
一応パンフレットはここにあるんだが……。
ただ、一つ言えるのは。
今年度の入学・教員採用試験はもう終わってる、という事だ。
期待していたなら残念だ。
今年度は32人が入学、有体幾何学の教員が2名。
その情報も載っていたから、後で見てみると良い。
ああ、そうだ。
以前オカルト雑誌の記者が検証として実際に入学したようでね。
その記者は『パンナコッタの軍事利用法』という論文を書いていたみたいだ。
ただ……。
記者も含めてだが、卒業や退職の情報は一切ないんだよ。
それほどに生活が楽しいのか、はたまた他の要因があるのか。
正直なところ、私も気になっているんだよね。
◇◆◇◆◇◆
さて、今回は如何だったかな?
タイトルか。
端緒は「物事の始まりやきっかけ、手がかり」という意味がある。
それに学術研究を冠しただけだ。
死んでからこそ始まる学術。
勉強に終わりはないということだ。
資格勉強あるんだろう? 頑張り給えよ。
……そうだ、先程のパンフレットなんだが。
君にあげるから、入学したら理由を教えてくれないかい?
★那由多大学 入学案内書(抜粋)★
ご入学、誠におめでとうございます。
当学は、各界より志ある者を迎え入れることを何よりの誇りとしています。
所在地:公式ホームページをご確認ください。
アクセス:GPSに従って移動してください。なお、通信環境は保証できません。
授業概要(一部抜粋)
未練と業:初級
有体幾何学Ⅰ:霊体の構造解析と布置
現代霊法入門:法体系の再構成と冥界適応
ご注意:
一度入学された場合、退学・転校・休学はいずれもご遠慮いただいております。




