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第9話 再会

ここまでのご愛読ありがとうございます。

少し小休憩します。

ナナとの別れを済ませた一行は、森を抜けた先の広場で、 野宿の支度をしていた。焚き火の炎が小さく揺れる中、ふと誰かの足音が近づく。


「……マルクさん……っ!ですよね?」


静かな声が響く。マルクが顔を上げると、そこに立っていたのは長身の青年だった。涼やかな目元と優しげな声は、どこか懐かしさを感じさせる。


「……フラッツか」


マルクの声が震える。焚き火越しに顔をじっと見つめ、そして、やがて微笑んだ。


「……よかった。無事だったんですね」


「うん。僕も、君が生きてて安心した。まさか、こんな形で再会するとは、……よく生きていてくれた」


少し距離をとった位置で、ルキとルミナが二人のやり取りを見ていた。ルキは焚き火の明かりの陰からマルクの方をちらりと見て、小さくつぶやく。


「……誰だ、あれ」


ルミナは少しだけ警戒するように目を細めていた。


マルクがふと振り返る。

「ルミナ、ルキ。紹介するよ。彼はフラッツ。僕の後輩みたいなもので、アリヴェルにいた頃、一緒に戦っていた」


フラッツは微笑み、ルミナとルキに頭を下げる。


「はじめまして。フラッツといいます。……しばらく、ひとりで旅をしています」


「私はルミナ……よろしく。こっちはルキ」

とルミナは挨拶をする。


ルキは何も言わず、じっとフラッツを見ていたが、やがてぽつりと口を開いた。


「……なんか、雰囲気……マルクに似てるな」


その言葉にフラッツは少し驚いたような表情を浮かべたが、やがて笑う。


「そう言われたの、初めてです。でも、光栄ですね」


マルクも少し照れくさそうに笑い、焚き火の横に腰を下ろした。


「フラッツ……今は何をしてるんだい?」


「今は……ある人を探していて。その人の名は

ーーガンツ。小さな頃、村が妖魔に滅ぼされた時、生き別れた僕の兄なんです」


「……ガンツ?」


「ええ。帝国でかなりの地位にいるらしいです。でも……僕は、まだ兄が本当に心から帝国に仕えているとは思ってません。だから……いつか、会って、確かめたくて」


「そっか……そういうことだったんだ」


しばしの静寂。焚き火がぱちりと爆ぜる音が響く。


「一晩だけになるかもしれないけど、ここで一緒に過ごさないか?」


「ありがとうございます。……遠慮なく」



ーー静かな夜。四人の間に、少しずつ、確かな絆が芽生え始めていた。


夜が深まり、焚き火の灯りが静かに辺りを照らしていた。簡素な野営ではあったが、久々に囲む温もりのある食事に、空気はどこか穏やかだった。


「マルクさんは、これからどこへ向かわれるんですか?」


ふいにフラッツが問いかけた。穏やかな口調だが、その目はまっすぐにマルクを見ていた。


マルクは一瞬だけ視線をルミナとルキに送り、それから言葉を選ぶように答える。


「しばらく、各地をまわってる。……力を蓄えて、いつか、帝国に抗うために」


その言葉に、焚き火の炎が揺れた気がした。


「……やっぱり、そうですよね」


フラッツは微笑んだが、その笑みに、少しだけ複雑な陰が差していた。


「僕も……あの日、アリヴェルが滅びて、何が正しいのかわからなくなりました。でも……マルクさんの目を見たら、少し思い出せた気がします。僕も……剣を抜く理由を」


「フラッツ……」


「でも……僕は、もう少しだけ、一人で旅をします。兄の話を聞いてくださり、ありがとうございます……また、きっとどこかで会えますよね?」


マルクは迷いなくうなずいた。


「ああ。必ず」


その様子を見ていたルキが、ふいに口を開いた。


「……なあ」


「はい?」


「お前、マルクの弟子か?」


フラッツは少し驚いたように目を瞬かせてから、穏やかに首を振った。


「……いいえ。僕は弟子ではないよ。でも――ずっと憧れていて、いつか越えたいと思ってるよ」


ルキはにやりと笑って言った。


「……俺も同じだけど、負けないぜ?」


フラッツも目を細め、静かにうなずく。


「……望むところだよ」


マルクに憧れると言うフラッツに、ルキはどこか対抗心を燃やしていた。

そのやり取りに、ルミナは微笑みながら小さくつぶやいた。


「男の人って、ほんとすぐ競いたがるんだから……」


だがその声は、どこか温かい。焚き火の音とともに、夜は静かに流れていった。


そして翌朝。


「……そろそろ、僕は行きます」


フラッツは荷を背負い、三人の前で軽く頭を下げた。


「また……きっと、会いましょう」


「ああ、気をつけて」


「無理すんなよ、フラッツ」


ルミナは何も言わず、ただ静かに見送っていた。彼女は初めて会ったばかりの青年の背に、不思議と心を預けていたような気がした。


こうして、束の間の再会は終わり、三人は再び旅を続けることになる――それぞれの決意を胸に。

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