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第5話 共闘 (前編)

新たな出会いの物語の前編です。

後編もすぐに上げますのでよろしかったらどうぞ。

姉との別れを終え、三人の旅路が始まった。


ーー青年騎士マルク、魔法使いの少女ルミナ、そして小さな剣士見習いルキ。

その道行きは平穏とは言いがたく、女子供を連れた隊は格好の標的となった。


「女とガキ……いいカモだぜ!」


日が傾きかけた山道に、物騒な声が響いた。

姿を現したのは、ボロ布のような装備を身にまとった五人の盗賊達。


「数じゃ勝ってるな!」

そう叫ぶと、盗賊たちはばらけて三人に襲いかかる。


「くっ……!」


ルキは震える手で剣を握る。視線の先には、自分より一回り大きな盗賊がいる。

息を呑みながらも、足を踏み出す。


「うおおおっ!」


 打ち合いの末、ルキはぎこちないながらも防御と攻撃の基本をこなし、見事に相手を倒した。


「……や、やった……!」


だが、勝利の安堵も束の間。もう一人が背後から襲いかかる。


「うわっ……!」


寸前で剣を構え直し、振り返ると――

そこには、杖を構えたルミナの姿があった。


「炎よ燃えろ!」


彼女の手から放たれた炎が盗賊を焼き尽くす。

盗賊は地面に転がり、うめき声を漏らした。


「はあ……もう……」

ルミナは息を整えながらルキに近づく。


「油断しないの!」


「わ、わかってるよ……!」


二人は安堵しマルクを探す。


「あれ……マルクは……?」


同時に振り返った二人の目に映ったのは、淡々と剣を納めるマルクの姿だった。


「……え?」


足元には、気絶した三人の盗賊が、地面に無様に転がっていた。


「終わったのか……?」


「いや、始まる前に終わってたのかも……」


「ふぅ……少しだけ手こずったよ」


マルクは涼しい顔のまま、肩の埃を払った。

二人はその姿を見て、思わず目を見合わせる。


(やっぱり……マルクはすげえや……!)


ルキがそう思ったその時――マルクはふと二人を見て、僅かに微笑む。


「二人とも、上出来だったよ」


「……え、へへ」


ルキは頬を赤らめながら、ルミナも小さく微笑んだ。

心なしか、彼の言葉が何よりの褒美のように感じられた。


夜――。

焚き火のもとで野営をしていた三人。

ルミナが鍋をかき混ぜ、湯気とともにいい香りが漂う。


「できたわ。ーー召し上がれ」


彼女が手渡したスープを、ルキは一口食べて目を見開いた。


「う、うめえ……! こんなの、食べたことねえ!」


「ふふ、そう? これでも料理は、得意なの」


ルキの顔はほころび、次々と皿に手を伸ばす。

マルクも一口食べてうなずくが、あまり表情は変えない。

しかし、ルミナは彼の様子をちらちらと見て、どこか嬉しそうに微笑んでいた。


そんな中、ルキはふと手を止め、鍋の湯気の向こうを見つめた。


「……姉ちゃんの料理を、思い出すな……」


その呟きに、ルミナはそっと顔を伏せ、そして微笑んだ。


「……私のこと、お姉ちゃんだと思ってくれてもいいのよ。辛いときは、そばにいるから」


ルキは一瞬黙ったが、やがて顔を上げて照れくさそうに言う。


「ありがと。でも……姉ちゃんのほうが、もっと美人だったけどな」


「ーーなんですって!?」


ルミナはムッとして頬を膨らませるが、ルキは笑っていた。


それを見たマルクの顔にも笑みが溢れていた。


 マルクが水を汲みに行くと言って場を離れると、ルミナの視線は自然と彼の背を追っていた。


 「……マルク」


 ルミナの声はかすかで、しかしどこか名残惜しさが滲んでいた。


 そんな様子を隣で見ていたルキが、興味深げにルミナを見上げる。


 「なあ……ルミナは、マルクのこと好きなのか?」


 唐突な問いに、ルミナはビクリと肩を跳ねさせ、すぐさま顔を真っ赤に染めて否定した。


 「そ、そんなわけないでしょっ!」


 「ふーん……」


 (めちゃくちゃわかりやす……。)


 そんな微妙な空気を引きずりながらも、三人の旅は続いていく。


 次の目的地に向かう途中、三人は小さな村で一泊することにした。宿で食事をとりながら、村人たちとの会話を楽しむうちに、自然と耳に入ってくるのは、周囲の治安にまつわる噂だった。


 「この先の谷には、気をつけたほうがいいですよ。昔から盗賊が出るんです」


 宿の主が言うと、近くの席にいた若い娘がふと口を挟んだ。


 「でも、その中にね……ペガサスに乗った、とても素敵な人がいるの」


 ルミナが驚いたように聞き返す。


 「素敵……って、盗賊なのに?」


 娘はこくりと頷いて、声をひそめた。


 「わたし……こないだ、山道でその盗賊たちに捕まっちゃったんです。怖くて、どうなることかと思ったけど、その人だけは無理やり何かすることもなくて、夜のうちにそっと逃がしてくれたの」


 ルキが疑わしげに眉をひそめる。


 「本当かよ、それ……?」


 「本当です。顔立ちも、すごく整ってて……」


 娘はぽっと頬を赤らめて、小さく呟く。


 「あの人なら……また攫われてもいいかも、なんて……」


 その言葉を聞いて、ルキはため息をついた。


 「……はぁ、世の中どうかしてるぜ」


 谷に差しかかる頃、一行は険しい山道に足を踏み入れていた。


「……このあたりだな。……盗賊の出るって噂の場所は……」

ルキが周囲を見回しながらぼやく。


「気を抜かないで。こういうところに限って、罠が仕掛けてあるものよ」

ルミナも警戒しつつ、前方の茂みに視線を向けた。


ちょうどその瞬間、ルミナの足元の地面が「バキッ」と音を立てた。ーー落とし穴だった。


「きゃあっ――!?」


ルミナの悲鳴が谷間に響く。


「ルミナ!!」


ルキが駆け寄ろうとするが、もう遅かった。


そのとき、白銀の翼を持つペガサスが、風を切って舞い降りる。その背に乗るのは、長い槍を携えた戦士だった。


「危ない!」


男が叫ぶと同時に、ルミナを抱き上げるようにして空へと舞い上がる。


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― 新着の感想 ―
異世界を舞台にしながらも、人の心の繊細な部分を丁寧に描いている作品だと感じました。喪失、旅立ち、絆、そして守りたいという意志――キャラ一人ひとりが「誰かのために強くなろう」とする姿が胸に響きます。読め…
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