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1:大好きなお姉さまが婚約破棄されました(1)

 この世界には「魔法」と呼ばれる不思議な力があり、それは自然界に存在する精霊の気まぐれによるものとも言われている。


 魔法を使うための力――魔力は親から子へと引き継がれるが、誰しもその魔力を備えているものではない。何よりも、精霊の気まぐれだからだ。


 大陸の南側に位置するアッシュクロフ王国において、魔力を持ち魔法が使える者は選ばれし者とされ、国王が爵位を授けたのは遙か昔のこと。そのため魔法を使える者は魔法貴族と呼ばれ、他の魔法の使えない貴族と区別される。


 だからこの国には貴族が二種類存在する。魔法が使える魔法貴族と、魔法が使えない貴族。公爵は魔法貴族のみに与えられる爵位でもある。


 そしてもちろん、王族にも魔力は代々受け継がれていた。


 風火地水の四属性が魔法の基本属性とされ、生まれた家柄によってどの属性が扱えるか決まってくる。基本は一人一属性だが、まれに両親の双方の属性を受け継ぎ、二属性の魔法を扱える者もいた。となれば、それはさらに貴重な存在となる。


 そのため結婚相手には、自分と異なる属性魔法を使える者を望むことが多い。


 アッシュクロフ王国の王太子ジェラルドの婚約者として、ケアード公爵令嬢のエレノアが望まれたのはそれが理由の一つでもあった。王族は代々土属性の魔法の使い手であり、ケアード公爵家は風魔法の使い手。それもあってジェラルドが土魔法、エレノアは風魔法を得意とする。属性の違う二人の間に生まれた子には、土と風、二つの属性が引き継がれる、かもしれない。


 二人が婚約したのは、十二歳から十八歳まで通う魔法貴族のための学園、王立アッシュクロフ魔法学園に入学した年である。当時はまだ王子だったジェラルドだが、学園の入学式でエレノアと顔を合わせ、惹かれるものがあったらしい。


 それを国王に伝えたところ、国王はすぐさまエレノアをジェラルドの婚約者にと望んだのだ。王家からの打診とあれば、ケアード公爵も頭を悩ませた。エレノアには幸せになってもらいたい。


 まだ十二歳、だが十二歳。


 結婚相手を決めるのは早いとは思いつつも、生まれたときからその相手が決まっている者も多い。それが魔法貴族として生を受けた者の運命(さだめ)


 それでもケアード公爵は、我が子を政略の道具の一つにしたくないという考えの持ち主で、国に忠誠を誓ってはいるものの、理不尽なやり方に対してはがんがんと意見を言っていた。それだけの実力と権力があるから許されるのだが、エレノアが王族から望まれたとなればまた別の話。むしろ、エレノアの気持ちを尊重せねばならない。


 だがエレノアは賢かった。この縁談を受けることでケアード公爵、いやこの国にもたらされる利益。そして断ったらどうなるかと、そこまで考えていたようだ。妹のセシリアもやっと歩き始めた頃で、その妹にも迷惑をかけるとでも思ったのだろう。


 エレノアはジェラルドとの婚約を受け入れた。

 政略的に結ばれた婚約だというのに、幼い二人の関係は仲睦まじいものであった。エレノアは賢い。自分がどのように振る舞えば、どう思われるのかをわかっていた。


 ジェラルドを立て、自分は一歩下がる。それでも彼女は勤勉で成績もよく、教師たちからの評判がすこぶるよい。それを大人たちがこぞって褒めれば「ジェラルド様がいつも寄り添ってくださるから……」と頬を赤らめて答える。それを見た大人たちは、エレノアを微笑ましく思い、ジェラルドには賛辞を送る。


 だから誰がどこからどう見てもお似合いの二人で、将来、この二人がアッシュクロフ王国を背負うのであれば、この国も安泰だなんて言われていたのだ。


 それがころっと変わってしまったのは、学園の後期課程一年次に、イライザ・バルフォアが入学してきたときだろう。


 イライザは卒業パーティーでジェラルドの隣に立っていた。本来であれば、あの場はエレノアの場所であったはず。


 そのイライザは、商売人の娘だったが母親が下位貴族の出だった。母親は家に出入りしていた商人と駆け落ちをして、国の外れの田舎に居をかまえ、そこで授かったのがイライザだ。


 イライザは生まれながらにして魔力を備えていたわけではない。魔法貴族の血が半分しか流れていないのが原因だった。


 しかし十五歳で魔力が出現し、焦った母親が生家に連絡をいれ、家を継いでいた母親の兄――伯父の養女となった。


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